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祭りの記憶  作者: なんとかさん
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あの赤く燃える煌々とした幾つもの提灯の灯りと山車の上で身を乗り出して踊るように叫んでいる人の表情を見る度、僕は不思議な気持ちになる。





「何、お祭り行くの?だって一週間前そっちに行ったばかりじゃない?また帰ってくるって?」



母に電話して帰省する旨を伝えると呆れているような返事があった。それもそのはず、僕はついこの間大学の後期が始まるからとこちらのアパートに戻ってきたばかりだったのだ。



「お祭りなんて毎年同じだし、それよりあんた学校は大丈夫なの?」



「うん、実際はまだ始まってないしね」



「それならもう一週間こっちに居た方が良かったじゃん!」



非難がましい口調で言われるとそれもそうだなと思ったのだが、ふいにお祭りの事が気になりだしたのが昨日の夕方だし、正直自分でもこんなに気分が乗るものとは思っていなかったのだ。



「まあ、いいわ。明日帰ってくるのね」



「そう。確か明日の夕方からでしょ?」



「お祭り3日間あるけど見るの初日だけでしょ?」



「いや、気分による…」



「気分って…まあ、どうせ一日行って満足するわよ」




その電話が終わると<じゃあ、準備しなきゃな>と思って立ちあがった。といっても今回は持ってゆくものが着替えくらいで良いという事に気付いてまた椅子に座った。そのままPCでネットの巡回が始まる。でもどうせならと思い、



『提灯祭り』



という検索ワードを入れてググってみた。ウィキペディアや個人の解説などを読んでいるうちに、地元の事なのに知らない情報が多いなと思った。というか、全国的にも有名だとは知っていたけれどこれほど検索結果がヒットするとは思ってなかった。



「へぇ~」



独りの部屋で感心の溜息が漏れる。『囃子』という言葉は知っていたけれど、『山車』だと認識していたあれはそういえば『太鼓台』と呼ぶんだななどと確認をしているうちに、段々と祭りのイメージが湧き起ってくる。ネットでは簡潔に語られているけれど、本物の祭りを言葉にしようとすると上手く言葉にできないという事にふと気付く。少し難しい書物を読んだりして祭りというのは「生と死」があるとか分るようで分らない事を知ったつもりになっているのだが、いざ自分の体験した祭りの事を思い出すと最早それは独特の『雰囲気』としか言いようのないものだった事に気付く。




最初に祭りに行った時の事は多分もう覚えていない。物心つく前から両親に連れられて見に行っていたのではないだろうか。小学校の頃、太鼓台の中で『囃子』をするのが同年代の子だと知って少しばかり憧れたりもしたのだが、どうも市内の外れの小学校には関係がないらしく祭りはどこか『外から眺めるもの』という感覚だったような気がする。それでも祭りにはつきものの出店、屋台が道路にずっと続いていて歩行者で溢れている光景を見て、友人と小遣いを貰って散財した記憶などはいかにも「祭りらしいな」と思ったりする。



<あの当時の友人は今どうしているのかな>



などと考えつつ、今回行く事に決めた祭りは今の自分にはどう映るのか楽しみになってきた。祭りに行くのはいつ以来だろう。大学時代には行っていないし、高校時代も電車で市外の高校に通っていたのもあって市内の方もあまり見ていないように思う。地元の小・中学生は祭りの間は特別に休みなのである。それは『太鼓台』でその年代の子供が狩り出されるという理由もあるけれど、今思うと子供に目一杯祭りを楽しんでもらいたいという大人たちの気持ちがあったのかも知れない。そんな期待を少し裏切るかのように、中学生の中には関係ない場所に遊びに行ったりする者が居たりした。




ただ出店はあくまで祭りの一部でしかない。メインはあの提灯がこれでもかというほどついた『太鼓台』なのである。

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