表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/21

9.困難と、棚ぼた。

思わぬところから、情報が手に入ります。


※急性副鼻腔炎から、7月26日(火)にようやっと復帰。修繕師更新しました。

こちらも、ぼちぼち再開します。応援よろしく!










「つまり、その毒の持つ成分を分解して解毒法を調べる、ということですか?」

「そうだね。もっとも、その成分が分からないと……」




 アーニャの言葉に考え込む。

 ガイアス国王陛下は、僕に大切なフィリスの命を預けてくれた。もっとも、完全に信用されたわけではなく、失敗すれば首を刎ねられるだろう。

 その緊張感はあるが、それ以上に『メドゥーサの涙』の成分解析が先だった。

 だが、その上で問題となることは、いくつかある。



「でも、体内に取り込まれた毒だけを取り出す、なんてできるのですか?」

「…………それは、現実的じゃないかな」



 優秀な弟子の指摘に、僕も頷いた。

 彼女の言葉通り、体内に一度侵入した毒は何かしらの成分と結合する。それが身体に対して有害な物質へと変化する、というのが一般的だった。

 どういうことかというと、肉が胃の中で分解されたら、それはもう肉ではない。魚でも同様で、再現性が著しく低くなる、ということだ。



「そうなると、やっぱり……」

「うん、そうだね。こうなったら『メドゥーサの涙』そのものを入手するしか、方法はないんだと思う」

「うぅ……。だけど、そんなの無理ですよ」

「……でも、諦めるわけにはいかない」



 頭を抱えるアーニャに、気を抜かないよう注意を促す。

 しかし、とても現実的な案でないのは確かだった。

 どういうことか、というと……。



「犯人が、毒を提供してくれるわけ、ないもんな……」



 そういうことだ。

 毒を仕込んだ張本人が、自ら名乗り出るのを待つしかない。しかし普通に考えてフィリスを殺害しようとする人間が、こちらに協力するわけはないのだ。

 だから、僕たちにできることは――。



「…………フィリスが昨夜、どこで何をしていたか。それさえ分かれば、あるいは手掛かりが掴めるかもしれない」



 僕たちと別れ、治癒術師としての仕事を終えた後のこと。

 フィリスがいったい誰と会って、毒を仕込まれたのかを調べる必要があった。しかし、これにもかなりの問題があって――。



「こんな時に限って、目撃者が誰もいない……」



 すでに公爵令嬢たちに頼んで、その点については調査済みだった。

 だが昨夜の夕食以降、フィリス王女を目撃したものはいない。そこで提供された食事に、という可能性も捨てきれないが、だとすれば他の王族たちに気付かれるだろう。

 そもそも、形式的とはいえ毒見役がいるのだ。

 その目を掻い潜って、彼女の食事にのみ毒を仕込むなんて難しい。



「……だとすると、夜の七時以降。フィリスは何をしていた?」



 ――考えるのをやめるな。

 僕は必死に思考を巡らせて、唇を強く噛んだ。

 どうして彼女は、誰の目にも触れないような行動を取ったのか。もしかしたら犯人の指示によって、そう動くようにされていたか。

 可能性はいくつか思いつくが、しかし今は重要ではない。




「あぁ、くそ……! フィリスはいったい昨夜、何を――」

「それなら、アンドレ王子に訊くと良いだろう?」

「……え!?」




 そこまで考え、口にした時だった。




「彼女は昨夜、アンドレ第二王子と密会していた。だったら彼に訊けばいい」




 フィリス王女のストーカー――もとい、アレクさんがそう言ったのは。




「アレクさん……どうして、そのことを?」

「はっはっは! フィリス王女のことなら、常に見ているからね!!」

「………………」




 僕の問いかけに、彼は誇らしげにそう答えた。

 しかし素直に言ってしまうと、思い切り引いてしまった。

 それは女性陣もまったく同じらしく。彼に聞こえない声で、



「うわ、キモ……」

「こ、怖いのです」




 口々に、そう言っていた。

 だけども今は、そのような犯罪行為が役に立つ。だから、




「アレクさん、ありがとうございます!」

「なに、気にするな。フィリス王女のためだろう?」




 ここは変な感覚こそあれ、感謝を述べて急ぐことにした。

 彼の行為は後々、国王陛下の御耳に入れるとして。




 僕は少しだけ思考してから、ある薬液の入った瓶を手に駆けだしたのだった。




 


アレク、お前あとで城の裏な?





面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みとなります!


応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