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1.志を持つ少女。

ここから2章









『お姫様だからって、簡単に宮廷治癒術師になりやがって』




 ――フィリス・ルツ・テストニアが宮廷治癒術師となった頃。

 周囲の彼女に対する評価は、そういった僻みが大多数を占めていた。たしかに、王国の福祉に貢献したいという志が重視され、配属された側面もある。

 しかし、フィリスは宮廷治癒術師に足る実力を保持していた。

 王都立魔法学園での成績も、そのことを裏付けている。だがしかし、そのことを声高に訴えても偏見が加速するのは明らかだった。


 だから、彼女は甘んじてその評価を受け入れようと考えたのである。

 そんな折だった。



『咎めるなら彼女よりも、僕のはずだ!!』



 一人の少年がそう主張したのは。

 声を荒らげた彼の名前は、リフレス・フリングス。

 この王国内で唯一、解毒を専門とする家系の嫡男であって、先代である父が早逝したのを理由に宮廷治癒術師に任命された人物だ。この時までは誰もが、先代の有能さを知っていたため、なにも指摘はしてこなかった。

 まだ、あどけなさが残る少年である。

 そんな彼に強く指摘された治癒術師たちは、目の色を変えた。




「私のせいで、あの方は……」




 フィリスの中には、様々な気持ちが湧き上がる。

 少年に対する敬意と共に、彼を助けられなかった自分に対する罪悪感。あれから何年も経過して、少年も青年になり、そしてついには宮廷を去った。

 いま、あの人がどうしているのかは分からない。

 それでもいつか、自分も強くなって感謝の言葉を伝えたい。



「そのためにも、私はもっと強くならなくては……!」



 フィリスは、そう誓って日々の研鑽に励むのだった。







「うわぁ、気まずい……」




 改めて、僕はそう思う。

 体裁として現在は公爵家の解毒師であり、気後れする必要はない。しかしながら、僕のことを不必要だとした場所へ足を踏み入れるのは、やっぱり気持ちが向かなかった。

 理屈などではなく、要するに気持ちの問題である。



「アタシがいるから、そんなに怯えなくて良いじゃない」

「そうです師匠! わたしもいますよ!!」

「いや、そうなんだけどさ」



 王城の門を前にして、隣に立つアリシアたちがそう言った。

 しかし、何度も繰り返すのだが難しい。頭では分かっているつもりでも、少なくとも良い気持ちはにはなれなかった。

 そう考えていると、不意に――。



「え、貴方は……」



 こちらに対して、驚くような声がかけられた。

 聞き覚えのあるそれに、僕はまさかと思って振り返る。すると、



「フィリス……?」

「あぁ、やっぱりリフレスくん……!」



 そこにいたのは、やはりフィリス王女だった。

 彼女は心の底から嬉しそうに笑うと、こちらに駆け寄ってくる。

 桃色の髪がふわりと舞う。円らな金の瞳は、心なしか潤んでいるようにも見えた。そんなフィリス王女は僕の手を取って、こう言うのだ。





「会いたかった……!」――と。





 そして彼女は、花のような笑みを浮かべながら。

 少し恥ずかしそうに、指で涙を拭うのだった……。




 


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