表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

謀反を起こしたら寵愛ルートに入りました……???

謀反を起こして、その後死ぬつもりで終活していた令嬢が、

なぜか、新皇帝に寵愛される話です。

世は不可解。

 謀反を起こしたんだけど、なんか聞きたいことある?


 いまものすごく暇だから、聞いてくれるならなんでも話すよ。言えることだけだけどね。


 あれからいろいろあってもうなんだか遠い昔のことのように思えるなあ。笑えることにこれ、なんとたった一週間くらいの話です。


 わたし、謀反を起こして、成功しました。


 すごくない? なんと皇帝が死んだの。


 わたしは当然反逆者になって、宮廷警察に捕らえられた。そりゃ謀反人で、皇帝殺しの大逆人よ。

  

 あ、そうそう、皇帝はわたしが殺しました。

 成り行き上そうなったんだけど、謀反なので、ぶっちゃけ最初からそうするつもりでした。


 どのみち死ぬと思うじゃん? 

 実行犯だし。

 ふつう処刑されるよね。

 なんたって皇帝殺しだもん。


 なのにわたしは、まだ生きているんだなあ。

 あまりにも不可解。


「大変です、お嬢様。また皇帝陛下から贈り物が届きました!」


 まだ十時のギルドの鐘が鳴る前だというのに、今日もまた侍女たちの悲鳴が聞こえる。


「……もう置くところないからお断りして」

「そ、それが、今度は城内に新築の館を建てるから、その鍵をと仰せでございまして」


 と、侍女のひとりがうやうやしく掲げもってきた箱には、本来の鍵としての役目を果たせるのだか訝しい、ごてごてと宝石のついた金の鍵が、私の寝床のおふとんよりも艶めかし胃絹のクッションに横たわっている。


「それもお断りして……」


 朝から疲労が激しい。あーもう、どうしてこんなことになったのか。

(死ぬはずだったのに)


 謀反を起こし、皇帝を殺した罪で死刑を宣告されていたわたしは、なぜか一転、大タリスマニア帝国の新皇帝に寵愛されている。


 そう謀反を起こした。皇帝を殺した。それはこの国の、いやもはや世界中の人間が知っている。どこからどうみてもわたしは大逆人だ。


 本懐を遂げたらあっさり死ぬはずだったから、毒杯も用意したし、失敗してとっつかまったあとはまあ、処刑されるだろうことも覚悟していた。

 もうお金も財産もない。いわゆる終活は済んでいた。

 服も家具も財産と呼べるわずかな宝石などもすべて金に換え、あるいは謀反を起こすための軍資金にした。だから文字通り身一つ。


 幼い頃から苦楽をともにしてきた侍女や友人たちともわざと縁を切った。

 万が一成功しても失敗しても、わたしとかかわりがあるというだけで身辺に危険が及ぶだろう。

 だから、念には念を入れて、半年以上前から絶縁状態を作っておいた。


 実際謀反前、私の宮廷での評判は最悪だった。

 勝手な女、高慢ちきで借りた金を返さない、嘘つきな女。

 すぐ暴力を振るう、金遣いの荒い、身分の低い田舎者の、行かず後家女……


  タリスマニアの都クルハザードいちの嫌われ者こと、”変わり身のファリサ”。

 すぐに人を裏切り乗り換える評判からついたその二つ名は、謀反を起こしたあとすぐに反逆者ファリサの名で歴史に名をとどめ、体は広場で八つ裂きにされてカラスに食われるまで放置されるはずだったのだ。

 なのに。


「大変です、お嬢様、また贈り物が!」


 わたしは、もう何度聞いたかわからない、侍女たちの「たいへんです」をまたかという思いで聞き流しながら、朝風呂に入ることにした。


 もう知らない。


 ここから先は余生だ。


 だって私は謀反を起こしたのだから。


 そして謀反は成功したのだから。


 皇帝は代替わりしたのだから。




 その新皇帝に寵愛されるなんて聞いてない。


昼休みにぼちぼち書いて更新予定です。

よろしくね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