7-10. 円陣
闇が闇を払うことはできない。
光だけがそれを成せる。
公民権活動家 キング牧師
マシューは何も手を打たなかった。暦が五月に入り、所にとって初めてのリーグ戦が終盤戦に突入しながらも、噂は流れ続けていた。時が経つにつれ、ますます具体的な言葉で語られるようになっていったのである。
「噂はどんどん広まってる。この調子なら行けるぞ」
いつもの教室で、ケイシーと仲間たちは集まっていた。
「八百長が行われているのは事実ですからね。信憑性もあります」
「リーグ戦の方も快調だ。このままいけば優勝できる!」
そう言いながらジョーが見つめていたのは、新聞に載っている順位表だ。
「優勝決定戦は、早くていつになる?」
「えー、ゲーム差が一、二……、残り試合が……。うん、ちょうど一週間後、五月七日のゴッサムズ戦になるな」
「そうか、じゃあ皆、やるべきことは分かるな。まずは、八百長が仕組まれてメトロポリタンズの優勝は決まっている、と噂を流すこと」
「ああ、分かってる」
「そして、その優勝決定戦、俺たちが本当に勝つこと、だ」
そうすれば、実際その試合には仕組まれていないのに、八百長の存在を観客たちの目の前で証明することになる。
「八百長の親玉と言われたくないマシューは、何とかしてそれを防ぎにくる」
クーニーが頷いた。それを受けて、フリンも同調する。
「つまり、俺たちを負かしにくるわけだ。そんなマシューの鼻っ柱を叩いてやるんだな」
「そうだ。だが、八百長を防ぐうんぬんは、奴が腰を上げやすくするための口実だ。それ以上に、観客たちが『ケイシーとマシュー、因縁の対決』ってな空気を勝手に作ってくれる。そうなったら、負けず嫌いのあいつは出てこざるを得ない」
「ほー、なるほどなー」
分かったんだか分からないんだか、ジョーが相槌を打った。
「何にせよ、俺たちは本気で戦っていいんだよな」
「ああ、もちろんだ。今度の試合は、ただの遊びで野球をやるんじゃない。囚人共和国や俺たちの未来に向けた、大事な一勝を掴まなきゃいけねえんだ。それも、俺たち自身の力で」
ケイシーの決意は並々ならぬものがあった。だからこそ、皆を動かす力があるのだ。
「よし、五月七日、絶対勝つぞ!」
その日までの一週間は、ほんの一瞬に感じられるくらい、早く過ぎた。




