第6話.予感
その日、久遠に寝床に案内された俺は
クタクタになっていた事もあり
そのままベットに倒れ込んだ。
その時、入り口の布がめくられ
ノアが顔を出してきたのだ。
「いち、もう寝る??」
「んー……?どした?」
目を擦りながら答えると、ノアは少し元気のない声で俺に言う。
「……ちょっと…、話がしたいんだけど……」
俺は起き上がってベットに座り、隣りを開けてポンポン叩くと ノアはそのまま入って来て、ちょこんと横に座った。
「どした?」
「………なんかさ。中野博士のコロニーに、いちの記憶に繋がる何かがあるかもしれないじゃない?」
「うん!!だな!!」
「そしたらさ………、思っちゃったんだよ。」
「なにを?」
「いちが記憶思い出したらさ……。
記憶喪失になる前の、いちになったらさ…。
今のいちは、どうなるの?」
え………。
思い出したら、今の俺は……?
「え?いや………、変わらない……だろ。」
「今のいちのまま?」
「………………」
そう………だよな??
……でも、記憶を取り戻すって事は、前の俺になるって事なのか?
……………え?
答えに詰まっている俺を見て、ノアはうつむいてしまった。
「あ、いや……。変わらない…と思うぞ?だって、俺だもん。記憶なくしたからって、そんな器用に性格とか別人になったりしないだろー。きっと前もこんな性格だったんだって。」
多分、これは今俺は俺に言い聞かせる為に言葉にしたと思う。
でも、ノアはパッと笑顔になると
そっかそっか!!と満足そうに言って
部屋を出て行った。
「今の俺………か。」
ベットに横になりながら、さっきのノアの言葉を思い出す。
思い出したら、今の俺は…………どうなるんだろう?
考えながら、ウトウトしていたのかもしれない。
それは突然だった。
頭の中に、あの声が響いた。
『ーーー……を、探せっ!!!』
「うわっ!!!!!」
バッと飛び起きた俺は、周りを見回す。
「…………夢?」
でも、これは知ってる。
コンテナで目が覚めたあの時も
同じ声が頭の中で響いて、目が覚めた。
そうだ……何かを………探せと。
心臓がドクドク言ってる。
地下でヒンヤリしているはずなのに、凄く汗もかいてる。
俺は暑さのせいかと、何気なく腕の袖を巻くった。
「………………え?……」
袖をまくった腕の内側に、何かある。
何か……書いてあるのか?
それは、まるでバーコードの様な
太さがまちまちな いくつかの線。
こんなの、今まで気付かなかった…。
左腕の袖をまくってみると、左腕の内側にも同じ物がある。
「何だ…………これ!?」
なんで気付かなかったんだろう……
確かに今まで袖をまくったりはしてなかった。
でも…両腕に……バーコード?
「いちはーん!!起きとるか?ちょっとええか?」
「!!」
急に入口の布がめくられ、久遠が顔を出してきた。
「なんや?どないしたん?」
「あ………いや、なんか……夢見悪くてさ。」
「顔色悪ないか?」
「や、大丈夫……。うん。」
とっさに、腕のバーコードを隠してしまった。
なんで?別に隠す必要なくね?
なんで俺……
これ見られたくないって、とっさに思った?
「いーちっ!!おはよー!!!」
そんな時、ノアがテンション高く部屋に入って来た。
「ノア……」
「なぁに?まだ寝ぼけてるの?」
ノアの顔を見て、ホッとした自分に少し驚いた。
「ごめん久遠…寝ぼけてて。なんか用事あったんだよね?」
「ん?あ、あぁ。あんな、昨日軍人のあんちゃんが背負って連れて来た兵士さんが、目を覚ましたんやけど。」
「…………そんな人いたっけ?」
「いちが倒したとか言ってた人?」
いたわ!!!!!
「とりあえず来てや。医務室におるで、案内するわ。」
「……えー……。やだなぁ…。あの人怖い。俺剣突きつけられてんだよー?」
すると、ノアがキョトンとした顔で言った。
「何言ってるの。大丈夫よ。乳揉んだ仲でしょ?」
「揉んでねぇし!!!」
剣突きつけられたっつってんじゃん!!
そんな状態で乳揉む奴がどこにいんの!?
「リーヴは?」
「サクが夜中まで腕のサイズ測ったりと、まとわりついとったからなぁ。まだ寝とるみたいなんや。伝言頼んどいたけぇ、起きたら来るやろ。」
「そっか……」
仕方なく、久遠の後について歩いていると 当然の様にノアがついてきた。
まぁ……、最強のボディーガードだわな。
俺は戻した袖を見つめながら、思わず両腕でそれぞれの腕を強く掴んだ。
何かが変わる。それが何故かわかるから、見るのも見られるのも この時は怖かったんだ。




