07 死神の裁き
正面から敵地に乗りこんだ恭介。まずは香那が何処にいるかを探す。香那と恭介は魔力で霊的パスをつなぐことでお互いがどこにいるのか、少し自分の内側に意識を向ければわかるようになっている。
「一番上の階か…」
香那の居場所を突き止め、真っ直ぐそこへ向かう。だが、当然待ち伏せしている敵と遭遇するのは避けられない。恭介が曲がり角を曲がると敵が五人。全員魔法士だ。その五人から恭介に向け魔法が放たれる。どの魔法も当たれば致命傷だ。五人が仕留めた!そう思った次の瞬間、地獄の業火が吹き荒れた。恭介の体から出た黒い焔が敵の魔法を全て焼き尽くしたのだ。五人が唖然として動きが止まる。その間に黒い焔は敵の五人の魔法士を飲み込んだ。そして黒い焔が恭介の体に戻って行く。敵の魔法士の姿は、五人まとめて跡形もなく消えていた。
その後も何人もの敵が恭介を殺そうと魔法で攻撃するが、傷一つつけられない。そして例外なく跡形もなく燃やし尽くされていく。
「ここだな…」
そう言い扉を開けると香那が囚われていた。どうやら気絶させられているらしい。そして、その前に敵がサブマシンガンを構えて立っていた。先頭に立つ女には見覚えがある
「この前の擬似瞬間移動のやつか。」
「ホントにおだろいた。まさかこんなとこで死神に会うとは。」
「…」
「あの[終末の黄昏]を引き起こした黒き焔。お前がその術者だったとわな。」
「それが分かったところで意味はない。俺は香那に手を出した奴をゆるすきはない。全員まとめて消し炭すら残さずこの世界から消してやるよ。」
「それは御免だ。撃て!」
女がそう言うと一斉にサブマシンガン発砲した―いや、しようとした。
「無駄だ。」
その言葉と同時にサブマシンガンを焔が覆うと消えていった。
「一応勧告しておこう。大人しく投降しろ。」
「そう簡単にやられないよ。」
女がそう言った時には、恭介は敵に囲まれノイズ波に包まれていた。このノイズ波は魔法を阻害する特殊な鉱物によるものだ。
「これでお前は魔法は使えない。」
「と思ったか?」
「なに!?」
ノイズ波を発生させていた敵が消え去った。
「な、なぜ魔法が使える!?その魔法は一体何なんだ!」
「万物を焼く黒き焔。その焔に焼かれたものは、消し炭すら残さずこの世から消える。この世に存在している限り、それが何であろうと俺の焔は焼き尽くす。」
「く、化け物め!」
そんなことを言っている間に女以外の敵は消えていた。
「さあ、もう終わりだ。今度は逃さない。」
「く、捕まるわけにはいかない…あのお方にこの事をお伝えしなければ―」
「あのお方?」
「紅の龍の総帥だよ。」
「なに?ここが紅の龍の本拠地じゃないのか?」
「ここは紅の龍の下部組織。ヘルウィンドの本拠地だ。紅の龍はお前達が思っているよりももっと大規模な組織なんだよ。」
「なんだと!?」
その話しに一瞬気を取られた隙に女は擬似瞬間移動で窓から建物の外に逃げ出した。
「しまった!」
と思った時には女の姿も気配も消えていた。
「はー、ミスったな。でも充分有益な情報も得られたし、香那も無事に救出出来たから良しとするか。まずは賢生さんに連絡だな。」
そう言い無線機を取り出す。
『こちら板垣。状況は?』
「こちら伏見。一人逃げられましたが他の敵は殲滅完了です。目標も達成。紅の龍についての新しい情報も得ました。」
『了解。話しは帰ってからだ。警察が来る前に離脱するぞ。』
「了解。」
無線を切って香那を背負う。
「俺のせいでゴメンな。でも、お前は俺が守るから。必ず。」
そう言うと恭介は出口に向かい歩きだした。