11話.俺は一体誰なのか?
森の中に逃げ込んだ俺達は、ひとまず追手の目に止まりにくい場所を探し出し、そこにある大きな木を背にして5人で円形に座った。
「これで、やっと少しはゆっくり話す事が出来そうですね。」
「そうだな。ひとまず、お互いの事を出来るだけ知っておいた方がいいな。何が得意で、何が出来るか。知っておけば、この先逃げて行く上での策も変わってくるだろう。」
「私に関しては、そこの記憶喪失の馬鹿以外は知ってるでしょ?」
「ただの記憶喪失だ。馬鹿はいらねぇ!!!この馬鹿。」
「……っ…………!?」
え。凄い。本気で驚いてる。
自分が馬鹿だという自覚の無い馬鹿が1番タチ悪いんだよノアさん。
まったく。人の事を馬鹿だ馬鹿だと失礼な女だな。
俺は馬鹿じゃ………
…………。
…………っ…………!?
あれ………?
俺も………か………?
俺も自覚の無い馬鹿なのか……?
え………?
「あの、ちょっとすいません。一人芝居はそのくらいにしてもらっていいですか?」
「へ?」
「ドヤ顔で笑ったかと思ったら急に青ざめて。忙しい人ですねあなた。頭のネジまた落としましたか?ネジ足りてますか……?大丈夫ですか?……色々と。」
ちょっと待って待ってギン君。その可哀想な人を見る目を辞めて欲しい。俺そんなに頭のネジポロポロ落としてますか?
「ごめん……。話を………進めて下さい。」
正座した俺を見てギンは少し首を傾げたが、コホンと咳払いを一回してからキリッと顔を上げて、俺達に向かって口を開いた。
「実は僕、この第2区に所属しているアンドロイドの全データを持ってるんです。名前、職業、部隊、戦闘ランク諸々のデータを全て。」
個人情報ダダ漏れ!!!???
「例えば、リーヴさん。よろしいですか?」
少し驚いた顔をしていたリーヴだが、すぐに落ち着きを取り戻してギンの目をまっすぐ見つめ、頷く。
「第2区特別先進隊に所属し、第1ガンナー部隊を率いる隊長を務めていた実力者。戦闘ランクはBランク、ランクレベルは235。」
ほへぇー……。隊長かぁ……。
やっぱ凄いんだなリーヴ……。
「俺のランクがBだったのは両腕があった時だ。今じゃCランクあるかないかじゃねーか?」
「僕なんか、情報処理班でしたから……身体機能には全くスペック回してないので、戦闘ランクで言っちゃうとEですよ?」
「お前は知能ランクが化け物並だろうが。」
「まぁ、そうですね。この中では断トツで頭がいいのは僕です。」
子どもは謙虚に生きてこそ、可愛いんだよギン君…?
「じゃあ、ギンは戦闘には向いてないって事?」
「はい。だから余計な身体機能はいらないので、子ども型なんですよ。」
「あ、じゃあ、凪ちゃんも子ども型だから……情報処理班だったのかな?」
俺の質問に何の反応も見せず、凪ちゃんはただただ黙って俺の目を見つめていた。
そんな俺達を見ていたギンが、俺の方向に身体を向けて座り直した。
あ!!そうか……!!
全員のデータを持ってるって事は、俺のデータもある訳だよな!?
「ギン!!俺は何て名前なの!?何やってる人なの!?闘う人ではない気がするんだけど………」
ギンは静かに目を伏せ、やがて再び俺の目を見る。
そして少し怒りが混じっているかの様な声で、静かに口を開いた。
「僕のデータの中に、あなたはいないんですよ。」
「……え?なんで…?だって、全員のデータあるんでしょ?」
「僕はこの第2区に所属しているアンドロイドのデータ……と、言いました。」
ここまでを聞いた瞬間、リーヴとノアの空気がピリッとした空気に変わった。
良くない方向の話だという事は………俺にもすぐにわかった。
「じゃあ……、俺は……どこから来たって事……?」
「第3区、第4区あたりから送り込まれたスパイ………の可能性があるかと。」
「…………は?」
スパイ………?俺が………?
いや、戦争みたいな物騒な話題っぽいのは、確かにここまでいくつかしてたとは思うけどさ………
え………
俺が敵のスパイって事?
一気に心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
冷や汗が止まらない。
自分がスパイかもしれないという、いきなり敵みたいな存在の可能性を言われて………正直、ビックリするというよりもショックの方がでかかった。




