1.師弟と衣服のニオイ。
ここから第1章でっす(*‘ω‘ *)
「えっと、この薬草を煎じて。こっちの薬を混ぜると……」
「そうそう。こうすると、特異反応が起こります」
「なるほど……?」
僕の解説を受けながら、アーニャは一生懸命に基礎の学習をしている。
いまやっているのは実際の薬を作る工程を見るだけ、という単純なものだった。しかし、それでも目の前で完成していく解毒薬に彼女は興味津々。
目を輝かせてしっかりと、拙い文字でメモを取っていた。
「それで、どうしてこのような反応が起きるのですか! 師匠!!」
「いや、あの……」
「……どういたしました?」
しかし、そこでふと僕の手が止まる。
それというのも、言うまでもなく彼女からこちらへの呼称であって……。
「その、師匠……ってのは、やめてもらえないです?」
アーニャは僕に学ぶと決まった日から、ずっとその呼び方なのだった。
かれこれ一週間。それが続いているのだが、
「む、それでしたら師匠もアーニャと呼び捨てしてください!」
「それは、難しいかなぁ……」
交換条件が、命綱ナシの綱渡りのような内容だった。
そのため互いに鍔迫り合いのまま、今の今まで保留となっている。
「それでしたら、師匠は師匠ですね!」
「うぐ……」
何故僕は、こんな小さな女の子に言い負けているのか。
情けなくも感じつつ、仕方なしに作業を再開した。その時である。
「あぁ、ここにいたのね。リフレス」
「ん、アリシア?」
アーニャの姉で、現公爵家当主のアリシアが顔を出したのは。
間借りしている調合部屋を訪ねてきた彼女は、あっけらかんとした様子でこう言うのだった。
「悪いんだけど、アーニャと一緒に買い物行ってきてくれない?」
「へ……?」
――どういう、ことですか?
そう訊ねるよりも先に、アーニャの方が事態を察してこう答えた。
「もしかして、師匠の衣服?」
「えぇ、そうよ。リフレスったら、この家にきてから同じような服を着回してるんだから。少しばかり公爵家の者に相応しい身形になってもらわないとね」
対して、アリシアは首肯する。
そして僕を見て、大きくため息をつくのだった。
「給仕の子たちから、苦情が出てるの。薬の匂いが混ざって、クサイ、って」
「………………」
言い返す余地などない。
基本的に自分は、そういった事柄に無頓着だった。
研究職だからいいではないか。そう考えていたのだが、苦情まででているのなら対策を練らざるを得なかった。そもそも、居候の身だし……。
「……と、いうわけで。アーニャ、頼んだわよ」
「はい! お姉様!!」
姉の言葉に、元気いっぱいに応える妹。
そんな二人を見ながら、僕はいつものように苦笑するのだった。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。
創作の励みとなります!
応援よろしくお願いします!!