13話.まさかの、もう1つの可能性。
「な……凪ちゃんも、スパイの可能性があるって事?」
「………いえ、子ども型のスパイなんていませんよ。」
「え?そうなの?」
「スパイって、その領土の色んな所を調べるんですよ?どこの守備が手薄か、今現在どれだけの戦闘力が駐在しているのか、駐在している部隊の戦闘力の配置場所。逆に、どれだけの戦闘力が遠征などで留守にしているのか、その遠征先はどこなのか。などなど、これらを調べるんですよ。」
「た………大変なんだな……」
ゴクリと唾を飲む。
俺、スパイにはなりたくないな………。
やる事多すぎるわ、敵の中に忍び込みながらバレない様に過ごすとか………考えただけでハゲそう。
「まぁ、子ども型が街中ウロついてたら、それだけでおかしいですからね。」
「えぇ?街に子どもくらい、いるだろ?」
「いません。子ども型は、情報処理班ですから。室内から出ませんし。」
うぉ……。なんだそれ。
不健康極まりないな。
じゃあ、凪ちゃんまでデータに名前がないとなると………
データに名前がない=スパイ と、決め付けるのは早過ぎる……って事か……。
ギンは、俺を見てコクンと頷いた。
エスパーか!!??
すると、それまで黙って聞いていたリーヴが首を傾げた。
「でも、そうなると凪の力の強さはおかしくないか?子ども型って、筋力にはスペック回さないだろ?」
「そうですね。回しても、素早さぐらいにですね…。」
「なんで?情報処理って、素早さもいるの?」
「敵のスパイや暗殺部隊が真っ先に狙うのは、僕達情報処理班ですからね。」
「は!?暗殺!!?」
おいおいおい…。
もう物騒な事は何でもアリだな……。
「はい。狙われた時に逃げられる様に 素早さのスペックは高くするんですよ。まぁ、子ども型なので身軽さはもともと高いんですけど。知能と素早さにほとんどつぎ込むので……筋力に回すスペックはないはずなんですけど………」
チラリとギンが凪ちゃんを見ると、凪ちゃんはビクッとしてリュックをギュッと抱きしめる。
そんな凪ちゃんを見てギンはため息をつき、再び俺に視線を戻す。
「いちさん、あと1つ。あくまでもスパイかもしれないと言うのは可能性の1つなんです。身体機能の低さについては、あと1つ僕なりの仮説ですが………。
エネルギー変換帯が壊れている。という可能性もあるのでは?」
「あぁー!!!………なるほど!!それかも!!」
ノアが手をポンと叩く。
いや、ごめん。全然分かんない。
ギンが俺の顔を見て、でしょうね。と言わんばかりに頷く。
エスパーだわ。
「僕達は空気中の成分を吸って、それを体内でエネルギーに変換して動いています。いちさんは、そのエネルギー変換帯が壊れている為に、すぐエネルギー切れを起こして機動力も上がらないのではないでしょうか。」
ほう………。大変だ。
何を言ってるのか、全く分からない。
そんな俺を見て、ギンが眉間にしわを寄せた。
「分かりませんか……。」
「分からない。」
「…………。」
怖い!!!
学校の先生に怒られてる、生徒の気分だ。
「あ、でも、機動力がなくなっちゃったってのは、もう一個壊れてる所があるから………って事は、わかっ………た………え?俺、記憶喪失だけじゃないって事!?」
「まぁ、可能性ですが。」
壊れ過ぎじゃね!!??
そりゃ、捨てられるわな!!!!!
記憶がない上に、機動力もなくなっちゃったとか、そりゃ捨てられるわ!!!!
だって今、戦争してるんだもんね!!
ひ………
酷い……··…。酷いよ。
泣きそう………。
ずぅぅぅん………と、落ち込んでいると
ふと、俺の袖が ツンッと引っ張られた。
振り向くと、凪ちゃんがリュックをギュッと抱きしめたまま、俺をじぃっと見つめている。
「あ………ごめんね、凪ちゃん。怖い話ばかりで不安になっちゃったかな?……うん。わかるよ。お兄さん、ついでにもう一つ壊れてしまいそうだよ。心が。ははははははははははははははは。」
「……………」
そんな俺を見て
凪ちゃんの眉毛が、ハの字になった。
「………あ…、嘘嘘嘘嘘!!!ごめん、嘘!!嘘だよ!?」
「………………」
うわぁ!!!
めっちゃ悲しそうな顔してる!!!
ワタワタ慌てていると、凪ちゃんは抱き締めていたリュックから 何かをゴソゴソと取り出した。
いや、何かゴソゴソしているのを取り出した…………と言う方が正しい。
だって、生き物っぽ……ぃ……。
「……え?」
目が合った。
クリクリしている目。
フワフワモコモコした気持ちよさそうな毛に覆われ、耳がピンッと立っている。
かすかにフリフリと揺れている尻尾。
パタパタと忙しそうに動く羽。
何これ。
あれ?俺、これ知ってるぞ?
記憶喪失のはずだよな?なんでわかるんだろう。
でも、これ知ってるぞ?
確かに知ってる。
凪ちゃんのリュックから出て来てすぐ、俺をジィーッと見つめているこの生き物は
どこからどう見ても………
ドラゴンの子どもだった。




