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京都のかき氷の秘密

作者: 藤瀬 律

今年のかき氷は、兎に角、歯に染みる。甘さの舌の感覚よりも、甘さと冷たさが歯に染みるのである。

とりわけ、上の歯の奥歯が染みるのだ。

私自身は、かき氷は、京都に夏の到来を告げる、素晴らしい食べ物だと思っている。


初夏の京都に、愈々、かき氷の季節がやってきた。

京都は三方を山で囲まれた、盆地である。大阪や神戸に比べると、ムシムシしている。今日は、彼女と、下鴨神社にやってきた。お目当ては、境内で行われる足つけ神事である。

彼女とは、ひと月前、とあるマッチングアプリで知り合った。

彼女は、名前は、あつこ、23歳、事務員、四国の生まれで、専門学校を卒業し、大阪の枚方に住んでいるとチャットで話していた。

彼女とラインidの交換をし、ラインで連絡を取り合いう仲になったが、リアルに会ったのは、今日が初めてだった。


彼女とは午後5時、京阪電車の出町柳駅の改札で待ち合わせをした。

彼女は、楠葉駅から特急でくると話していた。彼女には、あらかじめ、下鴨神社の足つけ神事に行くので、膝まであげられる服装がいいよと話しておいた。

足つけ神事が、終われば、糺の森の茶屋で、一緒にかき氷を食べるつもりだった。


彼女は、改札には現れなかった。

彼女に、ラインで何度、連絡しても、既読は付かなかった。

彼女が事件や事故に巻き込まれたんではないか、誘拐でもされたんじゃないか。不安が不安を呼び、警察に相談しようかとかを考えたが、彼女の住所、名前、電話番号もしらないのだった。


それから、数日後、彼女から、突然、ラインがきたのだ。これまでの連絡について、説明はなく、コンビニで、電子マネーを買って欲しいと送ってきた。私は、彼女に、なぜ、連絡してくれなかったのか、なぜ、電子マネーが必要なのかとすぐに、ラインを送り返した。

彼女は、待ち合わせをしたあの日、親が倒れ、四国に帰らなければならなくなった。治療費に、お金がいる。現金では送るのに時間がかかる。電子マネーならすぐに送れるとラインを返してきた。

私は、すぐに、近くのコンビニに走った。彼女がしてする電子マネーカードを女性店員から30万円分購入し、カードのシリアルを撮影し、彼女にラインで送った。

彼女の返事は、あと50万円分必要、早くおくって、急いで。というものだった。

私は急いで、コンビニに走った。先ほどの店員に50万円分購入したい。急いで欲しい。と急かした。


彼女は、ちっとも急がず、ただ、私の顔をマジマジと見て、それは詐欺です。と告げた。


それから、私はどこをどう歩いたのか、気がつけば、糺の森の茶屋の前にいた。

黒糖ミルクを注文し、縁台で、茶色に白いミルクがかかった円錐型のかき氷をスプーンですくい、口に放り込んだ。

今年のかき氷は、歯に染みた。

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