第43話.序章(2)
凪ちゃんに引っ張られながら人だかりをかきわけ、やっと久遠の元に辿り着いた。
けれど俺は、久遠に声を掛けようとして 躊躇してしまったのだ。
久遠の目は真っ赤で、その目にはまだ涙がたまっていた。
久遠の視線を追うと、その先には女の子がベッドの上に寝かされている。
2人の人が、慌ただしく消毒薬を塗ったり、包帯を巻いたりと 動き回っていた。
女の子は、目の上に濡れタオルをかけられ、ハッハッと、細かく懸命に息をしている。
凪ちゃんは俺の足から手を離し、 横たわっている女の子のベッドの端にしがみついた。
そんな凪ちゃんを見て、俺達が来た事に気付いた久遠。
服の袖で涙を拭うと 大きく深呼吸してから俺の方を向き、静かに口を開いた。
「俺の妹や……。莉音言うねん。歳は14や。」
「この子が……。…じゅ………14歳!!?そんな若い女の子がこんなに怪我して……一体何があったの!?」
「1週間前にな、同盟組んどるコロニーが、アンドロイドに見つかったって連絡が入ってん。コロニーを放棄して、こっちに逃げろ言うたんやけど……。
その連絡を最後に、連絡が途絶えてしもうた。」
「1週間前なら、もうそのコロニーは落ちてる。」
リーヴが、キッパリと久遠に言う。
「今までならな。俺だってそう思うわ。
けどな、ここ最近…コロニーの襲い方がおかしいねん。」
「おかしい?」
「以前は、人間のコロニー見つけたらその場でそこにいる人間は皆殺し。それがあんたらアンドロイドのやり方やったやろ?」
「そうだが……・。最近は違う…とは?」
「しばらく殺さへんのや」
「殺さないだと!?なぜだ!?」
「それがわからへんねん…。けど、せやから……そのコロニーも…きっとまだ生きてる人間がおる可能性が高いと思ったんや。
俺らはすぐに40人を救出に向かわせた。」
「相手の人数は?」
「3小隊や。」
「妥当だな。」
そこまで話して、久遠は悔しそうにうつむいた。
「けどな、3日前や。その40人とも連絡が取られへんごとなってん…」
えっと…6区の1小隊が8人だったっけ…。2区の1小隊も同じぐらいだとしたら、だいたい24vs40…
いくらアンドロイドが相手だっていっても……人数的には圧倒的に有利なんじゃ……?
「駆け付けたくともなぁ、俺はこの足や。足手まといにしかならんでな……。でも黙って待っとくんも、もう限界やってん。
………そんな時、凪ちゃんが脱走したっちゅー情報が入って来てな。もうその話に望みを託すしかない思うて…。…凪ちゃん探しに飛び出してもーたんや……」
「凪ちゃんに望みを……?どーゆう意味だよそれ?」
「……………」
「ちょ……ちょっと待って久遠?凪ちゃんに何させようと……!?
…まさかこの莉音って子……その救出に行った40人の中にいたの!?」
つい大きな声を出してしまった俺の声で目が覚めたのか、俺達の横から細い女の子の声が聞こえてきた。
「……にぃ…………」
治療を受けていた莉音ちゃんが、意識を取り戻したのだ。




