2.思わぬ誤算。
初日ジャンル別ランキング29位感謝!
感謝の追加更新です!!
続きが気になる、面白かった!
そう思っていただけましたらブックマークや、各話下のフォームより★で評価など!
創作の励みとなります!!
「う、うぇ……!?」
「どうしたのですか、師匠? そんな身の丈に合わない場所に連れてこられた、みたいなお顔をされて」
「いや、まさしくその心情なんですけど!?」
――色々あって。
僕とアーニャは二人で、貴族の家で過ごすに相応しい服、というものを買いにきた。だがしかしいざ足を運んでみると、そこにあったのは高価な布地を使った色鮮やかな服の数々。女性ものは派手過ぎないようにしつつ、されど品格を感じさせていた。
対して男性ものは、といえば……。
「おっふ……!」
おおよそ、僕が今まで着てきた研究服とは程遠いものだった。
少年向けから成人男性向けまで、多種多様に揃えられた品々に思わず目が眩む。あと、各々の金額を見たらもう正気ではいられないような気がした。
とにもかくにも、僕が普段使いするにはシャキッとしすぎている。
言い方に難しいが僕は、もっとだらしなく着こなせるルーズな服の方が好きなのだ。これでは間違いなく、服に着られてしまう。
「あの、アーニャ様。ここでなくても――」
「ついでに、そのボサボサ髪も整えましょう!」
「――ひえぇ……!?」
そう思ったので、僕はそれとなく安価な服屋へと誘導しようとした。
だが、それどころかアーニャは意気揚々とフルコースを堪能する気である。有無を言わせない雰囲気に、僕はいよいよ何も言い出せなくなった。
そして――。
「いらっしゃいませぇ~!」
入店し、そこからしばらくは記憶がない。
◆
「師匠、まだかなぁ?」
アーニャは尊敬する師の準備を嬉々として待っていた。
最初に見た時の印象は、どこかに捨てられた猫さんのようだった、という感じのリフレス。顔立ちは悪くないと思うのだが、目を隠すほど伸びた黒のボサボサ髪が悪印象を加速させていた。出で立ちは言うまでもなく、着回した結果ヨレヨレになったものばかり。
おおよそ姉の一件がなければ、話しかけることさえ避けていただろう。
しかし、今となっては尊敬すべき師匠であった。だから、少しでも格好良くなってほしい。アーニャもそれがワガママと分かってはいたが、彼のためだとも思っていた。
貴族の家で働くというのは、そういうこと。
内外問わず、品位を示さなければならないのだった。
それを直感的に察しているあたり、アーニャは根っからの令嬢である。
「……あ、師匠!」
そのことに彼女自身は気付いているのか。
それは置いておいて、小一時間経過した頃にリフレスは姿を現わした。そして、
「どうですか、少しは格好良く――――ひんっ!?」
彼の変貌を目の当たりにしたアーニャは、言葉を失う。
何故なら、そこに立っていたのは――。
「うぅ……アーニャ様、恥ずかしいですよ」
――性別など超越した美人であったのだから。
薄汚れた小動物のような印象は、遥か彼方に消え去っていた。
透き通るような肌に、中性的かつ整った顔立ち。恥じらうように淡く染まった頬からは、色気というものが漂っていた。ボサボサだった黒髪は綺麗に真っすぐに揃えられ、後ろで小さく結ばれている。
そして問題の衣服。
いや、もはや問題などではなかった。
何故なら彼の袖を通した漆黒の燕尾服は、彼のために作られたとさえ思うほどに似合っていたのだから。誰も文句など付けない。それどころか、称賛の嵐に違いなかった。
「ひ、ひぅ……」
アーニャはようやく、そう言葉を絞り出して。
そして――。
「むきゅう……」
「え、あ……アーニャ様!?」
――あまりの衝撃に、意識を失った。
大慌てでリフレスが駆け寄って、彼女の身体を抱き支える。
思わぬ誤算。
アーニャにとってそれは、とても大きな出来事だったらしい。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。
創作の励みとなります!
応援よろしくお願いします!!