9.困難と、棚ぼた。
思わぬところから、情報が手に入ります。
※急性副鼻腔炎から、7月26日(火)にようやっと復帰。修繕師更新しました。
こちらも、ぼちぼち再開します。応援よろしく!
「つまり、その毒の持つ成分を分解して解毒法を調べる、ということですか?」
「そうだね。もっとも、その成分が分からないと……」
アーニャの言葉に考え込む。
ガイアス国王陛下は、僕に大切なフィリスの命を預けてくれた。もっとも、完全に信用されたわけではなく、失敗すれば首を刎ねられるだろう。
その緊張感はあるが、それ以上に『メドゥーサの涙』の成分解析が先だった。
だが、その上で問題となることは、いくつかある。
「でも、体内に取り込まれた毒だけを取り出す、なんてできるのですか?」
「…………それは、現実的じゃないかな」
優秀な弟子の指摘に、僕も頷いた。
彼女の言葉通り、体内に一度侵入した毒は何かしらの成分と結合する。それが身体に対して有害な物質へと変化する、というのが一般的だった。
どういうことかというと、肉が胃の中で分解されたら、それはもう肉ではない。魚でも同様で、再現性が著しく低くなる、ということだ。
「そうなると、やっぱり……」
「うん、そうだね。こうなったら『メドゥーサの涙』そのものを入手するしか、方法はないんだと思う」
「うぅ……。だけど、そんなの無理ですよ」
「……でも、諦めるわけにはいかない」
頭を抱えるアーニャに、気を抜かないよう注意を促す。
しかし、とても現実的な案でないのは確かだった。
どういうことか、というと……。
「犯人が、毒を提供してくれるわけ、ないもんな……」
そういうことだ。
毒を仕込んだ張本人が、自ら名乗り出るのを待つしかない。しかし普通に考えてフィリスを殺害しようとする人間が、こちらに協力するわけはないのだ。
だから、僕たちにできることは――。
「…………フィリスが昨夜、どこで何をしていたか。それさえ分かれば、あるいは手掛かりが掴めるかもしれない」
僕たちと別れ、治癒術師としての仕事を終えた後のこと。
フィリスがいったい誰と会って、毒を仕込まれたのかを調べる必要があった。しかし、これにもかなりの問題があって――。
「こんな時に限って、目撃者が誰もいない……」
すでに公爵令嬢たちに頼んで、その点については調査済みだった。
だが昨夜の夕食以降、フィリス王女を目撃したものはいない。そこで提供された食事に、という可能性も捨てきれないが、だとすれば他の王族たちに気付かれるだろう。
そもそも、形式的とはいえ毒見役がいるのだ。
その目を掻い潜って、彼女の食事にのみ毒を仕込むなんて難しい。
「……だとすると、夜の七時以降。フィリスは何をしていた?」
――考えるのをやめるな。
僕は必死に思考を巡らせて、唇を強く噛んだ。
どうして彼女は、誰の目にも触れないような行動を取ったのか。もしかしたら犯人の指示によって、そう動くようにされていたか。
可能性はいくつか思いつくが、しかし今は重要ではない。
「あぁ、くそ……! フィリスはいったい昨夜、何を――」
「それなら、アンドレ王子に訊くと良いだろう?」
「……え!?」
そこまで考え、口にした時だった。
「彼女は昨夜、アンドレ第二王子と密会していた。だったら彼に訊けばいい」
フィリス王女のストーカー――もとい、アレクさんがそう言ったのは。
「アレクさん……どうして、そのことを?」
「はっはっは! フィリス王女のことなら、常に見ているからね!!」
「………………」
僕の問いかけに、彼は誇らしげにそう答えた。
しかし素直に言ってしまうと、思い切り引いてしまった。
それは女性陣もまったく同じらしく。彼に聞こえない声で、
「うわ、キモ……」
「こ、怖いのです」
口々に、そう言っていた。
だけども今は、そのような犯罪行為が役に立つ。だから、
「アレクさん、ありがとうございます!」
「なに、気にするな。フィリス王女のためだろう?」
ここは変な感覚こそあれ、感謝を述べて急ぐことにした。
彼の行為は後々、国王陛下の御耳に入れるとして。
僕は少しだけ思考してから、ある薬液の入った瓶を手に駆けだしたのだった。
アレク、お前あとで城の裏な?
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。
創作の励みとなります!
応援よろしくお願いします!!




