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第22話.覚醒の瞬間

「いち!!!!!きぃちゃんから離れて!!!」


ノアが遠くから俺に向かって叫んでいた。


「いち達が離れないと、きぃちゃん飛ばないよ!!」



ノアも、気付いていたのか……。



これ以上、地面に付いて戦わせる訳にはいかない。


俺は楓ちゃんの腕を掴んだ


「楓ちゃん、立てる?」

「いちさん……あの大きいキメラ…さっきコロニーに入って来たキメラですよね……?なんで……」


「大丈夫。仲間だよ。」


楓ちゃんは、呆然としていたが

きぃちゃんの戦い方を今ずっと見ていた事もあり、黙って頷いた。


「ノア達の方へ走るよ」

「はいっ!!」


楓ちゃんと共に、ノア達の元に走りながら、俺は後ろを振り向いた。


きぃちゃんが、左前足をガクガクさせながら 残りのチビキメラ達を少しずつ叩き落としてる。


俺達が少し離れたのを確認して、きぃちゃんは羽根を揺らして飛んだ。


ここからは、きっと右手で叩いても左前足には負荷がかからない。


「きぃちゃん!!!ありがとっ……本当に、ありがとう!!…終わったら、美味しい物一緒に食べような!!一緒にだからな!!」


俺が叫ぶと、きぃちゃんは少し振り返って


『キュアッ』


と、俺に向かって鳴いた。


あーなんだよもぉ…

やっぱずっと俺の声聞こえてたんじゃん……。


少し嬉しくなって、再び前を見ると

まだかなり皆までの距離がある。


ノア達は、ハァハァ言いながらコロニーの皆を守る様に囲んで戦っている。


早く合流しないとっ……



「いちさんっ!!!!」

「……え?」



楓ちゃんの声に振り向くと、楓ちゃんが俺を前に突き飛ばした。


そのすぐ後に、楓ちゃんが俺の上に倒れ込んできたのだ。


俺の左側の木の上から、チビキメラが俺に飛びかかってきていた事に、楓ちゃんが気付いてやった行動だった。


「…楓ちゃん?」


楓ちゃんの右肩には爪で引っ掻かれた様な傷があり、そこからは血がジワジワと服に滲んでいた。




「楓ちゃん!!楓ちゃん!?」

「だ……大丈夫です。ちょっと……当たっちゃっただけですから……」

「何言ってるの!!血が凄い出てる…!!止血しなくちゃ!!」


ひとまず、楓ちゃんの右肩を俺の右手で抑え なんとか止血できる物を探そうと顔を上げた瞬間、さっき飛びかかって来たチビキメラが楓ちゃんのすぐ後ろまでノシノシと歩いて来ていた。


俺の顔や視線を見て、自分のすぐ後ろにチビキメラがいる事に気づいたのか、楓ちゃんは恐怖で歯をカタカタと鳴らしている。


チビキメラが、楓ちゃんに向って大きく口を開けた。


俺はとっさに楓ちゃんの後頭部に左手を回し、自分の胸に押し付けると

迫ってくるチビキメラの口に自分の右腕を横向きに押し込んだ。


チビキメラの鋭い2本の牙が、俺の右腕に喰い込む。



くっそ…!!めちゃくちゃ痛ぇぇ!!



チビキメラは離すまいと、牙を喰い込ませたまま 低く唸った。



なんであの電気は出ないんだ…!?


何か条件があるのか!?



俺の胸に押し付けられた楓ちゃんが、チビキメラの低い唸り声がする度にビクッと震える。


「いちさんっ……腕っ…腕がっ……」

「いやぁ…、お互い様でしょーが…」



つーか、マジ痛ぇ。



でも、確かこーゆう時は 無理に離そうとしてこっちに引っ張ったら、相手も自分の方に引っ張ろうとして状況が悪化する可能性があるんだったよな…。 そのまま押し込んでおくのがいいって聞いた事がある気がする………。



誰に………だっけ………?




