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9話.脱走(1)


「何だよ?脱走したんだから、このくらいは覚悟してたんじゃねーの?」


むしろ、俺にとっては脱走ってこんな感じになると予想してたから

今更なんでそんなに焦ってんだ?って話なんですけど。


頭の上に「?」がいっぱい出ている俺をやっぱりスルーし、ギンが足元にあるガラクタの山の様な物をいくつか蹴ってへこみを作り、中に入る様に指示してきた。


このガラクタの中に身を隠せってことか。


他の3人も、同じようにガラクタをどかして身体を中に入れ込み、また上からガラクタを乗せて身を隠す。


ギンは、ガラクタを森の方向にガシガシと派手に蹴りながら進んでいたが

ある程度まで進むと引き返し、今度は反対の街側へとガラクタをまた派手に蹴りながら歩いて行く。


この緊急時に、一体何をしているのか。


「なぁ、ギン。隠れるより、さっさとこのガラクタの山を降りて目の前の森の中に逃げた方が良くないか?」


俺達の元へと戻って来たギンに小声で言うと、ギンも小声で答えてくれた。


「もう遅いです。」


えっ。

あ、びっくりした。スルーされなかった。


………いやいやいや、そこじゃない!!


「どういう事?え、脱走は失敗って事!?」

「まぁ、もうそこまで追手は来てるでしょう………僕らが排気口にいる時から、外にも警報が出てたみたいですから……」

「し、し、し、失敗って事!?」

「シッ」


………怒られた。


「おかしいんですよ。僕ら、もう役に立たないからって捨てられるゴミですよ?そりゃ、回収出来る部品があるんだから簡単には逃がしたくないとは思いますけど……。街中に警報を出してまで僕達を捕まえようとしてる。僕に関しては、まだバレてない筈なので、捕まえようとしてるのは多分僕じゃないはず……」


バレ………何だって?

なんかギン君、物凄いこと口走った気がするんだけど。


すると、考え込んでいたリーヴが口を開く。


「俺はただの下っ端兵士だからな。どうしても回収したい部品なんてのは、ねーはずだぞ?」

「それなんですよ。僕らごときに、わざわざ街中の兵士まで使って回収なんてしないと思ってたので……。街中にまで警報が出てるのが妙に引っ掛かります。追って来ても、たかだか数人の兵士だと思ってたので……」

「何人使ってでも、追いかけて回収したい奴がこの中にいるとすると……」


リーヴとギンは、ちらりとノアを見た。


「確かに私に追手が付く可能性はあると思う。……踊り子は、12体しか作れない様になってるし、私をスクラップして新しく作る踊り子に私が使ってた特殊パーツを組み込まないと……この先、新しい踊り子は産まれないもの……。」


ねぇ、俺全く話に入れない。

パーツとかスクラップとか、回収してリサイクルするってのはさっき少し聞いたけど………


ちょっと待って、今ノア踊り子とか言わなかった?

踊るのコイツ?

戦う人かと思ってたよ………あんな馬鹿力持ってるし。


つか、黙れとか言っといてお前は喋りまくってんじゃねーかクソガキ。

理不尽極まりないな。


「では、あなたには執拗な追手がつく可能性がある……という事ですね?」


ギンの言葉に、ノアは言葉を詰まらせる。


………ちょっと待てよ?

つまりギンは、執拗な追手がつく可能性のあるノアと共に行動すると、自分達にも火の粉が飛んで来るとか考えてんの?


「えー……。ちょっとちょっと、ギン。」

「はい?」


口を挟んだら怒られると思ったけど……。さすがに今、自分が喋りまくってるのは自覚しているのか。

いや、それどころじゃないのかな?


「子どもからしたら、大人に追われるってすげぇ怖い事だって思うけどさ。お前は両腕がないし、リーヴも片腕がない。凪ちゃんだって、どっか故障してんだろ?あそこに入れられてたんだから。

どう考えても、このメンバーで1番戦力になるノアを見捨てるのは得策ではないぞ?」


俺の反論に、ギンは目を丸くしてキョトンとした。


「見捨てないですよ?ぶっちゃけ、執拗な追手がつく可能性は僕にもありますから。」


ギンがそう言った瞬間、俺達が出てきた排気口の出口から何人かの警備員らしき奴らが出て来た。


え!?皆、あそこ通って来たの!?

ほふく前進して来たの!?


どいつもこいつも、化け物だらけかよ……。


今見つかったら、確実にここで終わりだ。


俺達はガラクタの中で、とにかく必死に息を潜めた。

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