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第55話.守る人に。~サクlast side~

「…まいったなぁ……」


すでに地下コロニーに到着し、一番奥の工房に着いた時

かなり急いで走って来たという事もあってか、まだ自爆の時間まで25分もあった。


リーヴさんの義手と、密かに作っていたいちさんの手袋を机の上に置き、他に持って行く物などを机に並べていたその時、小さなTVモニターを見て 俺は息を呑んだ。


「な…んだ…?こいつらっ……!!」


モニターには、数え切れない程の兵士が地下コロニーの中へと侵入して来ている姿が映し出されている。

1人で戦って勝てる様な数じゃない。

その前に、俺は戦闘員じゃないんだ…。戦闘自体、不可能…。


出口への道には兵士がびっしりと入って来ていて、見つからずに逃げ出すのも、もはや不可能だった。

恐怖で頭の中が真っ白になり、震える足でわずかに後ずさった。


ー……コツン。


手に当たった物を見て、一瞬で全てを理解してしまった。



「……俺…。ここで死ぬのか…。」


手に触れたそれは、完成間近のリーヴさんの右腕だった。


今、俺に出来る事。

それはもう……たった1つしかないんだ。



俺は工房の壁に付けていた配電盤の扉をこじ開け、ガラスで囲まれた真っ赤なボタンをハンマーで思いっきり叩いた。

ガラスは割れ、押し込まれたボタンは大きなブザー音を鳴らしながら あちこちにある防火シャッターを次々と閉めていく。


「なっ……!?なんだ!?」


慌ててキョロキョロしながら閉まったシャッターを叩いたり、こじ開けようとする敵兵達。


無理だよ。

そのシャッターはめちゃくちゃ頑丈なんだ。俺の自信作だからね。


出口への道もシャッターで閉じられた。これであいつらはもう出られない。

それに、工房の前にもシャッターは降りてる。あいつらは入ってこれない。


「…俺も、出られないんだけどね。」


不思議だな。俺はもっと怖がって大泣きすると思ってたのになぁ。


意外と落ち着いてる自分に驚きながら、俺は椅子に座って完成間近のリーヴさんの腕の作業に入った。

本当に、あとひと手間だったんだ。

この鉱石を削って、ここに塗るだけ。


片手で出来る作業で良かった。

右手はもう……動かないから。


これが、俺の作る最後の作品。


「…リーヴさん、喜んでくれるかな…」


ふともれた言葉のせいか、涙が次々とこぼれ落ちた。

わかってるはずなのに、やっぱりどうしても悔しい。


これを使っているリーヴさんを、俺は見る事が出来ないんだ…。



シャッターは丈夫だ。アンドロイドに開けられる様な物じゃない。

でも、コロニーの自爆に耐えられるのかと聞かれたら、答えはNOだ。

ここに閉じ込めたアンドロイドも、俺も、確実に死ぬ。


「この義手と手袋だけは、自爆から守らないと…」


俺は袖で涙を拭いながらも、必死に一つの箱を探した。


「守れる人になりなさい。」


最後に博士に言われた言葉。


守りたい物を、どんな物や人からでも守れる様に。


初めは、とても小さな小さな箱だった。

久遠さんの(サナギ)を必死に研究して、人真似で作った頑丈な箱。

もちろん(サナギ)なんかと比べると豆腐みたいなもんだけど(笑)。


それを、少しずつ少しずつ大きくしていった。


やっとここまで。80cm大くらいの箱にまで出来た。

この中なら、きっとコロニーの自爆に耐えられる。

リーヴさんの義手と、いちさんの手袋。

そして皆の為に作っていた色んな物を詰め込んでいく。

気付いたら泣いていたはずの俺は笑っていた。


だって俺…この箱作りながら、中には絶対莉音ちゃんを入れるんだーってずっと思ってたんだよ。


ガキすぎるだろって自分で自分に突っ込みたいけどさ。

そのくらい、ほんとにほんとに守りたい子だったんだ。


もう、俺にはそれが出来なくなっちゃうから。

久遠さん、リーヴさん…いちさん達に託したいんだ。


莉音ちゃんだけじゃダメなんだ。

出来れば、他の人間…皆を。


だって、莉音ちゃん

すぐ人を助けようとして無茶するから。

無茶ばっかりするから。

自分なんて二の次にしちゃう子だから。


だから莉音ちゃんのために人間皆を守って欲しい。

物凄く自分勝手な我が儘ですが。

これが、僕の最後の我が儘です。



だからね。

いちさん。皆のリーダーのあなたに、手紙を書きます。

左手でしか書けないから、とても汚い字になっちゃうけれど…

汚すぎて読めない所だってあるかもしれないけれど…


それでも、きっとあなたは読んでくれると思うから。



書きながら読んでいるいちさんを想像してみたら

いちさんが物凄く泣いている姿が頭の中に浮かんで来たんだ。

リーヴさんの話を聞いていた時に俺と一緒にボロ泣きした、あの時の顔。



そんな想像をしながら手紙を折り曲げて箱に入れて蓋をした俺は



なんだか嬉しくなって笑ってしまった。



そして、心の底から呟いた。



「会えて良かったなぁ……」




人生最後の言葉がこれで、本当に良かった。


僕が 守れる人になれるのかどうかは、まだわからない。



だから、ここからはもう

祈りながら見守ります。



貴方達に託した物が、どうか貴方達を守ってくれます様に。



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