「いち!!!いちー!!!!」



俺の様子に気付いたのか、ノアが血相を変えて また叫んだ。


「やだっ………やだ…いち……」


ノアが俺を見ながら、立ち尽くして呆然としている。持っている赤金(アカガネ)がカタカタと音を立てて震え始めた。


「…姉ちゃん!?どないしたん!!?落ち着きぃや!!!」


久遠がノアに飛びかかるチビキメラを(サナギ)で斬りつけながら叫んだ。



「ノア!!!行け!!」


リーヴが飛びかかって来たチビキメラの口の中に銃口を突っ込み、そのまま撃つのかと思いきや……


「レグル!!」


そう叫びながら、僅かに光を放つ右足で銃口に噛み付いてるチビキメラを蹴り飛ばした。


…蹴り飛ばされたチビキメラには、モザイクをかけさせて頂きます。



そして、チビキメラ達の数を一通り確認したリーヴは

ノアの背中を輪の中から押し出す。


「ここはもう俺達だけで十分だ!!ノア!!行け!!」

「あああっ…無理に引いたら腕を持ってかれるっ……いちさぁああああん!!!腕は引かないで下さいっ!!痛くても引かないで下さいよ!!!?ノアさん!!いちさんを頼みます!!!は、は、早く!!!」


リーヴとギンの声に、ノアは強く頷き

急いで俺達の元へと走って来る。


やっぱ腕は引いたらダメなのか!!

おおお…合ってた………

つか、ギン…

俺が言うのも何だけど、ちょっと落ち着きたまえ………。



そんな中、俺の目には こっちに向って急いで走って来るノアの姿が見えた。


「ノア……」


ノアだ……。



かなり息が上がってる…。

あのノアが…。

これは随分エネルギー消費しちゃってるな……。



心配しながらノアを見つめていた時、突然ノアの周辺に大きな影が揺らついた。


「ノア!!!上!!!」



俺の声にハッとして上を見上げたノアの目に映ったのは、大型のキメラ2体が降ってくる、まさにその瞬間だった。


大型といっても、きぃちゃん程の大きさではない。

しかし、人間の数倍はある大きさだ。


とっさに2体の着地地点からは回避はしたものの、砂煙が舞いすぎて かなり視界が悪いだろう…。


その上、ノアは色がわからないんだ。

白と黒だけのこの状況では、どちらの色にも動きがある。


慎重に耳を使って1匹の位置を割り出したノアは、すかさずその1匹に剣を振り下ろしたのだが、残りの1匹が砂煙に紛れてノアのすぐ左側にいた事には気付けずに、対応が遅れた。


ノアは、そのキメラによって思いっきり右側吹き飛ばされ、木に叩き付けられてしまった。



砂煙が薄まり、俺にはやっと見えていた あの状況。


完全に砂煙が失くなった時には、もうノアは木の下で倒れていた。



「ノア!!!」



嘘だろ……?



「ノア!!!ノア!!!」



必死に名前を呼び続けると、倒れていたノアがふらつきながら起き上がった。



「ノア……」



ホッとしたものの、ノアはふらつきなから後ろの木にドンッと背中を当てながら立っている状態を維持している。


かろうじて、まだ手には赤金(アカガネ)が握られていた。



早くしないとヤバイ………!!




俺は焦りながら腕を噛んでいる目の前のチビキメラを見た。



どんどん噛まれてる右腕の感覚がなくなってきてる……。

今俺がこいつにやられたら、このチビキメラは楓ちゃんを狙う。


早くノアの所に行かないと、あの大型キメラ2体にノアがやられる。

ノアは、きっともうほとんどエネルギーがない。


こんな所でモタモタしてる場合じゃないのに……!!!


しかし、大型のキメラが木を背につけて痛みを堪えながら立っているノアに向って、ゆっくりと歩いていくのを見た瞬間…




ー……パチンッ…ッ




何かが弾けた。

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