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第35話.久遠(1)


広い森の中を、右へ左へと何度も曲がりながら歩く事 数時間。


「ねぇ……久遠。まだ着かないの?俺足が棒になるよ…」

「あははっ。すまんなぁ。迷路みたいやろなぁ…。」

「いちさん、足は棒にはなりません。…っ…まさかっ…!?部分強化持ちでしたか!?棒になるんですか!?ちょっと、してみて下さい。」

「出来ません。」

「…………なぜそんな嘘を付くんですか。」

「嘘じゃないもん!!例え話じゃん!!」

「嘘じゃないですか。足が棒になるって確かに言いまし……いたい!!!」


俺は大人気ないの。

ギンのほっぺたを、思いっきりつねってやった。


「ははははははっ!!おもろいなぁ、自分ら。なんや、人間みたいな会話するやん。」

「???自分ら…?あなたが、ですか?」

「ん?あぁ、すまんすまん。あんたらって意味な。」

「なぜ“自分”と“あなた”を、逆にするのです?」

「方言っちゅーやつやな。まぁ、俺のんも色々混じっとるから…どこのっちゅー訳でもないんやけど…」

「なんと…方言とは…興味深いですね…」


知識大好きなギンは、どうやら知らない事には特に敏感に興味を持つ様子。

しかしさっきも、リーヴやノアほど敵意を剥き出しにはしていなかったとはいえ 人間とアンドロイドの過去を語ってくれた時の様子から見ると……

人間が憎いという気持ちが心の中にあるのも、確かだろう。


でも、久遠と話すギンの目は

知らない事への興味でキラキラしてる。

凄く、子どもっぽくて可愛いと思うんだよな。

普段は、あんな憎たらしいのにね。


「ギン坊は、知りたがりやねんなぁ。」


久遠は、笑いながらギンの頭をポンポンと軽く叩いた。


「……ギン……ボウ……!?僕は棒ではありません!!!勝手に人を棒にするのは辞めて頂きたい!!僕は棒になると言いましたか?言ったのは、いちさんです!!」

「まだそれ引っ張るの!?」

「あはははははははは!!!」


久遠は、よく笑う。

いや、むしろずっと笑顔だ。

凪ちゃんの後ろから姿を表したあの時から、笑顔だった。


問題は、少し後ろを歩いているノアとリーヴだ。

ぶすっとした顔で、黙ってついて来る2人。

……態度悪っ!!!

あきらかに顔に出ている!!

どーしよこれ。

ギンはダメだ。この子は平気で空気ぶち壊す恐れがあるからな。

悪化する可能性がある。


ここは、俺が間に入ろうじゃないか。

話題を振って……


「リ…リーヴ、リーヴは、ほら、遠征とかしてたじゃん?久遠みたいな方言って聞いた事ないの?」

「アンドロイドは方言使わん。」

「あ……そうなんだ…。」

「…………」

「…………」

「………そういえば…」

「はい!!リーヴさん!!何でしょう!!」

「下っ端兵士が、人間のコロニーを発見して破壊したが、肝心の人間共には逃げられたと悔しそうに話してたのを耳にした事がある。そのコロニーの代表者が、訛り言葉を話しながらヘラヘラ笑う人間だったと。」

「……え。それって…」

「はははっ、それ俺やろうなぁ!!」


久遠が笑いながら自分を指差した。


「この第2区に住んどる人間コロニーの代表で、訛ってんのは俺しかおらへんわぁー。はははは。」


はははは。じゃねぇよ!?

襲われてんのに笑えるとか、凄いんだけどこの人……。


「他の人は訛ってる喋り方しないの?」

「せえへんなぁ。俺の他には妹ぐらいや。俺らは第2区の人間ちゃうからな。」

「へぇ!!久遠 妹さん、いるんだ?」

「………」


一瞬、久遠の笑顔が消えた。


「久遠?」

「…あ、せや。1人妹おんねん。…ははっ。ごっつ気ぃ強くてなぁ。いっつも兄貴の言う事聞かんで無茶ばっかしおんねん。……ほんま…無茶ばっかり…」


言葉に詰まった久遠を見て、久遠が急ぎの事情があると言っていた事を思い出した。

もしかして、妹さんが関係してる…?

この久遠から一瞬でも笑顔が消えるんだ。

無関係とも思えない……。


すると、リーヴが予想外にも久遠に話し掛けた。


「第2区の人間ではないと言っていたな?お前はどこから移ってきた?」

「あー……」


久遠は、空を見上げ 少しの間遠くの方を見つめていたが ゆっくりとリーヴの方を向いて、わずかに微笑みながら言った。


「俺は、第5区の出身や。」


それを聞いたリーヴの表情がこわばる。


「……あそこは、人間が住める様な地区じゃないだろう。」

「だから、移ってきたんや。」

「あそこの人間は全滅してるはずだ。大規模な掃討作戦が決行されたと聞いている。お前はその時にはすでに第5区には、いなかったのか?」

「……おったよ。皆死んだわ。…皆死んだ。俺と妹が、唯一の生き残りや。」

「その時にその場にいたのなら、お前が生きていられる筈がない。」

「なんでや。」

「あそこの地区の連中は狂ってる。皆殺しにするまでやめない。全員殺されたはずだ。俺は第5区の兵士の狂気を嫌と言うほど知っている。ましてや妹もだと!?あいつらが本気の掃討作戦を決行した以上、2人も生き残れる可能性など、皆無だ。」


「……お前らアンドロイドなぁ……。

あんま人間なめとんなや?」


………久遠が、初めて怒りを表に出した瞬間だった。




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