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桜桜にして咲く櫻  作者: nor
第一章 初桜(高二春編)
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第十一話 文化祭① 買い出し

「そういや、来週から文化祭の準備期間だぞ」


「文化祭ね~」


 私、こと水尾凛は部活ののち、家で夜ご飯(ハンバーグとか、野菜炒めとか)を食べながら夕とだべっていた。


「お前も来るのか?」


「まあ、行ってもいいけど、それはそれでクラスの人に迷惑かけそうだな~」


「なんで?」


「毎日いけないから、準備に参加できないし。当日だけ行っても混乱させるだけでしょ?」


「確かにな」


 シフトとかも作るし、夕みたいな不確定な人は少し厄介か。


「なあ、少しばかし料理を教えてくれねえか?」


「どうしたの?いきなり」


「文化祭で料理することになったんだよ」


「別にいいけど…………そこまで凛も料理下手じゃないよね?別に教わらなくても」


 私は夕を見ていると、察せよ、という視線を送ってしまった。


「…………ん。わかったよ。今度ね」


「ああ。ありがとう」


 私は取り繕うように目線、というか顔を夕に見せないように下に落として、一口ハンバーグを頬張った。


「…………そういや、今回のテスト点数よかったんだな」


「ああ…………なんかね。

 凛のテスト勉強に付き合ってたら、それが勉強になってたみたいで

 というか凛も二十位付近じゃなかった?」


「まあな」


「すごいどや顔」


「まじ?」


 あれ、私そんなにどや顔だったかな。

 意外と結構喜んでんだな。

 私は顔を少し振ったあと、みそ汁を飲んだ。

 

「てか、いくら私の勉強手伝ったからって、授業受けずにあれって、ほんと地頭いいよな」

 

「正直自分が一番驚いてるよ」


 夕は淡々とそう言った。

 範囲も結構あったはずだしほんとに怖い。


「でもお前、どの教科も十分前くらいには解き終わってなかったか?」


「まあ、そうだったかもね

 ていうかみてたの?」


「カンニングじゃねえぞ」


 私は箸を止めて、夕をにらんでそう言った。


「わかってるよ」


 夕はそう言って立ち上がりながら、


「次のテストも頑張ってね?

 今回だけよくても意味ないんだから」


 と私に喝を入れた。


「わあってるよ」


 そう私がいうと夕は少し笑いながら棚に向かっていった。

 夕は棚からコップをとって、冷蔵庫から炭酸水をとった。


「炭酸水って美味い?」


「味は、ないかも」


 コップに氷をいれながら夕はそう言った。


「なんで飲むん?」

 

「なんか、普通の水だと物足りないんだよね」


 夕は、椅子に座って、炭酸水を一口飲んだ。


「でもそこまで夕は炭酸強くないだろ」


「そうなんだけどね~」


 そういいつつ、夕は野菜炒めを皿からとって食べた。

 文化祭、夕と一緒に周りたいものだ。

 せっかくの行事だし。


「…………なあ、夕」


 私は頬杖を突きつつそう言った。


「なに?」


 夕は私を見上げてそう言った。


「文化祭、変装(コスプレ)していくんならどうだ?」


「え?」

 

