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第52話.武器庫での戦い

じゅんは、スピード型のナンバーだ。

凪も、スピードはかなりのもの。


だが、単純な力勝負に持ち込まれたら……

力もかなり持っているだろうじゅんが有利だろう。


じゅんが、そこら変に転がっている鉄パイプを足でヒョイッと拾い上げた。

ただでさえ早くて懐に入るのが難しいってのに、リーチの長い武器を手にするあたり、相手が嫌がる戦闘スタイルがわかっている。

一体どれだけ戦闘慣れしているのかと思うとゾッとした。


対する凪ちゃんは、太ももに付けていたホルダーから数本の短剣を取り出し、1本ずつ両手の指と指の間に挟んで構えている。

左右3本ずつで、合計6本の短剣。


じゅんはリーチが長い分、高速で短剣を投げられたら全てを処理するのはきっと不可能だ。

しかし、全ての短剣を飛び道具として使ってしまうと、凪ちゃんの武器があっという間になくなってしまう。


2人はお互いに相手の動きを警戒したままの、にらみ合いが続いていた。


なんとか凪ちゃんに動く為のチャンスを……!!


俺は鉄格子の間から手を入れて、握り締めているレールガンにもう片方の手を添えた。

レールガンの射線がじゅんの頭に伸びる。


『へーぇ。レールガンなぁ。まぁ、銃なら鉄格子あっても撃てるかぁー。』


じゅんは、自分の頭に当たっている赤い点を見ながら呟いた。


『撃ってみなよー。もしかしたら当たるかもしれないよー?』


余裕かましまくりのじゅんには腹が立ったが、少しでも可能性があるのなら今の俺には躊躇している暇なんかない。

じゅんの頭から的を外さない様にして、思いっきり引き金を引いた。



ガィンッッ!!!



金属同士がぶつかる音に、一瞬耳をふさぎそうになったが、じゅんを見た俺は目を疑ってしまった。


俺が撃ったレールガンの弾を、じゅんはただの鉄パイプで上に弾き上げたのだ。


またパラパラと色々な物がじゅんと凪ちゃんの上に降り注ぐ。

器用にガレキなどを避けるじゅんだったが、ふとじゅんの動きが止まった。

じゅんの右腕に、凪ちゃんの短剣が2本当も刺さっていたからだ。


『……っ……いつの間にっ!?』


じゅんはチッと舌打ちをすると、2本の短剣を左腕で乱暴に抜いた。


間髪入れず、俺はもう片方の足についていたホルスターから銃を取り出し、銃の銃口を鉄格子の中に手ごといれると、じゅんにめがけて発砲した。


鉄格子の中に入れていた手が、銃を撃った反動で跳ね返り、鉄格子に思いっきり叩きつけられる。


「……ぃいっ…てぇ!!」


俺が手を押さえ込んでしゃがむのと同時に、じゅんは向かって来た銃弾を鉄パイプで鉄格子にいる俺達に向かって弾き返そうと鉄パイプを大きく振りかぶったが、その瞬間、銃弾が様様な方向に分裂して じゅんの足や手、腹などを貫通して行った。


