第7話.黒子
「寒いの?」
「へ?」
横を歩いていたノアが、俺の顔を覗き込みながら首を傾げる。
「腕、サスサスしてるから。」
「サスサス?って何?」
「サスサス……」
ノアが自分の両腕を交差させて、腕をさする。
あぁ!!サスサスしてんのねwwww
「寒くない、寒くない。何だよサスサスってwww」
「サスサス……」
まだ自分の腕を見ながら、さすってる。
そんなノアを見て思わず吹き出してしまうと、久遠が振り向いて俺達を見つめながら笑った。
「ほんま仲いいなぁー。なんや、2人いっつも一緒やしなぁ。」
「仲良く見えるんだ…。」
俺達、久遠の前でいっつも口喧嘩してますけど。
「いちは、私の主人だから。」
「あはははは………は?」
ノアがケロッと言うので、笑い流す所だった。
え?今なんて??
「なんや!?2人結婚しとったんか!!」
「え………。……えええええええ!!?そうなの!?」
「は?いや、その主人じゃなくて。御主人様の方よ?」
「あ、なんや。そっちか。」
ああ。
そっちか。
……………は?
「……え?ちょっと待ってノア。何それ?」
「何って??」
「…………?……なんだろ……………あ、…馬?」
「は?」
「え?何?じゃじゃ馬飼ってんの?俺。」
「じゃ……馬?」
「お前も馬を知らんのか。」
ノアは首を傾げながら、馬?とつぶやいていたが
再び俺の顔を見て、当たり前の様に言った。
「私を再生したの、いちじゃない。だから いちが主人になるんだけど。」
「え!?そうなの!?」
初耳なんですけど。
知らない間に、じゃじゃ馬のタズナは本当に俺の手にあったらしい…。
どうりで、当たり前の様に色んな場所について来る訳だ。
………あれ?
「じゃあ、リーヴの主人も俺になんの?」
「なるわね。」
「ええ!?じゃあ、ギンと凪ちゃんの主人はリーヴになるのかぁ」
「ううん。そのリーヴの主人が いちだから、ギンと凪ちゃんの主人もいちになるわね。」
俺全員の主人かよ!!!!!!
何そのいきなりの大家族設定!!
「いちはんボスやってんなー。」
「ええええ………ギンとか主人に聞く口のきき方じゃないんだけど……」
まぁ、なんか主人とかそーゆうのより
友達みたいな感覚の方がやりやすいから、そっちのがいいけどさ……。
そういえば、思い返せばリーヴは濡れた岩場で俺が滑らない様にって腰に手を回してきたし、豚の爆発の時も 俺吹っ飛ばされそうになったけどリーヴがおおい被さってくれたおかげで助かったんだよな……。
ぬめりゴケ女に剣突きつけられた時も銃向けて助けようとしてくれたし。何だかんだ、守ってくれてるなぁ……。
思い返せば、皆記憶のない俺を全く見捨てようとしなかった。
そーゆうことだったって事なのかなぁ……。
ブツブツ考えながら歩いていると、大きなカバンを持ったサクとすれ違った。
「いちさん!!」
「あれ?サクどっか行くの??」
「うん。ちょっと鉱石取りに上に。」
「上に出るの!?危なくないか?」
「大丈夫だよーー!!いつも行ってる場所だから!」
「そっか……。気を付けてな?」
「うんっ。行ってきまぁす」
見えなくなるまでブンブン手を振るサク。
それを見送り、医務室らしき場所の布をめくると
ベットの下で例の女兵士が
土下座していた。
「この度は、大変失礼を致しました!!!どんな処罰も……」
顔を上げたその女兵士は、俺の顔を見るなり
「……チッ…お前か。」
…舌打ちした。
いや…気持ちは分かるよ?
ぬめりゴケ、気絶する程目に染みたんだろうし。
その上いきなり電気ショック浴びて、また気絶させられたんだもんね。
でも良く考えたら、俺命の恩人じゃね?
電気ショックで気絶したのは 俺達からしても予想外だっただけで
あんた本来ならリーヴに撃たれて死んでたぞ?
しかし、俺の後ろからピョコっと顔を出したノアを見て
「ノ、ノ、ノア!!?本物!!!?握手してください!!!」
この女は即座にミーハー女に早変わりした。
…俺いらなくね?
「私、黒子をやっております。役に立ちたく、追って参りました!!」
「ああ!あなた黒子なんだぁ!?へぇ…」
「ねぇ、ノア。黒子って、何?」
「んー…簡単に言えば………電話線?」
線!!!?
「情報屋なんだよね。勝手に飛び回って勝手に情報手に入れて勝手に情報回したり、勝手に情報隠したり、勝手に情報捻じ曲げたり。とにかく勝手で勝手なのよ。」
「どんだけ勝手なんだよ。」
「ノアさん、この男では話が進みません。」
すいませんね記憶喪失でね。
「まぁ、黒子は、独自の組織でね。でもスパイ並の情報収集力があるから、隊長とかが個人で雇ったりするみたいよ。」
「でもこの女、3人で来たぞ?」
「物騒ですから、テキトーに不審人物がいたと言って一緒に行動させていただけです。名前も知りません。」
あなたの勝手に巻き込まれて
その二人、死んじゃいましたけど。
「じゃあ、兵士の格好してたのは変装だったんだ?」
「まぁ、趣味で。」
「なんて?」
「そんなことより、貴様よくもぬめりゴケなど人の目に塗ってくれたな!!?頭に血がのぼって殺しそうになったわ!!!!」
「マジで殺そうとしてたの!?」
「リーヴ様に銃まで向けられるし……。ショックで嫌味とか言っちゃったし……もう絶対嫌われた……貴様のせいだ殺してやるああああああ!!!」
「ぎゃああああああああ!!!」
何この女!!何この女!!
ん………?
リーヴ……様??
「何?あなた、リーヴの黒子なの?」
「はいぃ♪♪」
「え、何?リーヴが雇ってんの!?」
「いや?勝手に、つけ回してる。」
ねぇ、それストーカー。




