第23話.いちVS大型キメラ
気付くと、俺の腕を噛んでいたキメラが足元に転がっていた。
開いた口からは、かすかに パリパリ…ッ と、細い電気の様な物が出ている。
「…あ……あ…」
楓ちゃんは、足をガクガクさせながらその場に座り込んだ。
「ごめん、楓ちゃん。すぐに止血するから、少しだけ待ってて?」
「……っ…」
楓ちゃんは、震えながら俺の服をしっかりと握り締めていたが、コクリと頷くと 俺の服から手を離した。
それを確認をして俺は、すぐに全力でノアの元に走る。
いくらエネルギーを使い過ぎてるとは言っても、あいつが空から降ってくる大型のキメラに気付かない訳が無い。
ナンバーと同じAランク並の実力を持ってるんだ。
気付かない………訳が無いのに……。
俺がキメラに噛まれている所を見た時のノアの顔が頭にこびりつく。
あきらかに、取り乱してた。
俺があんな姿を見せてしまったから…。
ただでさえ、その前に自滅みたいな事をするの…見てるもんな……。
「ノア!!!!」
「………っ……」
俺の声にボロボロになっているノアが振り向く。
赤金でやったのか、既に1匹の大型キメラはノアと同じくボロボロだ。
木に背をつけたまま、ここまでやるとか……
Aランクレベルの戦闘能力 は化け物並みなのか!?
…だけど、ノアの動き方がおかしい。
ただでさえボロボロだったんだ。
その上、思いっきり木に叩き付けられた……
確実に、どこか痛めてる…。
チラリとその奥にいるリーヴ達を見ると、ほとんどのチビキメラは殲滅されており 残りの数匹を片付けつつ久遠達はこっちに移動して来ていた。
「久遠!!!楓ちゃんが怪我してるから、急いで誰か向って!!!」
俺の叫び声を聞いた久遠が、他の戦闘要員達に 「後は任せる!!」と叫びながら、急いで楓ちゃんの元に走った。
俺は続けて叫ぶ。
「リーヴ!!!ボロボロの方に構えてて!!!すぐに射線通すから!!!」
それを聞いたリーヴが、背負っていた大型の銃を降ろして構える。
すかさずギンがリーヴの横まで走り、その大型の銃の右側を自分の体で支えた。
「すまんな、ギン。助かる。」
「いいえ。まさかこの目で見られるとは光栄です。ブラックマグナム使うのでしょう?なら、右腕だけでは支えきれませんでしょうし。」
今、ちょうどリーヴの射線上には2匹のキメラが入ってる。
けど、運が悪い事にその後ろにノアがいるんだ。
ノアを射線から離さないと…!!
さっき叫んでたからか、必死にノアのもとに走る俺に気づいた もう1匹の大型キメラ。
ボロボロのキメラは、足をやられた様で 上手く歩く事が出来ない様だ。
すると、そのもう1匹の大型キメラが
俺が走って来る方向に身体の向きを変えた。
まだ詳しくはわからないけど、俺が電気出す時って 怒ってたり、助かりたいって願ってたり…
反対に助けたいって思った時だったり……
俺の想いが引き金になってるんじゃないかと思うんだ。
もし上手く使えれば………
きっと、今も、これから先だって 皆を守れるかもしれない。
「ダメ!!やめて!!!」
大型キメラが狙いを俺へと変えた事に気付いたノアは、叫びながら大型キメラにしがみつき、自分の方へ向けさせようとした。
「ノア!!いいから!!!」
「やだあ!!!いやぁ!!!」
しがみつくノアが目障りなのか、大型キメラは激しく首を左右に振った。
先程負った怪我が痛むのか、ノアの顔が苦痛にゆがむ。
ついにその手は大型キメラから滑る様に離れ、ノアはそのまま地面に叩き付けられてしまった。
「……ぅ…っ……」
衝撃で他の傷にまでも痛みが走ったのか、ノアは小さなうめき声をあげ、
そのま動かなくなった。
…………え……?
「ノア!!ノア!!?…っ…ノア!!」
走りながら、いくら名前を呼んでも返事がない。
それどころか、ノアは指先すらピクリともしないのだ。
これじゃあ、まるでー……
初めてコンテナの中で見た時のノアの姿が頭をよぎる。
……違う……。違う!!違う!!!
「ノア!!!!」
その瞬間、俺の視界の中にいたはずのノアに かぶさる様に大型キメラが立ちふさがった。
ノアが動かなくなったから、再び俺に狙いを定めたんだろう。
… ノアが……動かなくなったから…?
ー……違う!!そんな筈ない!!
だが、俺の視界はでかい大型キメラで埋まってしまい、後ろのノアは確認出来ない。
俺は上半身を低くし、全体重を前に押し出す。
少しでもスピードをつけたかったからだ。
そして、立ちはだかる大型キメラキメラの顔面を手で掴み、ありったけの声で怒鳴った。
「邪魔ああああああああっ!!!」
ー…バチッバチバチ …
…バチ ィンッ!!!
弾ける様な音が爆音で鳴り響く。
その隙にキメラの横に滑り込み、倒れているノアの上に自分の身体を被せると、すぐに地面に伏せた。
「リーヴ!!!!!!」
俺の声と共に、リーヴの大型銃からエネルギー砲の様な弾が発射され、
ボロボロになっていた大型キメラ共々、大型キメラ2匹は跡形もなくバラバラに吹っ飛んだ。
キメラの部品が俺達の上や近くの地面に降ってくる。
やがて降ってくる部品も収まり、モウモウと立ち込めていた砂煙も風でサアアーッと消えていった。
俺はゆっくりと身体を起こし、下にいるノアを確認する。
腕や足にも……あちこちに怪我をしてる。
しかし、大きな損傷はなさそうだ。
俺は、心臓をバクバクさせながら、急いでノアの口元に耳を近付けると
ノアは、しっかりと呼吸をしてくれていた。
「よかっ……よかった……」
ノアを抱き起こし、そのまま抱きしめると ノアの身体の暖かさがつたわってきて、ホッとしたと同時に涙が出て来た。
よかった……。
ほんとによかったー……。




