第38話.人間のコロニー(1)
全員が中に入り、最後に久遠が扉を閉めた。
一気に真っ暗になると思ったが、驚く事に 土のあちこちがうっすらと光っている。
「地下を掘った時にな、青灯石って石をあちこちに埋めたんや。おかげで電気がなくても、そこそこ明るいやろ?」
「なるほど……。青灯石とは考えましたね。人間が地下で生活しているという事にも驚きましたが……」
「地下に住むようになってからな、死亡率が激減したんやで。地上に住んでた頃は、声を出すのも一苦労やったからなぁ。あんたらにすぐ見つかってまうもんなぁ」
少し歩くと、とても大きな空洞に出た。天井にはたくさんの青灯石が埋められており、まるで星空みたいだった。
この空洞には、いくつもの横穴がある。
コロニーに続く道だったり、外に続く道だったりと まるで迷路の様だ。
俺達が入って来た、あの川の近くの入口は、いくつかある出入り口の1つだったらしい。
「俺らのコロニーはこっちや。」
横穴の1つに入り、数十分歩くと ひときわ大きく輝く青灯石が埋め込まれた壁があった。
久遠がその壁を5回ノックし、名前を言うと
ガガガガ……という音と共に壁がスライドし、中から3人の男が出て来た。
「久遠!!無事だったか!!凪ちゃんは!?」
「おるよ。メルも無事や。」
「凪ちゃん!!良かった……!!本当に良かった…!!」
男達は嬉しそうに凪ちゃんの頭を撫で、凪ちゃんも嬉しそうに笑っている。
しかし、俺達に気付いた男達の顔は一瞬で凍りついた。
「な……なんでアンドロイドがここに……!?」
「どういうことだ久遠!!!アンドロイドをコロニーに連れてくるなんて!!!」
「今すぐ、ここを出て行け!!….いや、コロニーを知られてしまった以上、殺すしかない!!」
す……凄い嫌われっぷり……
「ちょー待ってぇな。こいつらは凪ちゃんの仲間や。大丈夫やけ。」
久遠が必死に3人を説得してくれてる中、凪ちゃんがトコトコと俺の所に歩いて来て、俺と手を繋いだ。
それを見た3人は驚いた顔をしていたが 、「 な?」 と言う久遠と、俺の手を握り締めて3人を見つめる凪ちゃんを見て
「2人が、言うなら……」と、それ以上は何も言ってこなかった。
ほんとに久遠てリーダーなんだなぁ。
改めてコロニーの中に通された俺達は、ただただ圧倒された。
高い天井に、いくつもの布が貼られた穴。
中央には椅子と長いテーブルがいくつもあった。
「随分、大所帯のコロニーなんだな。」
周りを見渡しながら言ったリーヴに、久遠は悲しそうに笑った。
「ほんまは、もっと。もっといたんやで。食料調達とかで上に出る奴らの半数はアンドロイドに殺されてまう。気付いたら、こんなに人が減っとったわ。」
あっちに、色んな本があんで。
と、久遠がギンに言うと、ギンの目が輝いた。
両腕がないと不便だろうと、リーヴがギンについて行った。
「まぁ、中野博士のおかげで、ここ最近はそこそこ安心して暮らせとる。ほんま……ありがたいわぁ。博士は俺らの命の恩人や。」
「あ…、それなんだけどさ、久遠。」
「なんや?」
「中野博士にさ、会ってみたいんだ。俺らの身体…もしかしたら治してもらえるかもしれないし…」
「ムリデシャ!!」
久遠との話に、突如メルが入って来た。
ノアに抱かれていたらしく、今の話を聞いていたみたいだ。
凪ちゃんは、人間達に囲まれてるからメルも安心して離れたのかな?
「あの、でもさ、凪ちゃん作れるんだよ?だったら故障部分を治すぐらいは……」
俺の言葉を聞いて、久遠は頭をガシガシかきながら ため息をついた。
「……あんな、……ほんまに無理やねん……」
「やってみなきゃ、わかんないよ」
「……そーゆう問題、ちゃうねんて……」
久遠は、周りに凪ちゃんがいないのを確認すると、小声で俺達に告げた。
「中野博士はな………もう……亡くなっとるんや。」
「……………え?」
「そんな………っ」
俺だけではなく、ノアも愕然とした。
きっとノアも、心の底で少しは期待していたのだろう。
また、色のある世界が見られるのではないかと。
「病気………とかなの?」
俺の質問に、久遠は目を伏せた。
そして、静かに答えてくれたんだ。
……真実を。
ーーー残酷すぎる、真実を。
「殺されたんや。…凪ちゃんの目の前でな。」




