第六十二話 廣瀬先生の恋事情会議
「は~ん。高橋先生をなぁ」
土曜日。
わたしは、優愛と凛に呼び出されてちょっとしたカフェに来ていた。
話は、うちの担任の恋事情についてだ。
「意外、とまではいかなくても
ちょっと驚きだよね」
「うちらのクラスには授業来てねえけど、噂じゃ『授業と外見以外残念な先生』だったか」
かなりひどい言われようである。
「こちらオレンジジュース三つです」
すると、店員さんがさっき頼んでいたジュースを持ってきてくれた。
「それと、トロピカルイチゴスーパーヒュージジャイアントプレミアムパフェの方~」
「はい!」
優愛は元気に手を挙げて、店員さんは優愛の目の前にその、異様にでかくてピンクなパフェを置いた。
「いっただっきま~す」
優愛は早速そのパフェを銀色のスプーンで頬張り始めた。
「よく食べれるね…………」
「甘いものならいくらでも食べれるよ~」
「理解の範囲外だろこれは」
私と凛は二人してその優愛の胸あたりに視線を集めた。
これが、これか
と二人で目を見合わせた。
「何二人して私の胸見つめてんの?」
「「いや、何でも」」
わたしと凛は一緒に首を振ってそれを否定した。
「…………食べる?」
「「いや、いい」」
「そ!」
大きさ以上に、すごく重そうな感じだ。
既に見た目からあまりに甘すぎるというか、匂いだけでかなりお腹いっぱいになる。
だというのに、優愛は銀色のスプーンでバクバク食べていく。
優愛の顔だけなら、すごくおいしそうだ。
だけならね。
「高橋先生って、数学の授業はわかりやすくてイケメンなんだけど、あんまりドジで馬鹿なもんだから生徒が時々困ってる。
って噂聞いたことあるけど…………」
わたしはジュースを飲んで、両手でグラスをくるくる回しながら言った。
高橋先生は隣のクラスの担任だが授業には来たことがないのだ。
「まあ、事実だろうよ
一日一回はあの先生の悲鳴聞くしな」
「ねー
むしゃむしゃ」
凛はグラスを指でなぞりながら、そう言った。
悲鳴。というのは、その通り絶叫である。
いつも何食わぬ顔をしているので体は強いのだろう。
優愛はまだ食べている。
「廣瀬先生って面食いなのかな」
「分かんないって言ってたが、結構内面的な話も多かったな」
「なんか話聞いたの?」
「そりゃあ、質問攻めよ
主にそいつが」
「…………!!」
優愛はパフェにありつくのをいったん止めて、胸の上をドンと叩いて、自信満々の笑顔を作った。
「優愛
ここ、ついてる」
そう言ってわたしは自分のほっぺたを指さした。
すると、優愛はほっぺに付いたクリームを器用になめとって、ぐー、と言わんばかりに親指を立てた。
「初恋なんだと、先生の」
「へ~、初心だねー」
「な
しかも、一目惚れらしい」
「…………なんか、話が甘いね」
「甘ったるいな」
凛はそう言ってぐっとジュースを飲んだ。
さっきから凛と思考がよくリンクする。
「で、そんな先生の恋路を手伝うって?」
「そう
なんか面白そーでしょ
むしゃむしゃ」
「何やるかとか決まってるの?」
「それを決めるために招集した次第よ」
「そういうことね」
やっと本題が見えてきた。
ちょっと長くなりそうだなと思って、少な目の一口、ジュースを飲んだ。
「先生は付き合うとこまで手伝ってほしいのかな」
「いったんは仲を深めるとこからじゃね?
あの二人接点ねぇだろ」
「確かに…………」
あの二人が関わっているところを見たことがない。
ふと見ると、優愛のパフェが半分以上なくなっていた。
「先生っていう立場となると難しいよね
結局職場なわけでさ」
「ん、まあそうだね」
わたしはその異様なスピードで減っていくパフェに驚愕しながら、うなづいた。
「となると、私たちができるのは、先生の発言に干渉することぐらいか」
「例えば?」
「べたで言えば
恋人居ますかぁ?
とか?」
「べた中のべただな」
確かにいったんそういう話題で、少し気がありますよアピールもありかもしれない。高橋先生鈍感そうだけど。
凛が「物まね似てるな」と云うと「まあね」と優愛が自慢げに笑っている。
「でも廣瀬先生奥手そうだからなー
そういうの苦手そう」
「だから、私たちが背中押すんだろ」
「それもそうか」
わたしはジュースをぐっと飲みほした。
「それか、一気にデート誘うとか?」
「さすがにいきなりじゃね?」
「それまでにちょっと仲良くしてあげるんだよ
とりあえず二人っきりのお出かけを目標にした方がよくない?」
「それいいかもね」
そんな感じに話がまとまりそうだ。
「どうやって先生に伝えようね
人がいると聞かれちゃうし…………」
「それなら大丈夫!」
そう言って優愛はスプーンをカランカランとパフェのグラスの中に入れた。
もう食べ終わったらしい。
「大丈夫って?」
「今から会いに行くんだよ」
「「?」」
これに関しては凛も知らないようだった。
ーーーーー
「いるし」
連れてこられたのはすぐ近くの公園だった。
近くには優愛の家もあるんだったか。
「よくあそこにいるんだよ
子供のこと見ては笑みをこぼしては
カップルを見ては真顔になって目をそらすの」
「それ一種の妖怪だろ」
そんなわけでわたしたちは先生のもとに寄った。
先生にさっきの話をまとめて話すと、先生は「そんなこと…………!」という感じで否定的だったが、結局は承諾して、かなりの意気込みを持っていた。
目標:デートをする
手段1:高橋先生に話しかける。




