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祭りの記憶  作者: なんとかさん
5/13

N市には傾斜のある坂が多い。多分全体が小高い山のようなものなのだろう。いつか登っていた事があるような足にくる坂を着実に上がってゆくと頂上が見えてくる。


<ここ道路も狭いし四駆じゃない車で登ったらきついだろうな…>


数年前の夏に自動車学校で教わった事が未だ活かされていない学生身分の僕でも車が通るたびにヒヤヒヤする。悪く言っているわけではないのだが、道は広げられないし仕方ないのだなと諦める。自分以外にも一人坂の途中で休んでいた人を見掛ける。



「はぁ…はぁ…」



既に息を切らしている。頂上から下ってゆくとそこそこ大きな建物が見える。主に中高生が利用するという施設で、僕も何となくお世話になったような気がする。その正面の小学校の横を歩いてゆく。この辺りまで来ると案外土地勘がなく、



<こちらの方ではあんまり祭り関係ないのかな…>



などと思いながら彷徨っていると、白っぽい建物の少し広めの駐車場に見事な『太鼓台』が居座っていて、その周囲を袴姿の数人の少年が囲んでいるのを見つけた。思わずそこで写真を撮った。祭りが始まってしまうと日が暮れているし、しっかりと太鼓台の写真を撮れるのはこの時くらいしかないのかも知れない。楽しそうな様子の少年たちの凛々しい表情を見ていると、「この町の将来も安泰だな」と年より臭い事を思いそうになった。



ところで『太鼓台』は思ったより小さく感じた。子供の頃に見た記憶からすると自分も大きくなっているからだけど、それだけが理由ではないような気もする。多分、この上に人が乗って立ちあがっているのを見るととても巨大に感じるのだ。




その辺りを歩いているとやはり同じような袴姿の少年を良く見かける。この袴は立派だなと思うのだが、ネットで調べた時子供が袴で大人が浴衣という事を知って記憶と若干違うように感じたりしたのだが、確かにこの姿である。後ろ姿が特徴的だなと思う。





そういうものを見ているうちに何となく祭りの光景が蘇ってきた。あのきつい坂を登ってきた甲斐があるというものである。けれどここで時間まで待っているのも暇だろうし、引き返す事にする。元来た坂を反対側から登っていると、ここを境に市内が分断されているようにも感じた。だが考えてみるとあの太鼓台は違う坂ではあるもののこれくらいの傾斜の坂を登ってゆくのだ。



「自転車を押してくだけでもきつい坂なのに…」

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