異国の丘の夕焼け
異国の丘の向こう側、敵陣がある方角に広がる密林を睨みながら童顔の若い兵士が歩哨に立っている。
敵は攻勢に出ているが、我が軍の夜襲を恐れて夜になると引き上げて行く。
歩哨に立つ若い兵士は夜空に広がる無数の星々を見上げながら、独り言を口にする。
「今日も生き残れました、明日も生き残れますように」
東の方角に太陽が昇り朝が来た。
昨夜歩哨に立っていた若い童顔の兵士を含む多数の兵士が、小銃を構え手榴弾を握りしめ蛸壺に籠もって敵を待ち受ける。
戦車や装甲車を先頭に敵兵が密林の中から姿を現した。
密林中に敵味方の砲声や銃声が響き渡る。
若い童顔の兵士は顔を上げて異国の丘の向こうの空を染める夕焼けを見上げた。
夕焼けを見ながら彼は、幼い頃母親に背負われて見た夕陽を思い出して「かあちゃん」と一言呟く。
敵弾を受け横たわっていた若い童顔の兵士はそう呟いたあと息絶えた。