第16話.久遠VSキメラ
ふむ……と、キメラの足を見て考え込む久遠を見て 再びキメラがニヤニヤとしながら話し出した。
『うふふふ。刀じゃー斬れませんよぉ?むしろ、蛹が折れたら困るんでぇ~、蛹で攻撃とか馬鹿な真似はやめて下さ………』
まさにキメラが喋っている最中だった。
大きなキメラの体が、グラリと左に傾く。
あっ………!!!
とっさに俺は全力で走って黒子を掴み、キメラの後ろ側に黒子共々転がり込んで 壁に激突して止まった。
そんな俺達の前に、左足を失ったキメラが ズズゥン……と倒れ込んだ。
そう。
久遠が、何の遠慮もナシに スパーッとキメラの左足を斬り飛ばしたのだ。
無音。
何の音もしなかったから、斬ったという事自体に気付くのが遅れた。
「いぃってぇ……」
頭打った。
ただでさえ頭壊れてるのに。
「いちはんっ、ナイスやぁー♪」
「斬るなら斬るって言ってよ……」
『…え……?……え?』
キメラ自身も、斬られたという事に気付いてなかった様だ。
何が起こっているのかわかっていない。
「あんな、姉ちゃん。確かにダイヤモンドは硬いでぇ?
せやけどなぁ、ダイヤモンドより硬い鉱石ってなぁー、実は3つもあるんやで?」
『……えっ……』
「知らなかった!!!」
ノアが叫んだ。
いや、俺も知らなかった。
「ダイヤモンドより硬いとなると、ロンズデーライト……ですか?いや、ウルツァイト………まさか…」
ギンが答えながらチラリと久遠を見る。
そんな久遠は、ニッコリと満面の笑みを浮かべた。
「蛹に使われてんのはな、ロンズデーライトやウルツァイトよりも上♪
カーバイン や。カルビンとも言われとるな。」
ギンが大口を開けて叫んだ。
「世界で最も硬い鉱石っ……!!」
「せや♪」
誰かっっっ!!!
誰か通訳をっっっ!!!!!
『………チッ……』
呆然としていたキメラが、舌打ちをした瞬間だった。
物凄い爆音の叫び声がコロニー内を震わせた。
『ギャイイイイイイイインッッ!!!』
「え!?え!?何!?あのキメラが叫んでるの!!?」
耳が痛い!!
振動が頭に響く。
「……あのナッツって女、もう1匹のキメラの方に移りおった。」
「あれは、足を斬られて痛がるキメラ自体の叫び声ですよ…」
「ふんっ。ちょっとでも使えなくなったら、さっさと新しい方に蔵替えか?
随分と薄情だな。」
『薄情~~~??随分と甘っちょろいアンドロイドですねぇ~?人間に毒されましたぁ~~?んもぉ~なっさけないなぁ~』
「そんなことより、ちょっと久遠!!!!もうちょっとわかりやすく斬りなさいよ!!!いちが潰されちゃう所だったじゃないの!!!気を付けなさいよ!!この馬鹿!!」
ノアの声が響く。
安定の、人の話聞かない系。
「ははは……すまんすま……あれ?」
謝ろうと横を見た久遠だったが…
久遠の横には、居るはずのノアはいなかった。
全員が あれ? といった顔をする。
さっきノアの声がしたのは上の方からだった。
上………?
ふと顔を上げた俺は、やはり本気で目ん玉が飛び出るかと思った。
『………え?』
「ちょっとでも壊れたらすぐ捨てて次ですって?
ほーんと………ふざけてるよねぇ?」
ナッツが移った、もう1匹のキメラアンドロイド。
ノアは、そのキメラの頭の上に立っていた。
『んなっ……!!いつの間に!?』
「んぁあ!?なんや!!?いつの間に持ってったんや!!!」
キメラの叫び声と ほぼ同時に久遠が叫んだ。
確かに久遠は両腰にそれぞれ1本ずつ、合計2本の刀を腰にさしていた。
蛹は、今久遠が手に持っているが
もう片方の刀は鞘から抜き取られており……
キメラの頭の上に乗っているノアが握っていた。




