第57話.運命の歯車
俺の言葉に、久遠が驚いて叫んだ。
「第1区やと!?ここの第2区と、1、2を争う強豪地区やぞ!?」
「でも、逆に言えばさ。2区は一番手を出しにくい地区だよね?」
とはいえ、一度2区は1区に戦争仕掛けてるんだよね。
リーヴはその戦争で右腕をなくしてるし。
「まぁ……確かにこのまま2区にいるのは危険でかいやろなぁ……ネオの欲しいものが、ここには最低でも2つあるけぇなぁ…」
ノアと、メルだ。
「だから、まず俺達が1区に行って様子見てみるよ。
広くて安全そうな場所があれば、後からそこに皆で来て 電磁波結界で囲めれる。
そしたらそこが俺達にとっての拠点にも、人間の保護場所にもなるだろうしさ」
「…なるほど…。それまでは、ここの中野博士のコロニーで電磁波結界張りながら、待つって訳やな…」
ただ、問題なのは
もし1区も、ここの2区と同じくらい危険な思想のアンドロイドだらけの巣窟だったら…って事なんだよな。
「純粋な安全面で言うなら、お互いに全く干渉してないっていうシュカさんの第4区が一番安全なのかもしれないけど……」
俺の言葉に、それまで黙って聞いていたシュカさんが首を傾げた。
「安全…ですか…。しかし、我々の戦闘力を考えたら第4区への移住は危険なのでは?
ネオは喜んで乗り込んで来ますよ?
……あの通り、お恥ずかしい事ですが一瞬でBランカー4人をやられてしまいましたし。」
「…ごめん…。Bランカー4人も…。
シュカさん、怒られるよね…」
「あ、いいえ?総合的には5番を倒せてますし、メルさんがネオの手に落なかったという一番の目的も果たせましたし。
僕、かなり褒められますけど。」
「褒められるんだ…」
「ええ。ナンバーはその地区の戦闘レベルを表す核です。1人でBランカー何人もの価値を持ちます。
トップレベルの強豪地区である2区のナンバーをやれたというのは大きい。
その上、5番は上位ナンバー。Aランカーならまだしも、Bランカーなら30人やられてもお釣りが来ますよ。」
何その価値観……
ちょっともぉ……
あのBランカーさん達、凄く頑張ってたよ…?
1人だけど…名前まで出てたんだよ?
あぁもぉ本当に、何て世の中だ…。
しかし…
じゅんって、そんな凄い価値があったんだ…。
じゅんを失った第2区の痛手は相当な物って事か…。
俺が考え込んでると、ギンがふいに口を開いた。
「…シュカさん。4区はメルを欲しがりますか?」
ギンの言葉に、メルはビクッとしながら凪ちゃんにしがみついた。
そんなメルを見て、シュカさんはクスクス笑った。
「そりゃあ、もちろん欲しいでしょうね。
でも、僕は“持ち帰れ”という命令は受けていません。
あくまでも、ネオの手に渡る事を阻止しろ、とだけ。
うちのリーダーは、そんなに馬鹿ではありませんよ?」
「大き過ぎる力は、自らを滅ぼす…。
なるほど。さすがは頭脳派地区ですね。わかってらっしゃる。」
全然わかりません。
まぁ、メルを奪う気がないって事みたいだし、その点は安心かな。
「じゃあ、やっぱりまずは第1区に行ってみる…って事でいいかな?」
「そうね。いちの記憶に関する奴もいるまたいだし。」
「ああ……、それなんだが。いち。」
話がまとまりつつあった所で、リーヴが俺に向かって手を上げた。
「シュカとお前達が話をしていた時に、俺が言った事…覚えてるか?」
「へ?」
「ああ、だめよリーヴ。ほんといち、すぐ忘れるから。確かリーヴは…
“お前…だったのか……?”みたいな事言ってたわね。」
何そのモノマネ。めっちゃ似てるんですけど。
「そうだっけ?でもそれって、どーゆう事?」
「俺は、前に2区の隊長として1区との戦争に参加した…という話はしたな?」
「…うん。その戦いで右腕を…」
「俺はあの時な、1区の捕虜になったんだ。」
「リーヴが捕虜!!?」
すっげぇな1区の戦力。
「ずっと地下牢に入れられていたんだが、ある日一人のアンドロイドが牢まで来てな。俺に頼みたい事があると言われたんだ。」
「どんな人?」
「フードコートを被っていたが、[双葉]と名乗っていた。」
「双葉!?」
また、胸がドキンとなった。
1区にいる、俺とそっくりだという双葉というアンドロイド…。
「俺はその双葉に、“第2区にいる、ある男を探して欲しい”と頼まれた。
“きっと、出会うべくして出会うはずだから”と。」
「……それが、俺?」
「わからん。他には何も言わず、俺は次の日釈放された。」
「釈放!?捕虜を釈放って…かなりの重罪じゃないの!?大丈夫なの!?その人!!」
慌ててオロオロする俺の肩をポンと叩いて、シュカさんは笑った。
「大丈夫なんですよ。双葉さんは、第1区のリーダーなのですから。」
第1区のリーダー!?
「第1区って、女の子がリーダーやってんの!?」
「……あぁ…、やっぱり知っておられるのですね?」
「え?」
「私もリーヴさんも、双葉さんが女性だと言うことは一言も言っておりません。」
「…………」
ほんとだ……。
とっさに、当たり前の様に女の人だって認識したんだ俺。
やっぱり、俺はこの双葉って人を知っているんだ。
なんだか、少しずつ運命の歯車がカチリカチリと合わさっていくのを感じた。




