01 国立魔導学院
国立魔導学院。日本で唯一の魔法士育成機関だ。魔法を使える者は皆この学院で学んだ後、魔導犯罪対策科や軍の魔法士部隊に入ったり、魔法研究者になる者が九割をしめる。残りの一割は魔法とは無縁の普通の生活に戻っていく。
今日は、その国立魔導学院の入学式のある日だ。その正門から続く桜並木の道を歩く男子生徒がいた。その生徒に一人の女子生徒が走り寄る。
「ね〜、待ってよ恭介!」
彼女は板垣 香那。俺こと伏見 恭介の幼なじみだ。
「もう高校生だぞ。わざわざ俺と一緒に登校することないだろ。」
「そうだけど!私はお母さんに恭介がへまして正体がバレないように気をつけてねって言われてるの!」
「そんなヘマしねーよ。」
「どうだかな〜。恭介ってさ、意外とおっちょこちょいなところがあるじゃない?」
「ねーよ!」
と言いつつも、いくつか心あたりがあるから悔しい。
「ほんとなら魔導学院になんて通う必要ないんだけどな、俺は。」
「も~。そんなこと言わない。紫苑さんに怒られるよ。」
「分かってるって。何で紫苑さんがちゃんと魔導学院くらいは卒業しとけって言ってるのかくらい。上が俺の経歴に文句つけてきたんだろ。そのくせ力は見せるな正体をばらすなとか好き放題に条件つけやがって。きにくわねーなー。」
「そんなこと気にしなきゃいいの。私は恭介と一緒に魔導学院に通うことになって嬉しかったよ?」
「まあ、たまには普通に学生するのもいいかもだけどよ。」
「そうそう。あ!もう結構時間やばいかも。入学式始まっちゃう!恭介急ごう!」
「まだ大丈夫だって。」
「うるさい。走るのが面倒なだけでしょ。いいからほら、早く走る!」
こうして麗らかな春の日、俺と香那の魔導学院での波乱の高校生活が幕を開けた。