第48話.小さな一歩
すると、少年はうつむいたまま 涙を拭って、その場を離れようとリーヴに背を向けた。
「待って待って!!あの……えーっと…名前は?」
「………は?」
いきなり前に両手を広げて飛び出して来て名前を聞いてくるという…怪しいにも程がある俺を、その少年は怪訝な顔をして見ている。
「………サク」
「サク君かー。俺は、いち。あっちの怖いのはリーヴ。ちっちゃいのがギンで、じゃじゃ馬なのがノア。凪ちゃんとメルは知ってるよね?」
「……何が言いたいの?」
「もうちょっとさ、話さない?今の話。」
「……聞きたくないよ。元々は俺達人間が悪い。そーゆう話なんだろ?言いたい事は。」
「今はね。そーゆう話かもしれないね。でも、その後は?」
「は?」
「え?今俺達がしなきゃなんないのは、その“先”の話でしょ?」
「これからの事…ってこと?」
「違う?」
「……………」
「まぁ、難しい事だとは思うけどさ…。お互いが今のこの世界の、この状況を作っちゃった訳でしょ?
そのお互いがひとまず話さないとさ、ずーーーっとこのまんまって事だよね?
ずーっとこのまんまの世界でいいの?」
「言い訳ないだろ!!!」
「だったら話そうよ。せっかくアンドロイドと人間が直接話せる機会ってのが、まさに今ここにあるんだからさ。
まぁ、故障アンドロイドなんで…ちゃんとしたアンドロイドと人間の話にはなんないけどさ…」
「………」
「ついでに、俺記憶が飛んでて分かんない事だらけなので。
この機会は色々と知れて助かりまっす!!!」
「は?」
「俺の為にも、さぁ!!話そう!!」
「いやいわいやいや!!なんかすっげーいい話してるかと思ったら、自分の為て!!」
「あ!!それなら私の為には……そうねぇ……踊ってちょうだい。」
「いや、ノアそれ話ズレてるから。」
「なんで?私踊りすきだもの。お互いを知るんでしょう?」
「そーゆう話じゃねーから!!」
「ぶははははははは!!!サク、こりゃやられたなぁwww」
久遠が手をパンパン叩いて笑っている横で、莉音ちゃんもクスクス笑っている。
それを見たサクの顔が赤くなった。
おやおや、サク君。青春かい?
今度色々と突っついてやろう。と、ニヤニヤしていると
横のノアもニヤニヤしている。
「気付いちゃった?いちも。」
「気付いちゃった、気付いちゃった!甘酸っぱいねぇ~」
「味あるの?」
「えええええええ!?」
俺とギャーギャー騒いでいるノアの横をすり抜け、サクはリーヴが座っている椅子の横にお尻をつけて座った。
「8回……殺された時の事…聞いていい?」
横に座っているサクが膝に顔を埋めてリーヴに話しかける。
リーヴは少し驚いた顔をしていたが、俺の演説のせいなのかノアの馬鹿っぷりのせいなのか……
その目からは冷たい怒りの感情は消えていた。




