17話.この世界の食べ物は一体何なんだ?
朝、俺は顔にフサフサ当たるメルの尻尾の感触で目が覚めた。
先に起きたメルが、俺が起きるまで待ってくれていた様なのだが
あまりにも俺が起きないので、どうやら待ちくたびれて尻尾で催促されてしまったらしい。
フサフサの尻尾の感触がたまらない。
こんな起こされ方なら、毎朝でも構わない。
いいや、むしろお願いします!!
「うはぁー……気持ちいいーーフサフサァーーーーー」
「オハマス!!オハマス!!オハマスー!!オハマス!オソマス!!」
あれ、最後に嫌味加えられた。
「おはようございます、いちさん。」
「うーわ、やっと起きた!!すっごい寝てたね。メルが可哀想だったわ。」
「いち、ほら。起きたならさっさと食え。」
モソモソ起きて、メルを抱えながら皆が輪になって座っている所に行くと
輪の真ん中には色んな果物が並べられていた。
「え!!凄い!!どしたのこれ!?」
「リーヴさんが見つけて来てくれたんです。」
「いつも遠征に行く時は、その場で食い物見つけて食ってたからな。慣れてる。」
「凄い………!!やったぁ!!美味そう!!」
お腹ペコペコだったんだよね!!
昨日何も食べてないもんな!!!
早速、赤い果物を手に取ってかぶりつくと………·
ブシャアアアアァァッ!!!!
物凄い勢いで、水分が飛び出して来た。
本当に、物凄い勢いで。顔に向かって滝みたいに。
「あっははははははははははははは!!!ちょーーーー!!ぶははははははははは!!!!」
ノアが俺を指さして大爆笑。
「……何これ。」
「凄い……僕……赤実ナガランダラクベンドミズミの汁を浴びた人初めて見ました……」
実の名前、長っっっっっ!!!!
「え、赤実ナガ……何?これ果物じゃないの?飲み物なの?」
「それは、ケツから食うと身を守る為に汁を勢い良く出す実だ。頭から食え。基本中の基本だ。」
なんで果物にケツと頭があるんだよ!!!
「逆が頭って事か……、つまり、こっちから………って、なんか絞んでるんだけど。ペラペラになってるんだけど……」
「一度ケツから食っちまったら、もう食えない。そいつはケツから全てを出し尽くした。」
「リーヴ……表現が嫌すぎる。
違う意味で、もう食えない。
ケツから出し尽くしたって………表現が汚いんだよ!!!!!食えないよ!!頭からでも、もう食えないよ赤実なんとか!!!」
「いちさん。赤実ナガランダラクベンドミズミです。」
「知らねえよ!!もはや早口言葉だろそれ!!!!」
「もぉ!!ちょっとあんた、顔洗って来なさいよ汚い!!!」
「…………」
俺は黙って湖の水で顔を洗った。
どういう事?
食事1つで、昨日1日分と同じぐらい疲れたんだけど。
しかもまだ食ってないのに。
食事って、こんなんだったっけ……?
首を傾げながら戻ると、すでに赤実なんとかは食い尽くされていた。
皆、あんな会話の後でよく食ったな……。
頭から食ったら、相当美味しい実だったのかな?
そんなことを考えながら果物を見定めると
ふと、俺の目に1つの果物が止まった。
紫色の丸い粒が 鈴なりにくっついている実を手に取る。
俺、この実を知ってるぞ。俺の記憶の中に、確かにこの実がある。
えぇっと………
そう!!!
ぶどう!!ぶどうだ!!!!!!!
甘くて美味しいぶどう!!!
嬉しくなって、俺は1番下の1粒をちぎった。
かじらなかったのは さっきかじって痛い目を見たから。念には念を。同じ過ちを繰り返す俺ではない!!
パァアアアアアアンッ!!!!
爆発した。
持っていた左手の茎の部分だけを残して、見事に勢い良く、俺の顔の前で破裂した。
残ったのは、左手で持っていた茎と
右手でちぎった1粒だけ。
あまりの衝撃に、頭がクワンクワンと揺れている感覚に襲われる。
「………何これ。」
「ぎゃはははははははははははははははははははははははは!!!!」
ノアが腹を抱えて再び大爆笑。
「いちさん……豚の食べ方も知らないんですか………」
「豚!!!??俺が知ってる豚と違うんだけど!!!???」
「なぜ、かぶりつかなかった。
そいつは ちぎると ビックリして相手と共に潔く死のうとする。食うときは、勢い良くかぶりついて即死させるのが基本だろ!!!」
「なんで果物が心中しようとすんの!?」
「果物じゃないわよ。それは肉よ。」
「違う!!!俺が知ってるぶどうじゃない!!!!ぶどうは肉じゃない!!!」
「じゃあ、唯一残ったその1粒を食べてみなさいよ。」
俺は半ばヤケクソで右手に残った1粒を口に入れた。
…………ジューシーな肉汁が口の中いっぱいに広がる。
あぁ………しかもこの味……
赤ワイン煮込み………………
「どうよ?」
「……肉でした……。」
なんてことだ……。めちゃくちゃ美味い。
しかし何気に、ぶどうと関わりのある味というのが腹立たしい。
「わかったら、顔を洗って来なさいよ。あんたの顔、豚の体液だらけよ。」
「……………」
俺は黙って湖で顔を洗った。
おかしいな……
食事って、こーゆう物だったっけ……?
豚って、あんな形してたっけ……?
心中しようとするんだっけ……?
爆発するんだったっけ……?
なんか、俺が知ってると思ってる事が
そのまんまだと思ったら大間違いな気がしてきた。
そう言えば、リーヴは馬を知らなかった。
もしかして馬ってあーゆう風な果物で、蹴ったりしない物なんだろうか。
でも、あのぶど……いや、豚の味つけは………赤ワイン煮込みだろ。ぶどう使うだろ……?
これは俺が知ってる記憶と同じだろ?
ぶどう全く関係ないって訳ではなくなるよな………?
…………………。
訳わかんなくなってきた。
「おーい!!いちー!!1箇所に長くは留まれない!!早く食って出発するぞー!!」
考え込んでいる俺に向かって、リーヴが叫んで来る。
「あっ、待って!!ぶど……豚だけ残しといて!!今行く!!」
ひとまず、他の食べ物は何が起こるのかわからないので今は食べるのはやめとこう。
じゃないと、食べるたびに顔を洗わなきゃいけないハメになる。
洗った顔を袖で拭き、引き返そうとしたその時
「……………え?」
目の端に、何かが映った。
それは湖の中。
目を凝らして湖の中をよく見てみると
何かが泳いでくるのがわかった。
魚か………?
次第に、その姿の形がジワジワと わかってきた。
それが何なのか と理解した時には
もうこちら岸まで20メートル程にまで近付いていた。
「リーヴ!!!リーヴ!!!皆!!!!追っ手だ!!!!!!!」
俺は出来る限りの声でさけびながら、弾かれる様にその場から全力で皆の元に走った。




