プロローグ 不要扱いの【解毒師】、クビになる。
新作です!
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※マイペースに進めます(たぶん。
「時代遅れの【解毒師】なんて、必要ないんだよ!!」
「穀潰しなんだから、さっさと出ていけ!!」
宮廷治癒術師の間で、僕は完全な邪魔者扱いを受けていた。
その理由というのも自分が担当している分野にある。僕はこの王都にいる唯一の【解毒師】であり、それしかできない役立たずだったからだ。平穏かつ何事もなく過ぎていく日々において、僕のような人間は不要とされる。
それに簡単な解毒なら、一般的な治癒術師でさえ扱うことができた。
だからたとえ高度な専門技術を持っていたとしても、戦後二千年が経過した現在となってしまっては出番がない。
不要な役職。
不要な人材。
不要な能力。
亡くなった父から引き継いだ仕事だけど、良いことなんて一つもなかった。
ただ毎日のように専門書を読み耽り、窓際で時間を潰すだけ。おかげで誰よりも毒や、それを解く方法については詳しくなったけど、だからといって得もなかった。
そんなある日のことだ。
「すまないな、リフレス。他の者たちの不満を押し留めるのも限界だ」
「…………」
僕は宮廷治癒術師の長であるマクガヴァン師に呼び出され、そう告げられた。
次の言葉は、容易に想像できる。この人は父の親友であって、僕が跡を継いだ時から良くしてくれた。そのため批判の的にもなっていたのだが、どうやらそれも限界らしい。
「大丈夫ですよ、マクガヴァンさん。僕はここでなくても、生きていけます」
だったら、自分から身を引こうと思った。
これ以上はもう、彼に迷惑をかけられないのだから。
「本当に、すまない……」
僕の言葉に、マクガヴァン師は深々と頭を下げた。
しかし次に面を上げると、そこには長としての厳格な彼の表情。そして一つ息をついた後、マクガヴァン師は低い声でこう告げるのだった。
「リフレス・フリングスを本日付で、宮廷より解雇処分とする」――と。
◆
「はぁ……。しかし、生きていけると言っても仕事がない」
宮廷を後にして、僕は大量の書物を背に街を歩いていた。
そして大きなため息をつく。マクガヴァンさんの手前、生きていけると宣言したものの見通しなど立っているはずがなかった。当面の生活費には困らないだろうけど、それでも仕事がなければジリ貧であることは間違いない。
「どこかで雇ってもらわないと、マズいかも」
――とは言っても【解毒師】を必要とする場所など、聞いたことがなかった。
それもそうだ。先ほども述べたように、魔族との戦争後は高度な解毒が必要な状況が発生していない。必要とされるのは魔物たちと戦い、その過程で負った傷を癒す者ばかり。
しかも治癒術師でさえ、簡単な解毒魔法を備えているのだ。
だから僕は宙ぶらりんで、居場所がない。
「うーん……」
八方ふさがり、とはこのことか。
様々な職を考えてみるが、元々研究者気質な自分に合うものがない。冒険者としての活動も考えには考えたが、例によって需要がない。
そうなってくると、いよいよ虚無と焦燥が迫ってくる。
そんな時だった。
「あ、あの……! リフレスさんですか!?」
「え……?」
僕にそんな声をかけてくる人物が現れたのは。
振り返るとそこにいたのは、高貴な身分であろう衣服を身にまとった金髪碧眼の女の子。全速力で走ったように大きく肩で息をした彼女は、その整った顔に不安を浮かべながらこう言うのだった。
「わ、わたしのお姉ちゃんを助けてください……!」――と。
僕はそれを聞いて、思わず首を傾げた。
しかし、彼女との出会いが【解毒師】としての大きな分岐点だったのである。
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