第19話.初めての戦闘(2)
「出来たぞ。こんな感じで、どうだ?」
リーヴが凪を連れて、俺とギンの元に 出来たてのパチンコを持って来た。
「早っ!!もう出来たの!?」
「Y字の丈夫な太い枝を見つければ、あとはゴムツルの両端をY字の枝に結ぶだけだからな。片手では結ぶのにも苦労するが、凪がしっかり結んでくれた。」
「そっかぁ。凪ちゃん、ありがと。」
「…………」
凪ちゃんは、嬉しそうに微笑んで コクッと頷いた。
「では、豚を1つ飛ばしてみて貰えますか?飛距離やスピードから、距離を割り出しますから。」
「わかった。」
「爆発しないよね?すぐに場所バレちゃうよ……」
「大丈夫だ。ちぎらなければ爆発しない。あの木を狙うぞ?」
リーヴはゴツゴツした岩場にパチンコの下の部分を挟んで固定し、豚をゴムツルに当てると 一気に手前に引いた。
ゴムが伸び、ギシギシと音を立てる。
木を見つめるリーヴの目が鋭く細くなった瞬間
ピンッ
リーヴが手を離すと、豚は一直線に木に向かって飛び出し そのまま木にぶつかってビシャッと潰れてしまった。
あぁ………俺の肉が無惨にも1つ飛び散った………。
「うん。いいですね。わかりました。
そうですね……あの辺なら、木が茂っているしノアさんも隠れやすい……となると、あの木の上に登って狙うのが ちょうどいい距離かな……」
計算早っっっ!!!!!
「リーヴさんが発射する直前に、豚の一番下の粒をちぎるのは……誰にしましょうか……」
そう。パチンコを固定すれば、豚を発射させて当てる事はリーヴなら出来る。
しかし、リーヴは片腕しかない。
豚をつけたゴムツルを引き、狙いを定めるだけで左腕は既に使っている。
豚をちぎる事が出来ないのだ。
それが、おれが言った “2人必要になる” と、いう理由。
ギンは両腕がないので、その役目はまず無理だ。
ノアは下で隠れてもう1人の方を奇襲するので
必然的に俺か、凪ちゃんになる。
「俺がやるよ。ノアの方は、何が起こるかわからない。力のある凪ちゃんは、ノアのサポートについてあげて?」
「そうですね。木の上からなら、全ての状況が見えるますし……。状況判断でとっさに支持が出来るとしたら、声が出ない凪よりはいちさんでしょう。凪は、ノアさんと共に 奇襲をするもう1人を頼みます。」
凪ちゃんは、力強く頷いた。
俺は豚を1つ手に取り、残りの2つを地面に置く。
お前らは、この闘いが終わったら俺が美味しく食ってやるからな。待ってろよ、ジューシーな赤ワイン味の肉よ………。
すると、凪ちゃんがリュックを抱き抱えて俺の元に小走りに寄ってきて リュックを開けて、地面の豚を指差した。
「え?入れてくれるの?」
コクンと頷く凪ちゃん。
ええ子やぁ………!!!
