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桜桜にして咲く櫻  作者: nor
第四章 銀樹(高二冬編)
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第九十一話 二つの謎

「クリスマスパーティー?」


 平日の夜。ご飯食ってお風呂から上がった後、私は夕とソファでくっついてスマホを見ていた。

 夕はさっき風呂から上がったばかりなので若干髪が濡れている。


「ほら。毎年優愛の家でやってるだろ?」


「ああ。そういえばあったね。僕は行ったことないけど」


 いう通り、去年まで夕は優愛の認知するところじゃなかったし、誘われてたのは私と葉菜くらいだ。

 夕は若干こっちに体重を乗せてきて、二の腕に夕の濡れた髪が当たってちょっと冷たかった。


「修学旅行組集めたいんだと。四栁家のパーティーだから大人たちも大量にいて堅苦しさもあるけど」


 社交辞令とかいうゴミみてぇのが飛び交うのが鬱陶しいと言ったらありゃしない。


「修学旅行組ってみんな来るの?」


「そうなんじゃね?」


 「じゃあ影も…………」と夕は小さく呟いてから、体を起こしながら子犬みたいに濡れた髪をブンブン振って、こっちをちらっと見てきた。


「凛も行くんでしょ?」


「まあな」


「じゃあせっかくだしおいしいもの食べに行こうかな」


 夕はそう言って木のテーブルの上に置いた無駄に豪華なチケットを一枚、勢いよく捲って取ってそのまま寝室に歩いて行ってしまった。

 私はその姿を少し追った後、またスマホを見た。



 最近気になっているのは、夕が時々ふるまう不自然な態度だ。

 特に修学旅行からその兆候が随分激しくなった。

 だが一番最初に気になったのは文化祭の時。一緒に来ていた人のことを聞いたとき、ぼかしぼかし答えられて何もわからないまま言い包められたことがあった。

 そして修学旅行前と最中の、いつもの人見知りの雰囲気ではなく、どこかほかの居心地の悪さというか気まずさのようなものを醸し出していたのも、私にはかなり違和感だった。

 修学旅行の前の顔合わせで初めて気が付いたのは、あの満月影とかいう奴が文化祭の同行者だということだ。特に夕に言及しなかったが、確かにあの特徴的な髪と夕との身長差、歩幅を合わせて歩く姿が、妙にしっくりくる。しかも夕の人見知りが発動していないようにも思える。

 だからこそ、最初は警戒してできる限りあの男を監視した。でも怪しい奴ではなかった。家柄が少し引っかかって完全には信用できないが、結局部屋分けの時に二人部屋を許してしまった。


 夕は中々私に嘘をつかないし物事を隠したりしない。正直じゃない時もあるけど、そう言うところは愛おしいと言える。

 でも二つ。私が訊いても答えてくれないものがある。

 『絵をかかない理由』と『満月影との関係』だ。

 そんなにしつこく踏み入ることはしたくない。

 でもきっと…………


「そろそろ寝る?」


「…………ああ。寝る。疲れた」


 でもきっと、いつか聞かなきゃいけない時が来ると信じよう。

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