36話.久遠(2)
久遠からは笑顔が消え、リーヴは久遠を睨んだまま。
ピリッとした空気が辺りを包む。
一触即発。
今のこの2人に、まさに当てはまる言葉だ。
「軍人のあんちゃんなぁ、コロニーに着く前に、1つ約束してもらうで。」
「………何をだ。」
「コロニーの人間には、絶対に手を出さん事や。俺はコロニーの代表者やさかい、この約束はもらっとかな、あかんねん。」
「……もし、破ったら?」
「……………」
久遠は右手を口の下に当て、首を傾げて考え込んだ。
「………うーん……。あかんなぁ……。そら、あかん……。」
そして、 「うん」と 小さく呟くと
リーヴに向かって笑顔で答えた。
「殺すわ。」
その顔を見て、リーヴはハッとした顔をして チラリとノアを見た。
いや、わかる。俺も同じ事思ったもの。
あれですよ。
Bクラスの隊長と闘っていた時の、ノアと同じ様な冷淡な笑顔。
リーヴはノアから久遠に視線を戻すと、静かに答えた。
「…わかった。約束はする。」
「あー!!よかったわぁー!!おおきにー♪♪♪姉ちゃんも、ええか??」
いきなりコロッとテンションが変わった久遠は、そのままノアにも約束を求める。
「水の音がする。流れてる音……川が近いわ!!いち!!!!」
こいつ話聞いてねぇ。
「ノア、今ね、かなり大切な話をしてるの。ね?」
「歩き回ったから、喉乾いた。」
「うん。乾いたね。俺も喉カラカラ。あのね、今…………水!!!??マジで!?どこ!?リュックにさぁ、水筒あったんだよ!!でも空なの!!」
「入れれるじゃない!!川の水は冷たいわ!!きっと凄く美味しい!!あっち!!早く行こう!!」
「ちょっと、水汲んでくるーー!!皆も行く??」
振り向くと、全員ポカンとした顔で俺とノアを見ている。
「……いや、俺はいい…。こっちのリュックにも水筒があった。これにも入れて来てくれ…」
「僕も、それ飲むのでいいです…」
「わかった!!久遠は?」
「へ?あ、いや、俺は水筒持っとるから……なんなら、これ飲んでもええで?」
「いやぁ!!大丈夫大丈夫!!せっかく水場があるんだし補充も兼ねて行ってくるよ!!凪ちゃんどうする?行く?」
凪ちゃんは、フルフルと首を振って
久遠の袖を握っている。
「じゃあ、メル…」
「ヤデシャ。」
凪ちゃんと離れ離れになったのが、よほど辛かったのだろう…
凪ちゃんの肩にしがみついたまま、メルは首を振った。
離されまいと、肩に爪まで立ててしがみついている。
それ、凪ちゃん痛そうだよメル…。
「じゃあ、ちょっと行ってくる!!」
元気良く、川に向かう俺とノア。
「その水筒に入れた水、発光ゴケにも少しちょうだいね。」
「えー!!!もったいないじゃん!!なら空いたパックにも水入れようぜ。発光ゴケ用に。」
「パックパック……やだ何これ!?なんで、ぬめりゴケなんか入ってんの!?これ食べ物じゃないわよ!?」
「食わねぇよ!!!!」
俺達の そんな会話を聞きながら
残された4人と1匹。
「いつも、あんな感じなん?」
「あんな感じです。」
「アンドロイドって、もっと殺伐としとるもんやないん?」
「いちさんが、普段あんまり緊張感ない人なんで。」
「ノアも、それに釣られて ああなる。」
「あの姉ちゃん、ごっつ殺気出しとった気ぃすんねんけど…」
「出してたな。」
「約束どないしよう……」
「いちが取り付けるだろ。ノアはいちに押し付けるのが一番安全だ。」
「ですね。何だかんだ、いちさんが一番ノアさんの扱い上手いですからね。」
「自分ら、酷いなwww」
俺達がいない間に、まさかのこんなやり取りがあったなどという事は
もちろん俺は知らない。