まぁ、リュックに入れたら多分中のメルに食われそうだけど・・・。
まぁ、メルも2つは多いだろうし。1つくらいは残しておいてくれるだろう。
俺は地面の豚を拾い上げ、リュックに入れようとして ふと固まった。
リュックの中に、メルがいない。
「え……?ちょ、メルは!?リュックに入ってると思ってたんだけど……え!?メルどこ!?」
俺の声に、辺りを警戒して見回っていたノアが走り寄って来る。
「え?メルいないの!?」
「どうしよう!!?途中ではぐれたのかも!!!」
「ええ!?」
ギンとリーヴも何事かと集まる。
「ちょっと………なんでいないんですか!?冗談ですよね!?」
ギンがリュックの中をのぞき込むが、もちろんいない。
すると、凪ちゃんが上を指差した。
「え?上?」
見上げると、パタパタと飛んで来るメルの姿が。
「メル!!どこ行ってたの!?離れたら危ないだろ!?」
「テンキ、ミテキタデスヨン?」
「敵見て来たの!?あっぶねぇなぁおい!!!見つかったらどうするんだよ!?メルは大事な癒しなんだぞ!?大事なモフモフなんだぞ!?捕まったりしたら俺はどうすればいいの!?気が狂うよ!?」
「ヒョ?」
「私だって嫌よ耐えられない!!!耐えられないわ!!!お願いよメル!!危ない事はしないでちょうだい!!!!」
「ヒョ?」
メルは、俺とノアを交互に見て 首を傾げた。
ギンの冷たい視線が刺さる。
「メル、なぜ勝手な事をしたんです?」
「アゥ。メル、エネルギタリナス……イマメル、トブシカ、デキヌデ……」
「はい?」
「エネルギー足りなくて、飛ぶ事しか出来ないってさ。なんでエネルギー足りないんだろ?」
あ。
俺やノアが、夜たびたび起こしたりしちゃったからか?きちんとした睡眠が取れなかったのかも……。
「敵はこちらに向かってましたか?」
「アイサ。」
やっぱり気付かれてたか……。
俺達を探して追って来てるんだ……。
「位置は?あとどの位でここに?」
「アチカラマスグーン。キョンリン、758ポーデスンヨ」
「ちょっと……。何言ってるか分からないんですけど。」
「ギン、あっちから真っ直ぐ来てて、距離は後758歩だって。」
「いちさん、よくわかりますね。」
「え?なんでわかんないの?頭いいのに。」
「…………」
ギンが眉間にシワを寄せた。
さっきの仕返しは成功した様だ。
ふっ。
大人気ない俺は、満足した。
「メルで758歩なら、すぐに来ますね。皆さん位置について下さい。」
え?すぐ?
俺はメルの足を見て驚いた。
足、ちっちゃ!!!!!!!!
急いでリーヴと木に登る。
なかなか上手く登れなかった俺は、すでに登ったリーヴに引き上げられた。
片腕なのに、俺を引き上げるって………。
軍人、恐ろしい……。
リーヴは丈夫な場所を探すと、すぐに腰を下ろし パチンコを挟める枝を器用に見つけた。
下を見ると、木の影にノアと凪ちゃんが隠れてスタンバイしている。
ギンは、少し離れた草むらの中にメルと共に身を隠した。
一気に静けさが増した森の中。
注意深く目を凝らしていると、やがて2人のアンドロイドが辺りを警戒ながら こちらに歩いて来る姿が見えた。
2人の姿を確認した瞬間
心臓が、飛び跳ねた。
一歩一歩、慎重に歩いて来る2人。
さすがスパイとでも言うべきか……枝を全く踏まない。
足音が凄く静かで、ただでさえ静まり返っている森の中だ。
俺達も、 かすかな音でさえ今は命取りになる。
ゴクリ、と唾を飲む。
心臓が破裂しそうだ。
絶対に、絶対に倒すんだ。この2人を。
誰一人欠ける事無く 俺達で倒すんだ。
そう決意した瞬間、豚の一番下の粒に当てている指先が一瞬熱くなったのを感じた。
「…………?」
しかし、豚を中央に当てて目一杯伸ばしているゴムツルが微かに揺れた。
リーヴが、狙撃のポイントを相手に合わせ初めたのだ。
ついに
2人が、ノアと凪ちゃんが身を潜める木のそばまで来た。
俺はそっと豚の一番下の粒を掴んだ。
「ふっ」
リーヴが息を吐く。
これが合図。
リーヴが手を離すその瞬間に合わせ、俺は豚の一番下の粒をちぎった。
パリッ
そのまま一直線に飛んでいく豚の外側を、一筋の細い黄色の線が一瞬で一周するのが見えた。
………え?
あれ……………何???
その瞬間、リーヴがノア達に向かって叫んだ。
「ダメだ!!!!離れろ!!!」
瞬間、ノアは凪ちゃんを抱えて後ろに向かって飛び、身を伏せる形で地面に倒れ込んだ。
リーヴも、同じく俺に被さる形になり、左腕と両足で木にしがみつく。
間髪入れずに
物凄い爆音と、爆風が辺りを覆った。
木が、ミシミシと音を立てて激しく揺れる。
リーヴが被さってくれてなければ、俺は間違いなく吹き飛ばされていただろう。
一体、何が起こった……?
敵の攻撃を受けたのか………?
皆は無事なのか……?
俺は不安と恐怖でガタガタと震えながら、リーヴの下で必死に木にしがみついていた。




