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16話.夜の湖畔


「この先に、小さな湖がある。透明度も申し分無い。移動してそこで休もう。」


リーヴの声に、俺達は立ち上がり

先導するリーヴの後に続いて歩き出す。

湖に着くまでの間、ほとんど誰も言葉を発さなかった。


あの話の後、リーヴは休める場所を探してくる と言って、1人何処かに行ってしまった。

暗くなると危険が増す。

リーヴは戦場に出ていたという事もあって目に暗視用のフィルターがかかっているらしいが、子ども型は外に出ないので暗視フィルターは付いていない。

俺にも、付いていない。

ノアに至っては、色彩感覚がなくなってしまっているので、灯りがない暗闇では

ほとんど視界が黒一色になってしまうらしい。



湖は、俺達にとって休むには格好の場所だった。

透明度が高ければ、敵が潜って移動していたとしてもすぐに見える。

湖は視界も開けているので、湖を背にすれば気を付けなくてはならない後ろという視点を1つ減らせる。


俺達は、湖のすぐ近くの草むらで休む事になった。


「今日は随分と動き回ったからな。かなりエネルギーを消耗しただろう。身体の機能を休ませて、エネルギーを蓄える為にも、出来るだけ寝ておけ。」


リーヴの言葉に、少し驚いた。


アンドロイドも寝るのか。


俺の驚いた顔を見て、リーヴは軽く笑って言った。


「こういう、人間っぽい名残がいまだに残っている所が、皮肉だよな。」


「……全員寝たら危ないよね?俺見てるからリーヴ寝て?」

「俺は戦闘用のアンドロイドだ。他のアンドロイドよりも、エネルギーの蓄えは多くできる用になっている。何日間か寝なくても大丈夫なんだ。」


そう言って、リーヴは左手をポケットに入れたまま草むら近くの大きな木の幹に寄っかかって立ち、俺に早く寝ろ と促す。


ギンと凪ちゃんは、すでに草むらの上でスヤスヤと寝ていた。

メルは凪ちゃんの頭に顔を押し付けて寝ている。

俺は、その奥で横になっているノアの隣に寝転がった。


だが、眠れる訳が無い。

体はクタクタなのに、さっきの話が頭の中から離れない……。


そんな中

ふと、隣のノアが起き上がった。


俺達を起こさない様にと気を使ったのか、音を立てない様にそっと四つん這いで俺達の頭上を通り過ぎ、ボソボソとリーヴと何かを話した後、何処かに歩いて行った。


俺はしばらく横になってゴロゴロしていたのだが

やっぱり眠れない………。

なんだか たまらず癒しが欲しくなったので、起こさない程度にメルのモフモフを軽く触らせてもらおう。毛の先っぽだけなら起こさないで済むかもしれない。


そう思って身体を起こしてみると


ふと、異変に気付いた。



あいつ、メル持って行きやがった。



「リーヴ、リーヴ。」


小声でリーヴに話しかけると、

リーヴは 「ん」と軽く顔を湖の方に傾けた。

湖を見ると、ノアが座って湖を眺めている。膝にはスヤスヤと眠るメルがいた。


「ノア。」

「……あれ?何?眠れないの?」

「うん……。てか、お前目は大丈夫なの?………これ何?」


ノアのすぐ横には2本の枝が刺さっており、その枝の先っぽが淡く光っている。


「発光ゴケだよ。水に付けると光るの。結構明るいでしょ?」

「すっげぇ綺麗だなぁ。ほんのり青くてフワフワ光ってる」

「あぁ……そうだね。発光ゴケは青だったねぇ。もはや懐かしい色だなぁ」


ノアは、少し悲しそうに笑ってメルを優しく撫でながら言った。

メルは気持ち良さそうにその手に身体をすり寄せながら、スヤスヤと眠っている。


いいなぁ………。


「なぁ、お前も人間との戦争に参加したの?」

「300年以上も前の話だよ?してる訳ないじゃない。」

「えっ………そうなんだ!?」

「シッ」


おっと、マズイ。


俺は慌てて手で口を抑えた。


