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逆ハーレムの構成員になった後最終的に選ばれなかった男と結婚したら、人生薔薇色になりました。

作者: 下菊みこと

ディディエ・フロランタン。フロランタン公爵家の一人息子で宰相の孫でもある。そんな彼は見目麗しく成績優秀、誰にでも優しく素晴らしい公爵家の跡取りとして有名だった。


しかし、そんな彼の通う貴族の子女のための学園に聖女の証である〝聖痕〟を持つ平民の少女が特別に特待生として通いだしてから運命の歯車は狂った。


彼は聖女に籠絡され、見事逆ハーレムとも呼べる集団の構成員になった。そして許嫁の侯爵令嬢から彼の有責での婚約破棄を突きつけられた。


婚約破棄は痛手となったが、彼は一人息子で他に後継もいない。慰謝料などの支払いもお金はあるため滞りなく出来た。借金もしていない。


なんとか廃嫡は免れたものの、学園の卒業後に最終的に聖女である彼女に選ばれたのは騎士団長の御令息。彼は恋の戦いに敗れた。


そんなディディエは三十歳まで独身を貫いたが、いい加減に結婚しろと無理矢理婚姻届にサインさせられた。


結婚式は身内のみの質素なもの。神前でのキスもするフリだけをした。初夜、部屋で待っていたえっちなネグリジェ姿の彼女に「どうしても愛する人がいるから抱くことが出来ない。きちんとした夫婦になることも出来ない。申し訳ない。ただ子供は必要だから、精液だけ渡すからそれをナカに入れて子供を作ってくれないか」と馬鹿な提案をして、なんとそれがまかり通るという恐ろしい事態が起きた。


一方、ディディエの結婚相手。


デルフィーヌ・ジェルヴェーズ。ジェルヴェーズ〝男爵家〟の四女である。ジェルヴェーズ男爵家は爵位は低いものの、領地を懸命にそして賢明に運営していたためそこそこ上手くやれていた。しかし突然の地震に見舞われ復興の為に借金。復興は果たしたが利子が膨らみ返済が追いつかない。


そんな中で全く結婚する気配のない一人息子を心配したフロランタン公爵の余計なお節介が発動。借金を利子を含めて代わりに全額耳を揃えて返してやるからうちの息子と四姉妹の誰かを結婚させてくれとのお願い。


結果、ディディエ・フロランタンの噂…というか、過去の所業である浮気の話を聞いても唯一拒絶反応を示さなかったデルフィーヌが選ばれた。


デルフィーヌはディディエの美しい見目にも一切の過去にも興味がなく、あるのは爵位とお金持ちという点への興味のみ。デルフィーヌは言い方は悪いが拝金主義だった。


結婚式は身内のみの質素なもの。神前でのキスもするフリだけをした。それすらデルフィーヌにはどうでもいい。だってお金持ちと結婚出来たから!


初夜、部屋でえっちなネグリジェ姿を着せられてディディエを待つデルフィーヌは抱かれるかどうかは気になっていた。この家での地位を確立するために子供は欲しい。しかしディディエはおそらく今も聖女に惚れている。しかしそんな心配は無用だった。


「どうしても愛する人がいるから抱くことが出来ない。きちんとした夫婦になることも出来ない。申し訳ない。ただ子供は必要だから、精液だけ渡すからそれをナカに入れて子供を作ってくれないか」


馬鹿な提案をしてくれた彼に心から感謝した。抱かれるのも面倒くさいためすごく助かる。処女はディディエの用意した大人のオモチャで捨てた。ベッドシーツの上の鮮血を確認すると、彼の渡してきた精液をナカに塗り込む。


夫婦の寝室はディディエの私室とデルフィーヌの私室の間にあり行き来出来るようになっているため、ディディエはデルフィーヌがベッドシーツをきちんと血に染めたのだけを確認してさっさと部屋に戻った。


その後の夫婦の夜は、寝室で精液の受け取りをしてディディエが私室に戻り、デルフィーヌが大人のオモチャで欲を発散しついでにベッドシーツを乱してから精液をナカに塗り込み、そのベッドで寝るというもの。


