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2.思わぬ誤算。

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「う、うぇ……!?」

「どうしたのですか、師匠? そんな身の丈に合わない場所に連れてこられた、みたいなお顔をされて」

「いや、まさしくその心情なんですけど!?」




 ――色々あって。

 僕とアーニャは二人で、貴族の家で過ごすに相応しい服、というものを買いにきた。だがしかしいざ足を運んでみると、そこにあったのは高価な布地を使った色鮮やかな服の数々。女性ものは派手過ぎないようにしつつ、されど品格を感じさせていた。

 対して男性ものは、といえば……。



「おっふ……!」



 おおよそ、僕が今まで着てきた研究服とは程遠いものだった。

 少年向けから成人男性向けまで、多種多様に揃えられた品々に思わず目が眩む。あと、各々の金額を見たらもう正気ではいられないような気がした。

 とにもかくにも、僕が普段使いするにはシャキッとしすぎている。

 言い方に難しいが僕は、もっとだらしなく着こなせるルーズな服の方が好きなのだ。これでは間違いなく、服に着られてしまう。



「あの、アーニャ様。ここでなくても――」

「ついでに、そのボサボサ髪も整えましょう!」

「――ひえぇ……!?」



 そう思ったので、僕はそれとなく安価な服屋へと誘導しようとした。

 だが、それどころかアーニャは意気揚々とフルコースを堪能する気である。有無を言わせない雰囲気に、僕はいよいよ何も言い出せなくなった。

 そして――。



「いらっしゃいませぇ~!」



 入店し、そこからしばらくは記憶がない。







「師匠、まだかなぁ?」



 アーニャは尊敬する師の準備を嬉々として待っていた。

 最初に見た時の印象は、どこかに捨てられた猫さんのようだった、という感じのリフレス。顔立ちは悪くないと思うのだが、目を隠すほど伸びた黒のボサボサ髪が悪印象を加速させていた。出で立ちは言うまでもなく、着回した結果ヨレヨレになったものばかり。


 おおよそ姉の一件がなければ、話しかけることさえ避けていただろう。

 しかし、今となっては尊敬すべき師匠であった。だから、少しでも格好良くなってほしい。アーニャもそれがワガママと分かってはいたが、彼のためだとも思っていた。


 貴族の家で働くというのは、そういうこと。

 内外問わず、品位を示さなければならないのだった。

 それを直感的に察しているあたり、アーニャは根っからの令嬢である。



「……あ、師匠!」



 そのことに彼女自身は気付いているのか。

 それは置いておいて、小一時間経過した頃にリフレスは姿を現わした。そして、



「どうですか、少しは格好良く――――ひんっ!?」





 彼の変貌を目の当たりにしたアーニャは、言葉を失う。

 何故なら、そこに立っていたのは――。





「うぅ……アーニャ様、恥ずかしいですよ」





 ――性別など超越した美人であったのだから。



 薄汚れた小動物のような印象は、遥か彼方に消え去っていた。

 透き通るような肌に、中性的かつ整った顔立ち。恥じらうように淡く染まった頬からは、色気というものが漂っていた。ボサボサだった黒髪は綺麗に真っすぐに揃えられ、後ろで小さく結ばれている。


 そして問題の衣服。

 いや、もはや問題などではなかった。

 何故なら彼の袖を通した漆黒の燕尾服は、彼のために作られたとさえ思うほどに似合っていたのだから。誰も文句など付けない。それどころか、称賛の嵐に違いなかった。



「ひ、ひぅ……」



 アーニャはようやく、そう言葉を絞り出して。

 そして――。






「むきゅう……」

「え、あ……アーニャ様!?」






 ――あまりの衝撃に、意識を失った。

 大慌てでリフレスが駆け寄って、彼女の身体を抱き支える。




 思わぬ誤算。

 アーニャにとってそれは、とても大きな出来事だったらしい。




 


面白かった

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