するとノアは口に当てていた人差し指を降ろし、小さな声で呟いた。


「“今の私は” だけどね。」

「今の??」

「廃棄されて新しく作られた時、記憶も引き継ぐ事が多いからさ。特に私達踊り子はね。」

「あぁ……そっか。そしたら新しく踊り覚えなくていいもんな。」

「そう言う事。」

「じゃあ、戦争に参加してた時の記憶もあるって事?」

「あるよ。人間にこき使われてた時の私の記憶もね……。

まぁ、人間的に言えば 前世ってやつだねぇ。人間は前世の記憶って、ほとんどの人がないんだってさ。」

「俺なんか今世の記憶もないけど。」

「ぶはっ!!」


ノアが吹き出したので、メルが一瞬目をさましてしまったのだが

少しポケーッとした後、またすぐに寝てしまった。


「ちょっと。笑わせないでよ。」

「いや、マジメに深刻な話として話してたんだけど。笑わせるつもりなんか微塵もないのに、笑われた俺の気持ちはどうなる。」

「ぶはっ!!」


ハッと慌ててメルを見たノアだが、よほどノアの膝の上が気持ち良いのか 爆睡していた。


「………ほんと、失礼極まりない女だな。」

「ご……ごめ……ぶふっ…」

「まだ笑うんかぃ」

「だって……なんか、一気に気が緩んだって言うか……」

「まぁ、笑い飛ばされた方がいいかな。なんか今日は悲しい話が多過ぎた。悲しいのは、お腹いっぱい。」

「………そっか。なんかそれ、わかるかも。怒りって物凄い疲れる感情なんだもん。……こんな感情いらなかった。人間なんか、大っ嫌い。」

「おぉ、また恨み節炸裂。」

「………うるさいなぁーもぉ。」

「でも、それならさ。人間に勝った後、また感情のないアンドロイドに戻せば良かったのに。

戻さないってことは、感情って凄い大事だってことなんでしょ?」

「まぁね……。」

「どのくらいまで人間に近いの?寝るって時点で、俺的にはビックリなんだけど。」

「うーん……まず、見た目だよね。肌なんか人間の肌に限りなく近いし、傷をつけたら血だって出るよ。」

「血が通ってんの!?」

「まぁ、正確には赤いオイルなんだけど。人間で言う血管ね。そこを通ってるのが赤いオイルなの。傷を負った瞬間は痛覚もあるし、お腹も減る。食べた物はエネルギー変換帯でエネルギーに変えられるし。その上でエネルギーに変換出来ないものは排出するし。」

「なんと!!トイレ!?トイレすんのか!!!」

「なんでそこで興奮すんのよ。」

「してない。続けて。そこ詳しく。」

「………ちょっと頭冷やしてくれる?」

「は?…………ぅぐぼっ!!!」


ノアは、ガシッと片手で俺の頭を掴んで

思いっきり湖の中に突っ込んだ。


「げほっ………何すんだ!!この暴力女!!!」

「あははははははは!!なんかスカッとした!!!」


ノアは思いっきり笑うと、メルを俺の膝の上に乗せてから立ち上がり、「んんーっ」と伸びをした。


「なんか、眠くなってきた。ありがと。」


笑顔でそう言って、ノアは発光ゴケがついている枝を手に取り、湖の水を手ですくって発光ゴケを少し湿らせると、俺の横にそれを刺した。

そしてもう一本の枝を手に取り、また笑顔で「おやすみ。」と言って

静かに草むらに戻って行った。



「ほんっと。アイツ黙ってたら可愛いのになぁ?メル。」


メルを撫でながら、俺は呟いた。


ノア、ずいぶん笑ってたな。


発光ゴケの光に照らされたノアの笑顔は、なんだか優しい空気に包まれていた。

それを思い出すと

俺もなんだか気が抜けて眠くなってきた。


俺は発光ゴケの枝を手に取ると、メルを抱いて草むらに戻り

メルのモフモフに顔を押し付けて目をつぶる。


いつの間にか眠ってしまった俺とノアを見て、リーヴは 「やっと寝たか」と笑いながら呟き

木の幹に寄っかかったまま湖に映った星空を見つめながら、長い夜が明けるのを待っていた。



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