そしてデルフィーヌはそんな雑な方法できちんと懐妊した。


懐妊はすぐにディディエ、ディディエの両親と祖父に伝わった。褒められて、デルフィーヌのためのお小遣いが増えた。


ただ…祝いの席でディディエの祖父から、子供は男は二人女は三人欲しいと言われたのでまだ偽りの夫婦生活は続きそうである。


そんなデルフィーヌだったが、ディディエに嫁いできてから人生薔薇色である。


まず、乱して寝なければいけないもののベッドはふっかふかで肌触りも良く気持ちいい。


ドレスもとても素敵なものばかりを贈られた。毎日高級なドレスに装飾品を身に着ける日々。


紅茶は香りが高く芳しい。とても好きな味だった。料理は食べたことがないほど美味。文句の付けようがない。


公爵夫人としての教養を身に付けるための勉強やらノブレスオブリージュとか言って行う孤児院への慰問やらお茶会やら夫と共に社交界への出席やらは面倒だが、貴族の女性として必要なことだと飲み干した。


実家も借金を代わりに返してもらえて収入が国への税金以外そのまま家と領地経営のために使えるようになったので、生活はまた元のように質素だが堅実で穏やかなものに変わったらしい。家と領民達の役に立てたなら良かったと思う。


そして、出産。さすがにこの日ばかりは夫も夫として振る舞った。手を握ってくれる。少しばかり心配そうに見つめる彼に、可愛いところもあるじゃないかとデルフィーヌは思う。


生まれたのは男の子。あと男は一人女は三人。まだまだ道のりは長そうである。


今度は育児。と言っても、実家の男爵家と違ってこちらではきちんと乳母が付く。母親の役目なんてたまに甘い顔をして甘やかして可愛がり懐かせることだけである。厳しい顔は乳母が代わりにしてくれる。


なのでデルフィーヌの生活はほとんど変わらなかった。だが、夫は変わった。子供が可愛い可愛いと、仕事を理由に夜遅くに帰ってきていたのが嘘のように早く帰ってくるようになった。ちなみに彼の仕事は宰相補佐であり、いずれは宰相になる予定。


早くに帰ってくるようになると、子供だけでなくデルフィーヌにまで態度が変わった。少しずつだが歩み寄ってくるようになった。優しく微笑んでお土産のお菓子やケーキを買ってくる彼に、少しずつデルフィーヌは絆されていった。


二人目の子供、女の子の可愛い赤ちゃんを産んでから、ディディエは精液を渡して来なくなった。優しく抱かれて、デルフィーヌはディディエを許容するようになった。


三人目の子供、女の子が生まれてからはディディエは大分デルフィーヌに傾倒していた。男爵家の四女風情が公爵家に嫁ぐなんてと陰口を叩くものを、きっちりと顔と名前を覚えて後でそれとわからないように報復するくらいにはデルフィーヌを愛している。


デルフィーヌも、贅沢な生活をさせてくれて可愛い子供達を授けてくれただけでなく、愛してくれる夫を可愛く思う。歪な関係から始まった夫婦は、いつのまにか誰もが羨むおしどり夫婦への道を辿っていた。

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[良い点] 下手に恋愛に夢を持った乙女とか、貴族としてのプライドがある令嬢とかでは無くて、実利的で居ながら相手に感謝を忘れないデルフィーヌを結婚相手として選んだ仲人さん?はグッジョブです! うるさい…
[良い点] ヒロインのメンタル強強! ヒーローが実らなかった恋に執着して自己陶酔のクズ野郎ですが、それを受け入れるヒロインの凄さよ!例え拝金主義であってもです。 [気になる点] ヒーローの聖女への愛。…
[良い点] 正しく「子はかすがい」ですね。 [一言] 逆ハーレムの負けヒーローと家の都合で愛のない結婚をするヒロインの話は過去にもいくつか読んだ事がありますが、子供が生まれるまでヒーローが心変わりせず…
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