2.フィリスを信じて。
最後はオマケ。
「久しぶりですね、リフレスくん」
「あ、うん。そっちは元気だった……かな?」
「はい、何事もなく。リフレスくんの方こそ、いかがでした?」
「大丈夫だよ。新しい働き口も見つけたから」
フィリスは上機嫌にそう話しかけてくる。
僕もついつい以前のように、まるで親しい友人のように応えてしまった。よく考えてみれば彼女は王族であって、いまの僕は宮廷治癒術師でもなんでもない。
そう考えていると、どうやら苦笑いを浮かべてしまっていたらしい。
「どうしました? リフレスくん」
「あ、え……っと、いや。なんでも、ないです」
途端、ぎこちなくなってしまった。
そうなるとフィリスも勘付いて、くすくすと小さく笑って。
「うふふ。細かいことは気にしなくても大丈夫です。私にとってリフレスくんは、とても大切な方であるのは変わりありませんから」
「あ、そうかな。……ありがとう、フィリス」
「はい。どういたしまして」
そして、そんな嬉しいことを言ってくれる。
そこでようやく、僕は緊張を解いて素直に笑うことができた。
「ところで、公爵家の御令嬢様方とはどのような関係なのですか?」
「あぁ、そうだった。そのことなんだけど――」
「それについては、アタシから説明するわ」
「ん……? 分かったよ」
というところで、ふとアリシアが間に割って入ってくる。
僕は説明を彼女に任せて、一息つくこととした。
◆
――そんなこんなで、説明終了。
先の貧困街でのラミレアの毒薬事件についても、素直に話すことにした。するとフィリスは、何やら難しい表情になる。
そして、こう言うのだった。
「川の上流に、毒薬を……?」
「うん、そうなんだ。なにか心当たりはない?」
「……たしかに、私は数週間前に指示を出しましたが……」
訊ねると、フィリスは深く考え込む。
言葉を信じるなら、やはり彼女が毒薬の廃棄を命じたらしい。しかし、どうにも歯切れが悪い。これはもしかしたら、何か裏があるように思われた。
そして、そう感じたのはアリシアも同じらしくて……。
「どうやら、何かありそうね」
「……はい。えっと、この件は一度持ち帰ってもよろしいですか?」
彼女が言うと、フィリスは困った顔で答えた。
アリシアは視線で僕に、どうするか、判断を仰いでくる。だから、
「フィリスは信頼できるから、大丈夫だよ。きっと何か事情があるんだ」
「……そう、分かったわ」
「ありがとう。リフレスくん」
そう答えると、アリシアも納得したらしい。
フィリスは深々と頭を下げて、こう約束してくれた。
「女神シルフィーネに誓って、必ず真相を確かめてきますから!」――と。
◆
――なお、これは余談であるが。
「あれ、そういえば……」
フィリスと別れた後になって、アーニャがずっと無言であったことに気付いた。僕は彼女に何かあったのかと思って、声をかけてみる。
「アーニャ、何かあったの?」
「いいえ。なんでもないです」
「え、どうして怒ってるの?」
「いいえ。怒っていませんよ」
「えぇ……?」
すると、何やら無感情な声色で淡々と返してきた。
どう考えても怒っているのだが、そうではない、という一点張り。しかし、そう言われてしまっては何も訊けなかった。
だからひとまず、無理はしないように注意して先を歩く。すると、
「……にぶちん」
本当に小さく、そう聞こえたような気がした。
気のせい、だと思うけど。
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