8-5. 議会
もし野球をしていなければ、
私は刑務所か墓場にいたことだろう。
プロ野球選手 ベーブ・ルース
一方、巨星が一つ欠けたノトリアス刑務所だが、その灯は明るいままだ。今後の運営のあり方を議題に、改めて共和国議会が開かれていた。
「えー、まず、僕たちが勝手にそろえていた物品だけれども、これはきれいさっぱり売却することにします」
マシューが切り出した。
「それで、売却した分の金と、また僕たちが不当に蓄えた金とを合わせて、皆に分配しなおそうと思う」
当然のケジメだ。新しく選びなおされた議会の面々も、一様に頷いている。
そんな中、そろそろと片手を上げたのは、ジミーだった。
「一つ、提案なのですが」
「うん、何でも言ってくれ」
「ありがとうございます。その分配する金というのがいくらなのかは存じませんが、私たち千五百人で分け合えばそれぞれ大した金額にはなりません。それでしたら、もっと有意義な使い道、全員で共有するような財産を購入するのはいかがでしょう」
ジミーは一人一人の目を見て話した。睨んだり、逸らしたりする者がいないことが、彼の胸を打った。
「そう、例えば、農具などを買って所内に畑を作り、財政の足しにするというのは」
「なるほど、そりゃあいい」
膝を叩いたのはリトル・ジョンだ。
「おいどんは地元でイモ作りしてたから、その辺は任せてくれ」
「小麦なら俺もやってたぞ」
千五百人もいれば、意外と何でもできるのだ。そう、ただ人数がいるだけではない。初めにケイシーが仕切った議会では、こんな意見は出てこなかった。全員が主体的に参加してこその共同体だ。
「そう、それでさ、もう一つ提案なんだけど」
また誰かが声を上げた。
「読み書き講座、皆でやろうぜ。俺も教わりてえ」
「いいな、それ。外出たら役に立つよな」
「それならいっそ本も買って、図書室みたいなの作ろう」
「じゃあ、その管理はもちろん、この男に任せよう」
そんな話に、ジミーは微笑みながら涙をこぼしそうになった。




