15話.この世界の悲しい過去
皆が黙りこくってしまったので
俺は、ドキドキしながら凪ちゃんの肩に乗っているメルの前に座り、聞いてみた。
「ねぇ、メル。メルを作った中野博士ってロボット作れるんだよね?」
「アイサー!!ハカセハ、スゴスデスサー!!!」
えーーと………うん。大丈夫。
かろうじて、まだ何言ってるのかわかる。
「じゃあさ、人間のアンドロイドはどうかな?作れはしなくても、故障部分を治す…くらいは出来ないかな?」
メルは、目をパチクリさせてキョトンとした。
「ねぇ、どうかな?結構いい案じゃね?」
俺は、いそいそとギン、リーヴ、ノアの3人に同意を求めてみた。
俺にしては珍しく的確な事を言ったんじゃね?
しかし、3人は無言だった。
ギンに至っては、呆れた顔をしている。
「………あれ?出来ないの?ダメかな?ねぇ、メル」
「ムリデシャ!!!!」
「う………」
無理なのか………。
やっぱり人型アンドロイドって、物凄い精密なのかなぁ。
しょぼーん………としている俺を見て、またギンがため息をついた。
「そもそも、人間が僕達アンドロイドを修復するはずがないでしょう。」
「え?なんで?」
「彼らにとって、僕達は天敵以外の何者でもないからですよ。」
「……え?何?アンドロイドって人間とも闘ってんの!?」
「僕達は今、それぞれの領地を奪い合う闘いをしていますが、この闘いが始まる前に僕達アンドロイドがしていたのは、人間の排除ですから。」
は……………排除!!??
「昔、人間を………殺してたって事……?」
「今でも見つけたら殺しますけど?」
冷たく言い放つギン。
驚いてリーヴとノアを見ると、2人とも 当然 という顔をしている。
「なんで……なんで、そんな……殺すなんて……なんで!?」
「………憎いからでしょうね。」
「何かされたの………?」
俺の言葉に、ギンが一瞬息を呑む。
そして、ゆっくりと……
憎しみの篭った声で話始めた。
「………昔、僕達アンドロイドを奴隷扱いしていたのは人間です。………それも、自分達が楽をする為だけに。
少し楽をすると、もっと楽したくなるのが人間なんですよ。どんどんアンドロイドを作って、自分達は楽をする。何から何までアンドロイドにやらせて。
普通のアンドロイドなら、それでも不満や憎しみなんて持ったりはしなかったでしょう。何の感情もないんですから。
でも………欲を出した人間は、アンドロイドに感情や思考を持たせる事を考え始めました。その方が、より人間の代わりに近くなるからでしょうね。欲を満たす為、優越感に浸る為………様々な欲を、満たす道具にする為に………。
始まりは、一人の人間でした。
資産家だったものの、かなりの高齢者だったその男は、高齢の自分では実験に耐えられないと知った為、唯一の肉親である孫を実験に使い、孫の容姿・感情・思考を合わせ持ったアンドロイドを作ろうと大金を叩いて研究を重ねました。
そうすることで、自らの家系を永遠に残すことが出来るだろうと考えたんです。
その孫は、不治の病を患っていたという話ですので、子孫を残すことは恐らく不可能だったのでしょう。
結果、初めて感情や思考を持ったアンドロイドが産まれました。
その男は、この感情と思考を持ったアンドロイドの研究の成功により、更なる資産を得ることになります。
そうして、どんどん感情と思考を持ったアンドロイドは量産されて行きました。
結果……感情を与えてしまったが為に
アンドロイドは人間に不満という感情を持つ事になってしまったのです。
我々アンドロイドの、人権の尊重、自由。
それらを縛り付ける人間への憎しみ。
人間へ反乱の狼煙を上げようと最初に立ち上がったのが………皮肉にも資産家の男が作り出した、最初に感情を持って産まれたアンドロイドでした。
たった一人立ち上がったそのアンドロイドに、ほとんどのアンドロイドが続きました。
人間VSアンドロイド の戦争の始まりです。
………結果は、聞かなくても分かりますよね?」
「人間達は、自分達が作ったアンドロイドに滅ぼされたんだな……」
「はい。かろうじて戦火から逃れ、生き残った人間達は、アンドロイドに見つからないようにと、ひっそり隠れて暮らしています。同じように僕達アンドロイドを憎みながら。」
「…………。」
もう言葉が出なかった。
ギンも、それ以上は何も言わなかった。
リーヴも、ノアも。
重苦しい空気が、俺達の周りを包んでいた。
気付けば、すっかり日は暮れていて
森の中はもう真っ暗になっていた。




