06 怒り
「ほのかか、どうした?」
『恭介さん!香那が!』
「香那がどうした!」
俺の言葉を聞いてその場の全員に緊張がはしる。
『皆で駅に向かってたら、いきなり囲まれて…香那が―連れ去られました。』
「な!」
『ごめんなさい、恭介さん…』
ほのかが泣きたいのを必死に耐え、起こったことを正確に伝えようと頑張っているのが電話越しでも分かった。
『私達も魔法で応戦したんですけど、全然敵わなくて…ホントにごめんなさい…』
「大丈夫だ。香那のことは俺がなんとかする。ほのか達はケガしてないか?」
「はい、でもあかりが少し…でもそんなに大したケガじゃないです。」
「なら良かった。今日は真っ直ぐ家に帰るんだ。いいな。」
「はい、分かりました。あの…恭介さん!」
「どうした?」
「香那を助けてください。なんでかわからないですけど、恭介さんなら助けられると思うんです…だから…」
ほのかはそこで限界に達し、泣くのを我慢するので精一杯になった。
「心配ないよ、ほのか。必ず助けるから。」
ほのかを安心させるようにそう言うと、泣きながら「お願いします…」と言った。その後、電話を大和に変わってもらう。
「大和か?」
「おう。悪いな、恭介。やられちまった…。力不足の自分が情けないぜ。ダチ一人助けられね~なんてよ…」
「もう気にするな。ほのかとあかりのことはお願いしていいか?」
「ああ、こっちは任せてくれ。ちゃんと家まで送るぜ。」
「ああ、頼む。」
そう言うと電話を切る。そして―
「なんとなく分かってると思いますが、香那がさらわれました。これは判断を誤った自分の責任です。賢生さん、真由美さん、すみません。」
「謝るな、恭介。俺でも同じ判断をした。」
「そうよ、恭介君。香那ちゃんを助ける方法を考えましょう。」
「はい。紫苑さん、上層部はなんて?」
上層部に連絡して指示をあおいでいた紫苑にそう聞くと、
「上層部は、充分な準備を整えるまで待機しろと言ってきたわ。」
「なら鮫島少将に連絡して、賢生さんの部隊と俺だけでいいから、先に出撃できるように掛け合って下さい。俺達は特殊部隊で鮫島少将の管轄だから鮫島少将の許可さえ貰えれば出撃出来る。後、あの魔法の使用許可もお願いして下さい。」
紫苑さんは少しためらっている様子だったが、数秒考えてこう言った。
「分かったわ。この際仕方ないわね。」
そう言うと紫苑さんはまた電話をし始めた。そして数分話したあと電話を切り、
「許可が出たわ。」
「賢生さん!」
「準備は終わってる。すぐ出るぞ。」
「はい!」
軍用車に乗り込み紅の龍の本拠地ヘ向かう。
「恭介、指揮はお前に任せる。指示をだせ。」
「分かりました。賢生さんの部隊は紅の龍の本拠地を包囲。逃走しようとした者を捉えて下さい。中は俺一人で殲滅します。」
「了解!」
と、無線で話しを聞いていた他の軍用車に乗り込んでいる隊員からの返事も確認し、集中力を高めていく。
「目的地に到着!包囲完了しました。」
「じゃあ、賢生さん。あとお願いします。」
「大丈夫だとは思うが、気をつけろ。それと、香那のこと頼んだ。」
「もちろんです。必ず無事に救出します。香那に手を出した奴らを許すつもりもありません。」
そう言うって恭介は一人、紅の龍の本拠地に乗りこんだ。