7.父の命を奪ったもの。
他作品の電子コミック発売が、明日です。
胃が痛いのです。気になる方は、活動報告をチラ見してね……。
「父さん、この毒についてなんだけど」
「あぁ、それか。それは少しだけ、対処が面倒でな……」
――リフレスの中にある、古い記憶。
まだ少年と呼んで然るべきあどけなさが抜けぬ彼は、尊敬する父から解毒について日々学んでいた。それでも、自分の代になるのはまだずいぶん先の話だろう。
祖父が比較的早逝したこともあるが、父はまだまだ若く元気に研究を続けている。何かしらの事故や事件に巻き込まれない限り、自分の出番はこないと考えていた。
しかしながら、それと解毒について学ぶのは別問題。
いつでも男手一つで自分を育ててくれた父へ、恩返しできるように、と。少年であったリフレスは、自分にできることを少しずつでもやろうと思っていた。
「それにしても、今までリフレスには苦労をかけてきたな」
「……ん、どうしたの父さん。そんな感慨深そうに」
そんなある日のこと。
父――アクリアは、ふとそんなことを口にした。
対してリフレスは首を傾げて訊き返す。すると父は、大きく息をついて――。
「――いや、なんだ。もしも、を考えてな」
「…………なにそれ?」
そんなことを言うものだから、息子は思わず眉をひそめた。
もしも、ということは自分の死を考えたのだろうか。だとすれば、
「なに言ってるんだよ、父さん。まだ老け込むには早いだろ?」
「はっはっは! それはそうだな!」
とても、悪い冗談だ。
そう思ってリフレスが怒ったように答えると、アクリアは大声で笑う。だが、父はすぐに真剣な表情になった。そして意を決した様子で、リフレスに告げる。
「お前も、もうそろそろ知っておいた方が良いかもしれないな。今日はもう遅いから明日、私が仕事から帰ってきたら話をしよう」――と。
そう言って、彼は立ち上がってその場を後にした。
意味も分からないまま残されたリフレスは、しかし気持ちを切り替える。
「まぁ、明日の夜には分かるからいいか」
なんてことはない。
ちょっとした将来の話か、なにかだろう。
リフレスはそう考え、自分も睡眠を取ろうと決めた。
だが、思いもしなかった。
翌朝いつもの時間になっても、父が起きてこない。いや――。
「父、さん…………?」
――その目が覚めることは二度とない、などということを。
◆
「……あぁ。また、この夢か」
ほんの少し、頭を休めようと仮眠を取った。
その最中に見たのは、ずっと脳裏に焼き付いて離れない光景。起きてこない父の様子を見に行った時には、彼の身体が冷たくなっていた、というものだ。
公には急病によるものだとされている。
だけど僕には、とてもそうとは思えなかった。
「あの時、父さんはきっと――」
――何者かに毒殺されたのだ、と。
確信に近い予感が、あの日以来ずっと僕の中にあった。
「青く染まった瞳、そして爪。そんな症例、聞いたことがない」
父の死に方は『異常であった』としか言いようがない。
それでも結局は、原因不明の病で死亡した、と結論付けられた。そのことに僕は、最後まで納得がいかなかった。だからずっと、宮廷治癒術師になっても考え続けてきた。――あの日、父の命を奪ったものの正体を。
「……今は、フィリスについてだ」
しかし現在、僕に与えられた役割はそれでない。
どうにかしてフィリスの身を蝕む毒、その正体を探らなければならなかった。そう考え直して、手元にある遅効性の毒薬についての記載に、視線を落とす。
そんな時だった。
「師匠、大変です……!!」
資料室に、弟子のアーニャが血相を変えて飛び込んできたのは。
肩で息をする彼女に対して、言葉を返す暇はなかった。
少女は、息も絶え絶えに言ったのだ。
「フィリス王女の容態が、急変しました……!!」――と。
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