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祭りの記憶  作者: なんとかさん
8/13

漠然としていたこれからの予定が決まると俄然その間に祭りを満喫してみたいと思った。今日は連れもできた事だし、一人では気付かない事も分ってくるかも知れない。ぼちぼち渡邊と椅子を立ちあがって移動を始める。



「こっち行くの?」



彼は道の先の方を指さしている。この地点から出店のある端の方まではそこそこ距離がある。前方は相変わらず人の密度が凄いが、子供が多いからか先の方まで見通せる。頷いてゆっくり歩き出す。



「今日はもう何か食べたの?」



僕はもう食べてしまっているけれど渡邊はどうなのだろう。




「いや、まだ食べてないよ。今来たばっかりだから」



「食べたいもんはあるの?」



「肉系がいいな。唐揚げとか食べたいな」



何処かしら居酒屋を思わせるような会話になってしまっているが、先ほど酒を飲んだからか自分もまた何か食べたくなってくる。少し歩いているととある店におあつらえ向きに紙コップにフライドポテトや唐揚げが詰まっているものがあった。



「これいいんじゃね?」



「ああ、そうだな。じゃあ一個下さい」



と言って渡邊は早速唐揚げの入った紙コップを受け取った。爪楊枝を刺して一個取り出すとそのまま口に放り込んだ。



「うん、うまい。やっぱりこういう時に食べるのは最高だな!」



「そうだな。子供の頃は食べものというよりは、おもちゃとかに目を奪われてた気がするけど」



思った事を口にすると彼がややオーバーに頷いて、



「そうそう!小遣いからするとこういう食べものってちょっと勿体ないような気がしちゃうんだよな!」



と同意してくれる。こうやって思い出を共有できると何か嬉しくなる。



「ほら、ああいうのだよ」



と言って僕はモニターに表示されたスロットが揃うと景品がもらえる「くじ」の店を指さす。



「ああ、俺もあれやったわ…頑張って3等まで当てたな」



「おお、凄いな。俺は外ればっかりだった…」



店にはかなり立派なモデルガンやぬいぐるみ、ちょっとしたゲームらしきものが置いてあるのが分る。子供の頃はああいうものが欲しくてしょうがなかったのだが、流石に今はあまりときめかない。確率の事を考えると絶対普通に買った方が良いよなと思ってしまうのだが、当時は少ない小遣いで最大のコストパフォーマンスを無意識に狙っていたのだろう。それに何かゲットして持ち帰りたい気持ちが強かった。



「やってみようか?」



渡邊がニヤニヤしながら言った。300円で一回なのだが、欲しいものも無いのにやる必要はないと思うのだが当時とは金銭感覚も違うのでやっても構わないと思うのだが、



「変なの当たったら困るだろ」



と冷静な意見を言うと、



「それもそうだな」



とあっさり取り下げた。そういえば渡邊は確かにこういうお茶目な一面を持っていたような気もする。基本的にはクラスのムードメーカー的な存在で、体育の時間ではかなりふざけていたのが印象的だった。



「和喜も変わんないね」



何となく言うと、



「そうか?」



と否定も肯定もしない感じでちょっと笑ったような気もする。すると今度は彼の方が何か面白い物を見つけたのか3つ目の唐揚げを食べながらそちらの方に小走りで向かっていた。



「なんかあった?」



「飴細工だってよ」



「お…初めてみるかも…」



それは精巧な飴細工の出店だった。昔はあまり注目していなかったのかも知れないが見た事がないような気がした。飴とは思えないような材質で、鳥などの動物の形に成型された飴が沢山並んでいる。



「こういうのプレゼントとして喜ばれるよな。食べるのが勿体ない」



それが僕の感想だったのだが、実際渡邊はプレゼントを見定めるような視線を飴細工に送っていた。



「プレゼントだったら、やっぱりこの鳥かな…」



「あげたい人とか居るの?」



プライベートな事かも知れないが気になったのでそれとなく訊いてみる。



「優介は今付き合ってる娘とか居るの?」



不意に自分の事について訊ねられてたので若干焦ってしまった。何を隠そう僕は年齢=彼女いない歴の人である。



「いや、そういうのはまだ…」



「そうか。優介も変わんねぇな」



渡邊にそう指摘され、そういえば中学時代も恋愛については苦手としていた事を思い出した。当時は自意識の塊で、異性を意識し過ぎて空回りする事が多かった。対して渡邊には小学校の時から仲良くしていた女の子、確か「佐藤さん」と付き合っているという噂が流れていたのを知っていた。真偽は定かではないが、恐らく本当だろうと僕は思っている。



「そっちはどうなの?」



こちらは答えたのだから訊いてもいいなと思った。すると大分シリアスな表情で、



「今は遠距離だ」



と言った。その一言で大体想像出来てしまった。



「じゃあ、それをプレゼントにするのはきついか?」



「そうだな。なんか別なの探す」



当たり前なのだが渡邊には渡邊の人生があって、今日は本当に偶然ここで会っただけなんだなと思われてきた。そう考えるとこの祭りというものが、何かしら『集う場所』として機能しているような気もしてくる。そんな事を思いながら歩いていると、



「お前も彼女つくった方が良いぞ。色々経験できるから」



とボソッと言われた。重々承知しているけれど、苦笑いするしかないのであった。

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