 夕はそんな素っ頓狂な声を出した。


ーー葉菜視点ーー


「今日から、放課後に文化祭の準備ができるようになります~

 何かお金を使う際には、私に言ってくださいねぇ」


 テストが終わって七月に入ったころ、

 例のゆるふわ教師のそんな一言とともに、二週間弱の文化祭準備期間が始まった。

 そんなこんなで帰りのホームルームも終わり、放課後。

 わたしと優愛は学祭の買い出しに来ていた。


「はーなちゃんと~、おっ買い物~」


 買い出しへ向かってるとき、優愛はそんな鼻歌を歌いながら、ルンルンと歩いていた。


「周り見ないと転ぶよ?」


「ダイジョブ!ハナちゃんのほうに倒れれば、それはそれで…………ぐへへ」


 優愛は、なんかゲスイ顔でそう言った。


「はあ…………そんなこと言うなら、これでテストのご褒美終わりね」


「何言ってるの葉菜ちゃん。これはお使いであって、仕事であって、決して買い物などというものではないのだよ?」


 さっきまでの優愛はどこに行ってしまったのか、いきなり姿勢を正して、つけてもいない眼鏡をクイッとして、手のひら返しの言葉をそう並べた。


「じゃあ、テストのご褒美はいつするの?」


「夏休みのはじめあたりかな…………多分、文化祭まで結構忙しそうだし」


「そう。じゃあ、早めに連絡してね?」


「そうする」


 そんなこんなで、わたしたちはホームセンターに到着した。


ーーーーー


「えっと、何買うんだっけ?」


 ホームセンターに入るや否や、優愛は花を見ながらそんなことを言った。


「知らないで来てたの?」


「うん」


 呆れつつわたしが聞くと、さも当たり前かのように優愛は生返事をした。


「はあ…………えっとね」


 わたしはスマホを取り出して、メモ帳を開いた。


「足りない分のガムテープ、段ボール、マスキングテープ、あと工具をいくつかと、衣装用の布と―――」


「あああああ!もうむりぃ。葉菜ちゃんに任せた!」


 そう言って優愛はわたしに先生からもらったお金の入った袋を押し付けてきた。


「そうなるならなんで付いてきたのさ」


 わたしはその袋を受け取り、スマホをしまった。

 そもそも、お使いはわたし一人が行くという話だったのだ。

 なのにその話を聞いた優愛が『私も行きたい!』なんて言い出して、今に至っている。


「葉菜ちゃんがいたから」


「そんなに万能じゃないからね?その言葉」


 そう言いつつわたしたちはそれらの売り場へと歩き始めた。


ーーーーー


 大抵のものが買い終わり、わたしたちは最後に衣装に使う生地を買うために布生地コーナーに来た。

 

「いっぱいあるね~」


「どれ買おうか」


 優愛は感心しつつ、わたしは布を見ながら選別していた。

 衣装づくりはわたしの担当なので、勝手に決めてもいい…………と言っても何を作るかはもう決めてあるのだけど。


「ねえ葉菜ちゃん!この柄かわいいよ!」


 優愛はそう言ってその布生地を指さした。

 わたしは優愛の近くに寄って、その生地を見た。

 まるで猫の模様のような茶色と白色の生地だった。


「なんか猫みたいだね。

 いいよ、買おうか」


 わたしはその生地を一枚とった。

 少し目線を上げると、優愛の目が、わたしの後ろに向いていて、すごく鋭かった。

 顔はさっきとは一変、警戒をむき出しにしていた。


「…………」


「どしたの?」


 わたしはそう言って後ろを振り返った。

 一瞬、十メートルほど離れたその人と目が合った。

 優愛が睨めつけていたのは、田崎晴斗だった。


「ちっ…………あの女かよ」


「どうしたんだ?」


 晴斗が舌打ちをすると、物陰になっていたところから田崎翔太も出てきてそういった。


「あそこだよ」

 

 晴斗が顎をクイッっとしてわたしたちを差した。


「ん?あ…………」


 わたしたちを見つけた翔太はそう、少し困惑の混じった驚きの声を上げた。

 すると、深々とお辞儀をした。


「さあ、帰ろう晴斗。お前もクラスの仕事があるだろ?」


「んでだよ、一発あの女に…………」


「帰るぞ」


 翔太は言葉に反抗して一歩前に出た晴斗の腕をつかみ、そういって引っ張った。


「ちっ…………」


 わたしたちに向かってそう舌打ちをすると、晴斗はそのまま後ろを振り返り、翔太とともに歩き出した。


「それと、あまり女性に女なんて言ってはいけないよ?」


「…………」


 そんな会話をしながら、田崎兄弟は姿を消した。


「晴斗のやつ、先輩にはなんか弱いよね」


 そう言う優愛の顔を見ると、警戒はしつつも、目元はかなり崩れていた。


「それが今の唯一の救いだね。

 さ、わたしたちも行こうか」


 そう言ってわたしはくるりと振り返り、田崎兄弟とは反対方向に歩き始めた。


ーーーーー


 わたしたちは外から帰った後、教室の隅で衣装を作っていた。


「葉菜ちゃん、これどうやってやるの?」


「それは布を重ねながら縫っていって」


「はーい」


 そう返事をして、優愛は目線を針先に落とした。

 優愛はそれなりに器用なので衣装係になるのは納得なのだが…………


「優愛はなんでこの役に付いたの?」


「葉菜ちゃんがいたから」


 いやまあ、それはわかってたけども。


「そうじゃなくて、うちは()()()()()()()やるんでしょ?

 なら、むこう行ったほうがいいんじゃない?」


 わたしは、シフトや、売り物について話し合っている人たちを見た。


「なんで?」


「いや、向こうのほうが楽しそうじゃん」


 向こうの人たちはみんなゲラゲラと笑っていた。

 ちなみに凛は調理係で、今は出す食べ物や、その担当について、別の部屋で話し合ってくると会議室に行っている。


「むこうに葉菜ちゃんいないし…………

 逆になんで、葉菜ちゃんは向こうに行かなかったの?」


 優愛は作業しながら淡々とそう言った。


「それは…………こっちならコスプレしなくて済むと思ったから…………」


 そうわたしが言うと、優愛の手が止まりこっちを見てきた。


「何言ってるの優愛ちゃん?()()()()コスプレするんだよ?」


 ……………………おっとぉ??????

ちなみに、葉菜がお使いのメモを取っていたのは、優愛が一緒に行くと言い出したからです。

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