05 襲撃
キーンコーンカーンコーン。今日最後の授業終了のチャイムがなった。
「う~ん、終わった~。疲れたー。」
「あかりほとんど寝てたじゃない。」
「そう言うほのかは真面目すぎ。」
「あたり前のことしてるだけだよ。それより恭介さん、今日は皆でお買い物に行くことにしたんです。それでもいいですか?」
「ああ、大丈夫。さっき香那からメール来て、正門で待ってるってさ。」
「じゃあ行こう~。あ、そうだ。ほのか、私大和呼んで来るから恭介君と先に正門行ってて。」
「うん。分かった。恭介さん行きましょう。」
そうしてほのかと一緒に正門に向かい香那と合流し、五分程待つとあかりが一人の男子生徒を連れてやって来た。
「お待たせ~。遅くなってごめん。」
「あかり、そっちの人は誰?」
「うん。香那と恭介君に紹介するね。こいつも私の幼なじみで名前は火剣 大和だよ。」
「大和でいいぜ。二人ともよろしくな。」
「よろしく。俺のことも恭介でいい。」
「オーケー恭介。それにしても驚いた。ほのかとあかりが天才と言われてる板垣さんと友達になってたとは。」
「よろしくね、火剣君。」
「さ~、紹介も終わったし出発しよ~。」
あかりの一声でショッピングモールに向かい歩き出す。女子三人は何を買うか相談し、その後ろで恭介と大和が魔法談義に花を咲かせているとあっという間にショッピングモールに到着した。その時、ふと恭介は自分達のことを敵意を持って見ている視線に気がついた。
「どうした恭介?」
「いや、何でもない。少し見たいものがあるから後で合流しよう。」
そいうとその視線の持ち主が逃げたのが分かった。急いで飛行魔法を使い先回りして相手の前に着地する。
「さて、何で俺達のことを見てたのか教えてもらおうか。」
「…何のことか分からない。」
そいつはマントをはおりマフラーで顔も隠していて人相は分からないが声からしておそらく女だろうことがわかる。
「とぼけるのか?随分と殺気だった目で見てたじゃないか。それで目的は何だ。」
「知らないと言っている。」
「言う気はないと?」
「そこまで言うなら教えてやる。私達が求めるのは光の女神だけだ。光の女神を手に入れることが目的だ。」
「魔導学院の生徒にちょっかいをかけてるのもお前達か?」
「それは光の女神を手に入れるためのカモフラージュみたいなものだ。」
「そうか、お前達は光の女神だけが狙いなんだな?」
「そうだ。だからお前に用はない。今すぐ消えろ、さもないと殺すぞ。」
そう言った瞬間その女の殺気が数倍に跳ね上がった。普段なら逃げるとこだが俺にも引けない理由がある。
「お前達が光の女神を狙うと言うなら引けないな。お前を捉えて尋問させてもらおう。」
「そうか、ならここで死ね。」
次の瞬間、目の前にいたはず敵の気配を真後ろに感じ、とっさに前に転がり振り向くとついさっきまで自分の首のあった位置をコンバットナイフが通り過ぎていた。
「擬似瞬間移動とは、また珍しい魔法を使うな。」
擬似瞬間移動は自分のいる座標と移動したい地点の座標を点として認識し、その点の位置を反転させることで一瞬で移動することが出来る魔法だ。だがその魔法を性質上非常に高い空間把握能力を必要とするため、使える魔法士は珍しい。
「あなたも予想以上の反応。あなたのデータを見たけど今のを避けられるような相手じゃなかった。」
「まあ、俺にも少し事情があってね。」
「お前は面倒な存在だ。いずれ消す。」
「あ、おい待て!」
そう叫んだ時には敵の気配は何処か遠くに消えていた。仕方なく追跡を諦め、皆のところに戻る。
「悪い遅くなった。」
「おう、恭介。どこいってたんだよ。」
「ちょっとな。香那達は買い物終わったのか?」
「うん。終わった~。」
「恭介さんは何を見に行ってたんですか?」
「まあ、ちょっとな。それと少し用事が出来たから俺は先に帰る。」
「分かった。また明日ね恭介君。」
「ああ、皆また明日。」
そう言って皆とわかれた後、軍の本部に向かい走りながら紫苑さんに電話をかける。
「もしもし、紫苑さん?」
『どうしたの恭介。』
「急用だ。後五分程度で本部につくから会議室おさえて。後賢生さんに真由美さんも呼んでおいて。」
『分かったわ。』
「お願いします。」
そう言って電話を切り飛行魔法を使い最速のスピードで飛んだ。
会議室に入るとすでに皆揃っていた。
「お待たせしました。早速本題に入ります。」
「ええ、お願い。」
三人を代表して紫苑さんがそう言った。
「光の女神、つまり香那を狙う奴ら現れました。監視していた敵と交戦しましたが擬似瞬間移動の使い手で取り逃しました。こちらの動きを警戒してすぐには手を出してこないとはもいますが、対策を考えておきましょう。」
「そうね。」
「軍で何か情報は掴んでないんですか?」
「ケンちゃんの部隊が情報を掴んだわ。[紅の龍]が絡んでるみたい。」
「紅の龍!?ホントにあったんですか?」
「まだ完全に分かったわけじゃない。ほぼ間違いないだろう。今まで謎に包まれ都市伝説とまで言われた犯罪組織だが最近動きが派手になったことで情報網にかかったんだ。」
「そうでしたか。でも完全に分かったわけじゃないってことは紅の龍の構成員や本拠地は分かってないんですか?」
「構成員は不明だが本拠地は判明している。」
「なら、こちらから乗り込むんですか?」
「ああ、明日殲滅部隊を編成し、掃討作戦を決行することになっている。」
その時恭介の携帯がなった。その電話は、事態の急展開を知らせるものだった。