第39話.人間のコロニー(2)
「メル………」
ノアの声に、ハッとしてメルを見ると
メルは耳を垂らしたまま、ポロポロと涙を流している。
そっか……。メルにとっても、中野博士は親だもんな。
久遠も、しまった…という顔をしている。
凪ちゃんがいない事は確認したものの、メルがいる事が頭から抜けてしまっていた様だ。
ここで、これ以上の話は辞めた方がいいな…。
しゃがんでメルの頭を撫でると、メルは目をつぶって ほっぺたを すり寄せてきた。
か………………っ
可愛いなオイ!!キュンキュンするぞ!?
「ちょっと。目がいやらしい。」
「はぁ!?」
「なんかメルが汚れる気がする。その目をやめてちょうだい。今すぐよ。」
「普通に酷くね!?」
「メルー。ほら、おいでメルー。」
「ムキュ」
「胸に押し付けんなよ!!どっちがいやらしいんだよ!!胸に押し付ければ全ての男が喜ぶと思ったら大間違いだからな!!ほとんどの男が喜ぶけれども!!!」
「…………ブハッ」
俺が叫んだ瞬間、それまで黙っていた久遠が吹き出した。
「ほんま、自分らおもろいなぁ…」
「…何?自分らって何?私達の事?自分の事?」
あ、こいつほんとにあの時話聞いてなかった。
「すまんすまん。つい癖になってもーてん。あんたらって事や。」
「ややこしいわね。統一してちょうだい。」
「……お前って、誰に対しても態度でかいのな。」
「私は規模がでかいって言ってたじゃない。あんたが。」
「そーゆう意味じゃねぇよ!?」
「なんや、話が進まんのう……」
「「…………………」」
すぐに口を閉じた俺とノアを見て、久遠が おっ? と、首を傾げた。
ギンとリーヴの、口を斬り落とす発言が 予想以上に我々にトラウマを植え付けたご様子。
静かになった所で、ようやく久遠が口を開いた。
「自……、あんたら、中野博士のコロニーに行ってみんか?」
「「中野博士のコロニー!?」」
くっそ。またハモッた。
「せや。もう誰もおらんけどな。中野博士はロボット工学者や。もしかしたら、材料や色んな道具はまだ残っとるかもしれん。」
「そっか…!!材料や、道具があれば……もしかしたら、ギンが持ってる情報や知識を使えば治せるかも!?」
久遠が笑顔で頷く。
「よかった……!!まだ希望はあるって事か!!なぁ、ノア!!」
ガッツポーズをして、満面の笑みでノアを見た俺は、速攻で凍りついた。
ものっっっ凄い、冷ややかな目で ノアが久遠を、見ているからだ。
「ノア……?ど……どうした?ノア……
?ノアちゃーん………?」
恐る恐る声をかける俺に対して、チラリと黒目だけが動く。
身体どころか、顔さえも動かない。
その黒目が、また久遠に向けられると同時に、ノアが口を開いた。
「うさんくさい。」
ああ……。そうだった……。
俺、まだこの子に“命の恩人”という言葉も“恩を仇で返す”という言葉も教えてなかった。
かくまってまらったんです。
僕達、かくまってもらってるんですよノアさん。
俺はノアに向かって、両手を上下に軽く揺らした。
どうどう。
またチラリとノアの黒目が俺の動作を見たものの、一瞬でまた久遠に戻る。
はい。なんかスイッチ入ってますね、この子。
申し訳なく久遠を見ると、久遠は余裕な顔をして笑っていた。




