第53話.終戦
建物の中を出ると、中央の建物はシーンとしていた。
もう既にナッツは撤退をしたのだろうか。
「ご無事でしたか……!!」
正門前に辿り着いた俺達を見て、シュカさんが地面に座り込んだ。
ボロボロだ。足も手も血だらけで 、息も整ってない。
「ごめん。シュカさん…。無理させたね。」
「…いえ。全然。途中で久遠さんが来てくれましたから。」
そう言ってシュカさんはニッコリ笑った。
現場には、リーヴに連れられて来た楓ちゃんが莉音ちゃんの手当をしていた。
「大丈夫なんか?」
心配そうに見つめる久遠に、楓ちゃんはテキパキと衣服を切り、たくさんの注射を打ちながら深刻そうに答えた。
「肋骨が折れているんです。急いで中野博士のコロニーに連れて行ってオペします。」
「間に合うんか!?」
「きぃちゃんも来てくれてるんですよ。背中に載せて運んでくれます。すぐですから。」
「さよか…」
ホッとする久遠に、楓ちゃんは急いで莉音ちゃんを背中に乗せて固定する様にと指示を出した。
「楓ちゃん、お医者さんなんだね。凄いねぇ。」
俺の言葉に、楓ちゃんは真っ赤になってうつむいた。
するとノアが首を傾げて俺に言う。
「さっき久遠が言ってたじゃない。」
「へ?そうだっけ?」
「もう…」
ノアがため息をつくと同時に、物凄い突風が俺達の周りを包んだ。
急いで上を見上げると、太陽とほぼ重なる位置に超大型キメラアンドロイドが2匹飛んでいる。
その1匹の頭の上にはナッツが乗っていた。
逆光になっているため、どんな顔をしているのかはわからない。
「……ナッツ…!!」
『へぇ~、じゅんじゅん、捕まっちゃったんですかぁ~?』
「シュカさん!!弓持ってますか?」
「持ってますが……。ただの弓でアレを落とすのは不可能ですよ?」
「矢にワイヤーをつけて、ナッツが乗ってるキメラに刺してください。出来るだけ長いワイヤーを!!」
「…は、はい…」
シュカさんが、ナッツが乗っているキメラに向けて矢を構える。
キメラが大きな羽をバサバサと動かすたびに、物凄い突風が俺達を襲う。
「いち!!」
ノアが突風で飛んで来た木材などから俺を守る為、俺の周りで飛んで来た物を次々と蹴り落としていた。
「ありがと ノア。」
「いちさん!!行きますよ!!」
シュカさんが撃った弓矢は、見事にキメラの羽に刺さり、ワイヤーはそこから地面に垂れている。
おれは急いでそのワイヤーを掴んだ。
その瞬間、俺に向かってかなり大きな木材が飛んで来た。
俺の後ろに回り込み、ノアが木材を蹴り飛ばしたその瞬間、その風圧でノアのフードコートのフードがパラリと脱げてしまった。
それを見た俺は、思わず あっと声をあげてしまう。
ー……ヤバイ!!!
『……えっ!?』
それを見たナッツの顔がこわばる。
『……ノア……?ノア=エイル!?』
「…くそっ!!」
俺はワイヤーを思いっきり握り締め、ありったけの電流をワイヤーに伝えた。
『…ガッ…!!』
ワイヤーから流れた電流はキメラだけでなく、ナッツにも容赦なく流れ込んだ。
しかし、ナッツはすぐにもう1匹のキメラにリンクし、ふらつきながらも遠くまでキメラで飛んで行ってしまった。
「…逃がした…!!」
思わず地面を叩いてしまった俺に、ノアが駆け寄ってくる。
最後の最後に、ノアの顔を見られてしまった。
「…あいつら、すぐ来るかな…?」
「わからない…。ノア以外にもネオがキレてる原因はあるみたいだし……。
取り敢えず、ギン達の元に戻って合流しよう?」
「…うん。」
急いで怪我人をきいちゃんに乗せ、全員で中野博士のコロニーへと向かった。
俺はほとんど歩けない状態になっていたので、ノアがおんぶしてくれた。
電磁波結界を発動させれば、しばらくはアンドロイドの襲撃を心配する必要はないだろう。
もちろん、シュカさんにも同行してもらった。
誰もが心の底からホッとしていたと思う。
たくさんの犠牲を出したけれど、結果的には俺達の目的が達成させられたんだから。
だけど、この時の俺は妙な胸騒ぎがしていた。
これは中野博士のコロニーに着いた時に明らかになる。
最悪の別れが、今俺達に迫っていた。
あと数話で、第二章が完結する予定です。




