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2.フィリスを信じて。

最後はオマケ。









「久しぶりですね、リフレスくん」

「あ、うん。そっちは元気だった……かな?」

「はい、何事もなく。リフレスくんの方こそ、いかがでした?」

「大丈夫だよ。新しい働き口も見つけたから」




 フィリスは上機嫌にそう話しかけてくる。

 僕もついつい以前のように、まるで親しい友人のように応えてしまった。よく考えてみれば彼女は王族であって、いまの僕は宮廷治癒術師でもなんでもない。

 そう考えていると、どうやら苦笑いを浮かべてしまっていたらしい。



「どうしました? リフレスくん」

「あ、え……っと、いや。なんでも、ないです」



 途端、ぎこちなくなってしまった。

 そうなるとフィリスも勘付いて、くすくすと小さく笑って。



「うふふ。細かいことは気にしなくても大丈夫です。私にとってリフレスくんは、とても大切な方であるのは変わりありませんから」

「あ、そうかな。……ありがとう、フィリス」

「はい。どういたしまして」



 そして、そんな嬉しいことを言ってくれる。

 そこでようやく、僕は緊張を解いて素直に笑うことができた。



「ところで、公爵家の御令嬢様方とはどのような関係なのですか?」

「あぁ、そうだった。そのことなんだけど――」

「それについては、アタシから説明するわ」

「ん……? 分かったよ」



 というところで、ふとアリシアが間に割って入ってくる。

 僕は説明を彼女に任せて、一息つくこととした。









 ――そんなこんなで、説明終了。

 先の貧困街でのラミレアの毒薬事件についても、素直に話すことにした。するとフィリスは、何やら難しい表情になる。

 そして、こう言うのだった。



「川の上流に、毒薬を……?」

「うん、そうなんだ。なにか心当たりはない?」

「……たしかに、私は数週間前に指示を出しましたが……」



 訊ねると、フィリスは深く考え込む。

 言葉を信じるなら、やはり彼女が毒薬の廃棄を命じたらしい。しかし、どうにも歯切れが悪い。これはもしかしたら、何か裏があるように思われた。

 そして、そう感じたのはアリシアも同じらしくて……。



「どうやら、何かありそうね」

「……はい。えっと、この件は一度持ち帰ってもよろしいですか?」



 彼女が言うと、フィリスは困った顔で答えた。

 アリシアは視線で僕に、どうするか、判断を仰いでくる。だから、



「フィリスは信頼できるから、大丈夫だよ。きっと何か事情があるんだ」

「……そう、分かったわ」

「ありがとう。リフレスくん」



 そう答えると、アリシアも納得したらしい。

 フィリスは深々と頭を下げて、こう約束してくれた。



「女神シルフィーネに誓って、必ず真相を確かめてきますから!」――と。








 ――なお、これは余談であるが。



「あれ、そういえば……」



 フィリスと別れた後になって、アーニャがずっと無言であったことに気付いた。僕は彼女に何かあったのかと思って、声をかけてみる。



「アーニャ、何かあったの?」

「いいえ。なんでもないです」

「え、どうして怒ってるの?」

「いいえ。怒っていませんよ」

「えぇ……?」



 すると、何やら無感情な声色で淡々と返してきた。

 どう考えても怒っているのだが、そうではない、という一点張り。しかし、そう言われてしまっては何も訊けなかった。

 だからひとまず、無理はしないように注意して先を歩く。すると、





「……にぶちん」





 本当に小さく、そう聞こえたような気がした。

 気のせい、だと思うけど。




 


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