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5.調査開始の前に。

書けたので出します。








「なんでそうなるんですか!?」




 思わぬ角度から降って湧いた犯人扱いに、僕は声を上げる。

 しかしアレクさんは、やはりこちらを見下した様子でこう語るのだった。



「これは貴様が宮廷治癒術師に返り咲くため、手ずから仕組んだ自作自演だ。つまりフィリス王女に遅効性の毒とやらを投与し、それを解毒する。そうすれば自身も評価され、さらには栄光ある宮廷に戻ることができる、というわけだ」

「誰がそんなことをするか!」

「だが、可能性がない、とも言い切れまい。さらに言ってしまえば、この王国の中で毒に対する知識が最も多く、かつフィリス王女に近い人物は誰かな?」

「それは、たしかに僕だけど……!」

「ならば貴様に違いない!!」



 必死に無実を訴えようとするが、どうにも相手は聞く耳を持たない。

 それどころか、僕にとって痛いところをついてきた。世間的に見ればたしかに、宮廷治癒術師に戻ることは動機ともなり得る。それほどまでに、名誉と歴史があった。

 だけど、僕は誓って毒など盛っていない。

 それについては、控えていたアーニャとアリシアが証言した。



「リフレスの言う通りよ。アタシは傍にいたけど、そんな機会はなかった」

「それに師匠は、公爵家の解毒師として誇りを持っています!」



 彼女たちはハッキリと、怒る気持ち抑えつつ冷静に訴える。

 だが、そのようなことはアレクさんにとってみれば、些事のようだった。



「……ふん。哀れな公爵家の令嬢たちだ」

「なんですって……?」

「それは、失礼だと思わないのですか!?」



 一笑に伏されたことで、ついに令嬢たちも感情を爆発させる。

 このままでは、かなりマズイ。それは僕への疑惑でなく、フィリスのことだ。



「二人とも、落ち着いて! いまはフィリスを優先すべきだよ!」

「……たしかに、そうだけど」

「むぅ……!」



 このような話をしている間にも、彼女の身に何かが起きている。

 いくら遅効性だとして、しかしいくらでも時間があるわけではなかった。そう考えて僕が口にした言葉に対して、さらに色めき立ったのはアレクさんだ。

 彼はまた鼻で笑うと、こう続ける。



「ほら、早く解毒をしてみせるんだ。それが、犯行の証明になる」



 どうやら、この人の中での結論は揺るがないらしい。

 あまりに屈辱的な扱いに、言い返したい気持ちが湧き上がってきた。だが、いまはそれどころではない。そう自身に言い聞かせ、一つ深呼吸をした。

 そして改めて、明らかになっていないことを確かめる。



「…………誰か、昨日のフィリスを見た人は?」



 まずは、僕たちと別れた後のこと。

 彼女がいったいどこで、誰とどのように接触したのか。そこが分かれば、この謎の毒の正体と解毒方法に繋がるかもしれない。

 そう思っての問いかけだったが、アレクさんは……。



「ふむ……? なるほど、いま解毒しては犯行を認めることになるか。相も変わらず、悪知恵だけは働く男だな」

「………………」



 そんなことを言っていた。

 僕は感情を押し殺し、視線をマクガヴァンさんへ。

 すると彼は頷いた後に、このように証言をしてくれた。



「うむ。フィリス王女はいつも通り、宮廷治癒術師としての職務に就いておった。その間、他の治癒術師とも接触はしておるが、アレクもその一人だな」

「ほら見なさい、アンタだって容疑者の一人じゃない!」

「そうですそうです!!」



 外から思い切りブーイングが飛ぶ。

 しかしながら、アレクさんの余裕は崩れることがなかった。



「私は断じてあり得ない。何故なら――」



 そして、誇らしげにこう宣言するのだ。









「私は、フィリス王女を愛しているからな!!」――と。









 …………。

 ……………………。

 …………………………は?




「……えーっと?」

「私は彼女を敬愛し、恋慕を抱いている! そのような人間が、そのような想いを募らせる人間が、その相手に毒を盛るなどあり得ると思うのか!? ――いや、ない!!」




 ――アレクさんの言葉によって、場が静寂に包まれる。




「あー……」



 そういえば、宮廷に仕えていた時のことを思い出した。

 いつのことだったか、フィリスから相談されたことがある。




『気のせいかもしれないですけど、妙な視線を感じるの……』――と。




 要するに、ストーカー被害の報告だった。

 僕は思わぬところで犯人が見つかったことに、苦笑いを隠しきれない。それでも、やはりアレクさんは悪びれることなく続けた。




「――いいか! とにかく、私が犯人である可能性はゼロだ!」

「あー、はいはい。分かったから、黙りなさい」

「お願いですので、これ以上近付かないでくださいね?」

「む……?」




 公爵家令嬢姉妹から、あからさまにドン引きされている。

 首を傾げているあたり本人は、自身の鼻息が荒いことには無自覚のようだった。僕はそんな一連の流れを見ていて、逆に冷静になっていくのを感じる。

 というか、彼への憤りとか、どうでも良くなってきた。



「とりあえず、まずは仕事場に行ってみるか……」

「そうね。そうしましょうか」

「ですです!」



 ――なので、マクガヴァンさんの許可を得て移動を開始。




「おい、待て! まだ話は終わっていないぞ!!」






 重度のストーカーの言葉をしれっと、聞き流しながら……。




 


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