『…散っ…弾銃……だと!?』



俺は、リーヴに2つの銃を持たされていた。

1つは敵にも射線が見えてしまうが当てやすいレールガン。

もう1つは、相手の位置さえ正確にわかればレールガンに気を取られている敵への意外性をつくことも出来る、散弾銃。



『……いってぇなぁ……おい。』


じゅんがぶち切れてるのが声でわかる。

ゆらりと立ち上がり、鉄パイプを引きずりながら 鉄格子の俺達の元へと近付いて来た。


『俺の力だとさぁ……。ただの鉄パイプでも、簡単にお前らの体貫通するよ?』


コンコン…と、俺たちの目の前にある鉄格子を叩きながら じゅんが、ニヤァッと笑顔を浮かべた。


そして、その鉄パイプを物凄い早さで突いてきた。


鉄格子があるにもかかわらず、鉄格子にかすりもしていない。

鉄格子と鉄格子の僅かな隙間を鉄パイプで突いてきた。


俺は鉄格子を握り締めて、スキあらば銃を撃とうと中の様子を見るためにへばりついていたので、この行為によって俺の頭に鉄パイプが突き刺さっていても、おかしくはない。



俺の横に、ノアがいなければな。



物凄い速さで俺の頭を狙って突き刺そうとした鉄パイプを俺の顔の直前で片手一本で掴んだノア。



『……ちっ。さすがの速さだな。ネオ様がこだわる訳だ。』

「それ、関係ないから。もし同じ状況だったとしても、私これがネオだったら今手なんか出さないから。」


ムスッとした顔をしているじゅんだが、ふと自分の体の異変に気が付いたようだ。


『体が……動か…ない!?』


ノアに掴まれている鉄パイプを握り締めたまま、じゅんはピクリとも動かない。


目を凝らしてよく見ると、じゅんの体には物凄く細い紐のような物が巻き付いている。

その紐を辿ると、5本の指をじゅんに向けて立っている凪ちゃんがいた。

この細い紐は、凪ちゃんが指で操ってるのか…?


凪ちゃんが中指を素早く下にスライドさせると、じゅんの腕に巻き付いている紐が一気にじゅんの腕を締めあげた。


『ぐっ……ぐああああ!!!』


うわぁ………人の腕……いや、アンドロイドの腕なんだけど…

まさにハムみたいだ。あれだよあれ、ボンレスハム。


凪ちゃんを見ると、必死に俺の顔を見て何かを訴えているのがわかる。

この間に逃げて!!って顔に書いてあるよ。


「ノア、その掴んでるあいつの鉄パイプ、俺に。」

「…え?でも……」

「片腕潰したのはでかいよ?でも、あーゆうやつは追い詰めると何するかわからない。これ以上、凪ちゃんを危険な目に合わせるわけにはいかないから。」


ノアは、掴んでいた鉄パイプを俺の手に握らせた。


「…使うの?」


不安そうに聞いてくるノアに、俺はできるだけ優しく笑った。


「凪ちゃん、少し離れてて?」


俺の言葉に、凪ちゃんは紐でじゅんを固定しつつも、少し後ろに下がった。


『…なんだよ?また銃でも撃つのか?んなチャチぃ銃なんか、散弾銃だってことさえわかってれば縛られてたってよけれるっつーの。体の硬さを変えれば弾く事だって出来んだよ。』


まだ余裕があるのか、笑いながら俺を見るじゅん。

体の硬さを変えるって……

ほんと化け物だなこいつらは。


「…俺、ひとまずあのナッツって女殴りたかったんだけどさ。あんたもあんま変わんないね。ナンバー ってさ……………」


鉄パイプを待つ手から、パリバリッという電気が流れながら鉄パイプの周りを踊る。


「……電……気!?」


一瞬にして、じゅんの顔色が真っ青に変わって行った。



「ほんと、クソだわ。」


俺の言葉とほぼ同時に、鉄パイプからかなりの高圧であろう電流が、鉄パイプを持つじゅんの体に流れ込んだ。


じゅんはそのまま、体から煙を吐きながら床に崩れ落ちた。


多分、まだ死んではいない。



「…凪ちゃん。じゅんを縛り付けてる紐って、凪ちゃんの手から離れても縛ったままにしておく事出来る?」


俺の言葉に、凪ちゃんは少し戸惑いながらも頷いた。


凪ちゃんも、直接俺が出すのを見たのは初めてかな。

豚の時は、誰も俺が電流出したなんて思わなかったもんなぁ。


「取り敢えず、じゅんはこのまま縛り上げて連れて行こう。どこまで報告して、どこまで報告してないのかも聞かなくちゃいけないしね。」


俺の声に、凪ちゃんは気が緩んだのかペタンと床に座り込んだ。

1人でナンバーの足止めをしようなんて、無茶するなぁ。


昔戦う事が嫌だって泣いてたって聞いたのに……。


「凪ちゃん、鍵を開けて?一緒に皆の所に行こう?

シュカさんや久遠の方はまだ終わってないからさ。早く行ってあげなくちゃ。」


凪ちゃんは静かに頷いて立ち上がり、建物の入口にある鍵の暗証番号を押した。


パシュッッ


という音が扉から聞こえる。


俺達は鍵が開いたその入口から、中に入ってじゅんを背負い、武器庫を出て正門前へと足を進めた。

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