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フェンス・オーバー ―刑務所からの場外ホームラン―  作者: kunikida-evans
第4章 罪と罰、そして自由

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4-1. 革新の時代 the Progressive Era

この世界で最も素晴らしいことは、

自立の方法を知ることである。

哲学者 ミシェル・ド・モンテーニュ

 ケイシーは、本当の意味で組織の一員として生きるようになった。人を殺すことに躊躇いは無くなり、狙って心臓に弾を撃ち込んだ。


 だが、光が輝きを増せば闇が深くなるのと同様に、闇が深くなれば光の輝きも増そうとするのだった。


 時代が二十世紀に入ろうかという頃、この社会から闇を一掃しようという一大旋風が、アメリカ中で巻き起こった。革新主義時代の訪れである。十九世紀が終わりに近づき、明らかな社会の歪みへの不満は高まり続け、それが政治の潮流として現れたのだ。


 一八九〇年、アメリカからフロンティアが消滅したのと同じ年、シャーマン法が成立し、企業トラストが禁止された。その象徴だった石油王ロックフェラーのスタンダード・オイル社が解体され、ジョン・モルガンの財閥が砕けた。この頃、あの鉄鋼王カーネギーは、自分のビジネスをほとんどモルガン財閥に売却し、慈善や社会奉仕活動に余生を捧げていた。時代の変化を象徴する人物かもしれない。そして、企業の不正にはメディアの暴露の手が伸び、労働組合は激しい闘争の末自らの立ち位置を向上させた。


 一九一三年には累進性の所得税が導入され、第一次世界大戦でアメリカが戦勝国になった直後の一九二〇年には、貧困や犯罪の原因と見做された酒を禁ずる禁酒法が始まり、同じ年に女性が参政権を獲得した。


 ケイシーが幼少期を過ごしたテネメント街にも改革の手が伸び、科学的な都市計画と救貧によって、多少の改善が見られた。


 なぜこのような、ある意味で安定していた社会秩序を根底から覆すような改革が進んだのか、その理由は定かではない。ただ明らかに、それまでのアメリカが迎えようとしていた限界に、上も下も向き合わなくてはならなくなったのである。頂点を極めたカーネギーにしてみれば、富に対する飽き、金をかき集めることへの空虚さが、それを人のために手放すという方向へ舵を切らせた。


 しかし、その頃のケイシーはもはや、改革の恩恵を受けられる立場にはなかった。むしろ、排斥されるべき害毒の側にいたのである。


 政治、行政、特に警察と犯罪組織との癒着が暴かれると、組織の存立は危うくなった。ケイシーたちが手を染めていたあらゆる犯罪は全て明るみに出て、トラストや政治マシーンと同じように、組織の崩壊が進んだ。


 一九〇五年のこと、ほとんどの構成員が逮捕され、多くが死刑を宣告された。


 重い罪を数々重ねた、三十五歳のケイシーも、そのうちの一人だった。

第4章に突入です!

まだまだ続きますので今後ともよろしくお願いいたします!

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