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彼を幸せにする十の方法  作者: 玉響なつめ


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青年の主張 1

 キリアン・ウィッドウックはごくごく普通の一般家庭に、三番目の息子として生まれた。

 彼の父親は騎士であり、一般に言われる〝兵士〟よりも位が高く、その技量を買われて〝騎士爵〟と言われる地位にあった。


 騎士爵は正確には貴族ではないものの、その功績をもって国を支える者として認められた証拠だ。ただの騎士ではなく、昇級試験を受けなければなれない。

 準男爵と同じく準貴族として扱われるため、貴族の集まりのような場所にも招かれることがある。

 僅かながらではあるが、国から俸禄だって出るのだ。


 世襲されないだけで、贅沢さえしなければ子供たちを養うには十分な身分だった。


 キリアンにとっての祖父もまた騎士だったらしく、父親はその背を見て育ち、騎士を目指したと聞いてキリアンもなんとはなしに騎士を目指した。

 元々同年代の子供たちに比べて彼は発育も良く、運動神経も良かった。

 

 父親を真似て木の枝を振る少年は、あっという間に兵士の職に就いたと思ったら騎士への昇級試験に合格したのである。

 キリアン、十五歳の頃の出来事であった。


 そこからはとんとん拍子だった。

 元よりそこまでおしゃべりな方でもないキリアンは、所作さえ気をつければ十分だと周囲に言われるがままだった。

 騎士爵までは遠そうだが、一般騎士としてならば十分通用するだろうと認められたのである。


 彼としても長々と喋るよりは剣を振るっていた方が気が楽だったし、礼儀作法はともかくおべっか(・・・・)や愛想笑いといったものは苦手でならない。

 幸いというかなんというか、見目が調っていたことと父親の人望のおかげでキリアンは大きな失敗もなく『寡黙で実力派の若手騎士』と思われるようになったのである。


 キリアンは中身の伴ったかっこいい騎士、などではないのだ。

 父親に憧れて剣の道に進んだだけの子供が褒められてその能力を開花させ、鍛錬を積むことで結果が出ることが面白く、また負ければ悔しい……そのごくごく当たり前の成長を遂げた、やや才能ある人間に過ぎなかったのである。


 本を読むのが三度の飯より好きな長兄、楽しく恋愛することが生き甲斐の次兄とウィッドウック家の三兄弟はそれぞれ好きなことをして育ったので、親としても特に思うところはなかったのだろう。


「……なあ、あんた。隠れたいなら茂みだとバレバレだぜ」


「!」


 そうした中で剣一筋だったキリアンは、その見た目も相俟って女性たちにモテてしまった。

 そう、モテてしまったという表現が正しい。


 別にそれを嬉しく思わないわけではなくて、ただどう対処して良いかわからないというのが彼の正直な意見だった。

 ふわふわとした女性たちは触れれば壊れそうだし、口下手なことを知られて落胆させるのも申し訳ないし(何よりも彼が立派な(・・・)騎士に見えるよう気を遣ってくれていた先輩たちの顔に泥を塗るようでキリアンはそちらの方が気になった)、そうして逃げ回るようになったのだ。


 とはいえ、王城勤務であるキリアンにとって一介の騎士が行き来できる範囲は決まっている。

 そんな折、声をかけてくれて親しくなったのがアレン・アシュリー……フィリアの兄だったのである。

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