8.命を預かる者。
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――僕は急いでフィリスの部屋に戻る。
中にいたのはアリシアとマクガヴァンさん、そしてアレクさんの三名。その中でも恩師は何かを言いたげに、こちらを見て口を開いた。
「……リフレスよ。これを見てほしいのだ」
「え……?」
僕は彼に促されるまま、フィリスの顔を覗き込む。
そして、困惑と共に小さな声を漏らした。何故なら――。
「……瞳が、青い」
王女の微かに開いた目蓋。
そこから見える瞳は、異様なまでに青く染まっていたのだから。
これは間違いがなかった。いいや、忘れようがない。自身の父の命を奪った毒と同じ症状に、違いなかったのだ。
僕は微かに震える喉に唾を流し込みながら、みんなにこう告げる。
「あくまで推定ですが、この毒は――」
大切な親の死から得た知見。
そして、可能性として浮上していた毒の名前を。
「魔族との戦争、その初期に使われたとされる『メドゥーサの涙』です」――と。
◆
――『メドゥーサの涙』と呼称された毒薬の文献は、ほとんど残っていない。
それもそのはずだ。長きに渡った人間と魔族の戦争の初期といえば、今から五千年以上も前の話。遅効性であったこともあり、次第にこの毒が使用されることはなくなっていった。そのため現存するのは名前だけ、と考えれられていたのだ。
「……それで、症状から見て間違いないのか?」
フィリスの身を蝕むものの正体を伝えると、マクガヴァンさんは難しい顔をして言う。表情からも分かった。彼はおそらく、僕が何を言うのか分かっている。
そう、これはあくまで――。
「――いいえ。これはあくまで、僕の中にある知識から推察した可能性に過ぎません」
そうなのだ。
これは、あくまで『メドゥーサの涙』である、という可能性にすぎない。
何故なら文献にも、症状に関する細かい記載は残っていなかった。今にも朽ちてしまいそうな紙切れの端に書かれてあったのは、その毒が遅効性である、ということ。そして、身体の特定の場所に異変が生じる、ということだけだった。
「では、何故これが『メドゥーサの涙』だと……?」
「僕はこれまで、父さんを殺した毒を見つけるために文献を読み漁ってきました。それこそ、この王国にある、ありとあらゆる文献をです」
不安げな恩師に、僕は意を決して答える。
ただ、それはやはり憶測の域を出ない結論だった。
「それでも、瞳を青に染める遅効性毒なんて、存在を確認できなかった。だからこれは、何かの根拠があってという話ではなく、消去法でしかないんです」
僕の語った内容に、周囲の全員が息を呑む。
あまりに信憑性を感じられない、学者としてあるまじき答えだった。
だとしても、父の跡を継いで研究に明け暮れた僕の中には、この結論しかない。ありとあらゆる毒について、その情報と解毒方法を叩きこんだ五年間。
それによってしか、僕はこの正体を炙り出すことができなかった。
「…………」
マクガヴァンさんは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
彼もまた、分かっているのだろう。毒というものの対処を誤れば、すなわち死という結果に直結する、ということを。だから、決断ができないでいたのだ。
ただ、それは僕も同じ。
大切な友人の命がかかっている。
そしてもし、その命に責任が取れるとしたら。それは――。
「……なるほど、な。お主を信じよう、リフレス・フリングス」
「え……?」
その時だった。
部屋の中に、一人の男性が姿を現わしたのは。
誰もが息を呑み、豊かな髭を蓄えた威厳ある彼を見つめるのだ。しかし周囲の様子など気にした素振りもせず、その人は続ける。
「それで、如何様に処置すればよい。すぐに述べよ」――と。
僕は跳ねまわる心臓を押さえつけるように、胸に手を当てて。
それでも、真っすぐに男性に向かって進言した。
「処置のためには――」
膝をつき、深々と頭を垂れながら。
「この毒と同じ成分が、必要です。……ガイアス国王陛下」――と。
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