第26話.逃亡の中での決断
「追われとんのか……!?」
久遠の声に、全員の足が止まる。
「これで、莉音ちゃんに追跡装置が付けられてるのは ほぼ間違いないですね。」
ギンの声に、久遠が唇を噛み締めた。
「莉音達を追っとるのは、5番と10番っちゅーことかいな…」
久遠の言葉に、考え込んでいた黒子が口を開く。
「いえ……。きぃちゃんみたいに特殊で特大なキメラにリンクするのは、相当エネルギーを使います。
10番は、原尾コロニーで休んでいるでしょう。先程飛ばした鷹は見事に落とされてしまいましたので、今現在の原尾コロニーの様子は見れませんが……。
チビキメラ達をよこしたのは、休んでいて動けないからではないかと。」
黒子が話に入って来たのは驚いたけど、そうだよな。黒子も10番と同じく、リンク使うんだもんな…。
そうだ……
もしチビキメラに10番がリンクしていたら…
確実に俺達の正体はバレていた。
そう考えたら、ゾッとした。
「まぁ……恐らくは5番でしょうね。莉音さん達を追っているのは。
莉音さんが動いてるのに気付いて、原尾コロニーから出て来たのでしょう…」
「早う中野博士のコロニーに行かせて、合流してこの電磁波結界を発動させれば……何とかなるやろ??」
久遠の必死な言葉に、ギンがうつむく。
「それが上手くいったとして。その後はどうするんです??ナンバーの2人はずっと電磁波結界の外に張り付いてますよ??一切中野博士のコロニーから外に出る事は出来なくなる。
食料が尽きたら?
全員餓死するまで、結界の中に立て篭もりますか?」
どうするべきか………。
恐らく、何人かはもう 気付いてると思う。
「莉音さんを囮にして、その間に全員で中野博士のコロニーに行くしかありません。」
口にしたのは、ギンだった。
「莉音は…どうなる…?ナンバーの囮なんざ、無理に決まっとるやろ!!ただ殺されるだけや!!」
ギンの言葉が詰まる。
俺はギンの頭をポンポン叩いた。
ギンがポカンとした顔で俺を見上げる。
「俺は、主人なんだもんな。
嫌な事ばっかりギンに言わせる訳にはいかないよなぁ。」
「……いちさん……でも……」
ギンの頭をワシャワシャして、俺は久遠の方に顔を向けた。
「久遠。莉音ちゃんとサクの所には、今凪ちゃんとメルが向かってる。
凪ちゃんは人間探知を持ってるから、きっとすぐに莉音ちゃんの所に辿り着くよ。
そして、メルにはアンドロイドの探知機能がある。それがあればナンバーの動きだって莉音ちゃん達にもわかるんだ。簡単には捕まらないと思う。」
「ナンバーやって、莉音に付けた追跡装置で居場所はわかるんやで!?そんなん、もう鬼ごっこ状態やないか!!」
「だったら、莉音ちゃん達をこっちに来させて …ここにいる全員でナンバーの相手する!?
2区と6区の隊も来てるんだよ?モタモタしてたら中野博士のコロニーにつく前に全員死ぬよ!?」
久遠は出す言葉を失った。
いくら俺達がいるとはいえ、ここにいる人間の中で戦闘要員は久遠を除いてすでにたった7名。
他に生き残った11名は非戦闘要員だ。
「とにかく、まずは今ここにいる人達を1人でも多く中野博士のコロニーに避難させないと。」
俺がそう言うと、他の人達が「待ってくれ」と口々に言いながら集まって来た。
「莉音ちゃんにサク、それに凪ちゃんもメルも、もう俺達の家族なんだ……。見捨てたくないっ……お願いだ…!!」
「そうだっ……俺は莉音ちゃんに助けられて、今こうして生きていられてるんだ……!!莉音ちゃん達だけを犠牲にすることなんて出来ない……」
「俺達に何か出来る事はないのか!?何でもするっ……俺達全員、何でもするから……あいつらを助けてやって欲しい……!!頼む…!!」
家族……。
きっともう、ほとんどの人が血の繋がりは ないんだろう。
でも、堂々と家族だと言う。
ほんとに…いいコロニーだなぁ…。
俺はリーヴを見た。
リーヴは俺の気持ちを察してくれている様で、強く頷いた。
「黒子。」
「はいぃ♪♪」
「お前の鷹は、何匹外にいる?」
「7匹おります。」
「ナンバー相手だと、どのくらいで見つかる??」
「数分もてば、いい方かと。」
「莉音達の様子を見る為に、莉音達に付けてほしい。7匹全部を、一度にではなく…数分に分けて。…悪い………恐らく、お前の鷹は…全員……」
「心得ております。」
黒子はニッコリと笑って、リーヴに頭を下げた。
黒子が、肩に乗ってる鷹の顔にオデコをつけて目を閉じた。
多分、1匹目の鷹にリンクして、莉音ちゃん達の所に行ってるんだ。
「歩きながらリンクって出来るの?」
「出来れは集中したいところだが…致し方ない。」
すると、リーヴが俺の所にきて背中を向けた。
「いち。ノアを背負ってやってくれ。
おれは黒子を背負う。」
「わかった。」
「きゃあああああああああ!!!」
ノアを預かり、背中に背負う。
そしてリーヴはしゃがんで黒子に背を向けた。
「はわわわわわわわ…あ、あのリーヴ様……どうかノアさんと重さを比べたりとか…しないで下さいませ…わ、私は重い訳ではございませんっ…ノアさんが軽いだけでっ……だってノアさんは踊り子ですからっ……だから決して、私が重い訳ではありま…」
「早くしろ!!!!」
「きゃあああああああああ!!!」
黒子はリーヴの背中に凄い勢いで飛び付いた。
リーヴに背負われて……果たして黒子はまともにリンク出来んのかな…なんて心配もしたけれど、黒子はすぐに莉音ちゃん達を見つけた。
「やはり原尾コロニーに向かっていますね。出てきた5番を原尾コロニーに押し戻すつもりでしょうか……」
その時、あっ と黒子の小さな叫び声がした。
「すみません……数分も…もちませんでした…」
「いや、相手は5番だからな…大事な鷹を………すまないな。…とりあえず向かってる方向はわかった。いち、俺達はどうする?」
俺は、蛹を握り締めて前を走り続ける久遠をチラリと見る。
そして大きく息を吸って、皆に向かって大きな声で提案した。
「ふた手に別れよう。」
久遠が、目を見開いて俺を見る。
他の皆も、そんな感じだった。




